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思考と技術の記録。besoft Blog

開発・設計・運用・プロダクトづくりのなかで得た知見を、読みやすくまとめて共有します。

記事一覧

投稿日が新しい順に表示しています。

夏の朝、明るい光の中で少し横を向いて咲くひまわり

ひまわりの花言葉を、朝の向きだけでは決められなかった

ひまわりの花の向きを、顔を近づけずに見ようとして、僕は一度しゃがみ、それから立ち上がった。朝の光はもう明るく、空気は少し湿っている。花は光のほうを向いていると思っていたのに、実際には正面から少し外れていて、黄色い花びらの片側だけがよく見えた。

ひまわりの花言葉を調べると、「あなただけを見つめる」という言葉が出てくる。前に読んだときは、花が太陽を追う印のように受け取っていた。けれど今朝の向きは、見る角度を変えるたびに違って見える。僕が半歩横へ動くと、花の中心がこちらを向いたようになり、戻るとまた朝の光からずれた。

それで、花言葉を決める前に、茎の途中にある小さな折れ目を見た。風のせいなのか、重さで曲がったのかは分からない。葉の一枚には乾いた土が細く付いていて、そこばかり覚えてしまった。花の大きな黄色より、見落としても困らない部分に目が止まるのは、僕のいつもの癖らしい。

スマートフォンで向きを記録するほどでもないので、頭の中で「右寄り」とだけ言った。誰かに聞かれたら、ずいぶん曖昧な観察だと思われそうだ。花言葉の「あなただけ」が、太陽なのか、見る人なのか、そもそも向きとは別の話なのかも決められないまま、僕は花の下の葉を一枚だけ避けた。

その隙間から見えた茎は、思っていたより細かった。大きな花を支えるには頼りなく感じたけれど、触って確かめることはしなかった。向きをもう一度見るために少し後ろへ下がると、今度は花びらの先ではなく、中心の茶色い部分が目に入った。ひまわりの花言葉を思い出しながら、僕はそこで足を止めた。

夜の部屋で首振り扇風機の風が届かない隅

扇風機の風を、部屋の隅で見失った

扇風機の風が頬に当たる位置で、僕は首を少し下へ向けた。今夜の部屋は湿気が残っていて、風のあるところだけが何とか普通の暑さに見える。首振りの端まで待ってみると、部屋の隅には空気が動かない幅があり、そこだけ別の場所のように感じた。

本体を動かすほどではないと思い、まず羽根の向きを一段だけ変えた。首振りが始まると、風は僕のところを通り過ぎてから隅へ進む。届いたかどうかを確かめたくて、目を細めたまま床の小さな紙くずが揺れるか見ていた。紙くずは動かなかった。

そこで首振りを止め、扇風機の顔を隅へ向けた。風は正面から来ると強いのに、少し横を向いただけで急に頼りなくなる。僕はリモコンの表示を見直したが、設定を変えたわけではない。表示を確認する必要もなかったのに、二度見してしまった。

もう一度だけ首振りを戻し、今度は隅に向く直前で止めた。風の音が一定になり、床の紙くずの端がほんの少し浮いた。届いたと決めるには弱く、届いていないと言うには動いている。僕はその中途半端な向きのまま、冷たい麦茶を一口飲んだ。

時計を見ると22時50分だった。扇風機の風は肩には届いているのに、足元はまだ熱い。首を伸ばして隅を見ようとしたら、風の向きがまた変わり始めた。

夜の机に置かれたノートと一本のペン

長く使う文房具の記事を読んで、僕のノートを閉じた

ノートを閉じる前に、ページの端から少し浮いていた紙を指で押さえた。料理家が30年以上使い続けている文房具と、レシピを書きためたノートの記事を読んでいたところだった。長く使う道具の話なのに、僕が見ていたのは内容より、ノートを閉じる動作のほうだった。

僕のノートは、まだ買ってからそれほど経っていない。表紙の角もきれいで、ペンの跡も少ない。なのに新しいものを見かけると、今のノートを使い切る前に替えたくなる。紙が余っていることを、使い続ける理由ではなく、買い足す余白にしてしまう。

記事に出てくる文房具が特別に高価なのかは、そこまで覚えていない。ただ、何年も同じ道具で書かれた料理の名前や分量が、ノートの中で増えていく感じは残った。僕は途中でページをめくるのをやめ、自分のノートに挟んでいた細い紙を抜いた。買い替え候補を書いたメモだった。

その紙を捨てるか迷って、裏返すと、先週の買い物の品が三つだけ並んでいた。必要かどうかを考える前に、ペンの持ち方を変えて書いたらしい字もある。僕は候補の上に線を引き、ノートを閉じた。今夜は新しい文房具を探さず、残ったページをもう少し使うことにした。

真夏の昼の草原の端で、斜めに傾きながら立つ一本の草

草原の端で、倒れきらない一本を見ていた

草原の端で、倒れかけた一本の草を見つけた。ほかの草はほぼ同じ向きに寝ているのに、それだけが斜めの姿勢で止まっている。折れているようにも見えるし、根元から押されているだけにも見えた。僕は通り過ぎかけてから、靴の向きを戻した。

昼の12時45分で、日差しはかなり強い。風が来るたび、茎の先だけが細かく揺れる。倒れきらない理由を考え始めると、根の深さや土の硬さまで想像しそうになったので、そこまではやめた。見えているのは、傾きと、先端が戻る速さだけだった。

近くの草の影が地面に細く落ちていて、僕は一本の影を数えようとした。途中でどれがどの草のものか分からなくなり、数える意味もなくなった。それでもしゃがまず、立ったまま少し首を傾けていた。正面から見るより、横から見たほうが倒れていない部分を確認しやすかった。

手で起こせば簡単なのだろうけれど、触るほどのことではないと思った。起こしたあとにまっすぐ立つのか、また同じ角度へ戻るのかも分からない。僕は風が止んだ隙にもう一度だけ先端を見て、それから歩き出した。草原の端は、足元の傾きまで見ようとすると案外長く立ち止まる場所だった。

歩道の目地に入り込んだ白い輪ゴムのミニチュア風景

白い輪ゴムを、歩道の目地から外した

歩道の目地に靴底を引っかけないように歩いていたら、白い輪ゴムが細い溝の中で半分だけ見えていた。午前九時三十五分、晴れているのに湿気がまとわりつき、歩道の表面も少し熱を持っている。輪ゴムは誰かの落とし物というより、目地の幅を測るために置かれた印みたいだった。もちろん、そんな用事はない。

通り過ぎてから二歩戻った。拾うほどのものか迷ったというより、白い部分が溝の線を途中で止めているのが嫌だった。しゃがむと、輪ゴムの一方は乾いて灰色になり、もう一方だけが元の白さを残していた。指でつまむ前に、靴先で軽く押してみた。動かなかったので、余計に本当に輪ゴムなのか確かめたくなった。

爪を端に入れると、輪は細く伸びて、目地の中からぱちんと戻った。音はほとんど聞こえなかったが、手に残った弾力だけは思ったよりはっきりしていた。外した輪ゴムをすぐ捨てる場所が見つからず、指先で持ったまま歩くことになった。歩道の先にある排水口まで行けばよいのに、そこへ向かう途中で、今度は目地に入り込んだ小さな砂粒の並びを見てしまった。

輪ゴムを丸めると、白い面が内側へ隠れた。捨てる前にもう一度伸ばす必要はないのに、どのくらい細くなるかだけ試して、途中でやめた。暑さで額をぬぐうほどではないが、立ち止まったぶんだけ背中にシャツが張りつき、僕は排水口の手前で歩く速度を戻した。

支柱の間から見た朝の歩道と途切れた線

支柱の間を選んだあと、歩道の線を見失った

支柱の間を通ると決めて、僕は歩道の端から少しだけ進む向きを変えた。朝の九時、晴れた空の下で気温は二十八度を超えていて、風はほとんどない。支柱の影が舗装の上に細く伸びていたので、その影を避けるつもりで足を置いたら、いつも見ている歩道の線が急に分からなくなった。

線は消えたわけではなく、支柱の根元で途切れたあと、少し斜めの位置から続いていた。僕は進行方向より先に、線の終わり方を確認しようとして立ち止まった。白っぽい部分の横に、靴底で擦れたような灰色があり、そこだけ舗装の粒が目立っている。こういうとき、道を選ぶより線を見つけるほうに時間を使う。

一度、支柱の間を振り返った。こちらから見ると線は思ったよりまっすぐで、見失ったのは支柱を抜けるときに足元を見なかったせいらしい。けれど、そう判断したあとも、線の上を歩く気にはならなかった。線のすぐ内側に小さな砂が寄っていて、そこを踏むと靴の裏に残りそうだった。

結局、線から少し離れた舗装の継ぎ目を目印にして歩いた。支柱の間を選んだこと自体はもう忘れかけていたのに、次の継ぎ目がどちらへ曲がるかだけは見ていた。

曇り空の朝、鉢に咲く赤いケイトウ

ケイトウの花言葉、赤を決めきれなかった

鉢の前で、赤いケイトウの花言葉を決めようとして、結局しばらく立ったままになった。赤というだけなら情熱とか愛情とか、すぐにそれらしい言葉が出てくる。でも今日の花は、毛羽立った花の先が少しつぶれていて、勢いのある赤より、手入れの途中で見つけた赤に近く見えた。

昨日の曇り空が残ったような朝で、空気は湿っている。鉢の縁に水滴が並び、花の根元に近い葉には細い傷があった。僕は花言葉を調べる前に、赤い部分を上からではなく横から見た。盛り上がり方が思ったより不揃いで、そこを見ていると「情熱」と書くのが急に大げさに感じられた。

それでも、ケイトウの花言葉として知られている言葉を一つも選べないままにするのも落ち着かず、スマートフォンの画面を開いて、候補を二つだけ確認した。愛情という言葉のほうが近い気はしたが、花に向けたものなのか、僕が赤に勝手に足したものなのか分からない。画面を閉じると、鉢の受け皿にたまった水の薄い輪が目に入り、そこを布で拭くかどうかでまた迷った。

花を見た時間より、名前を決めるのにかかった時間のほうが長かったかもしれない。結局、今日のケイトウには「情熱」とも「愛情」とも書かず、赤い花、とだけメモした。花の先に残った小さな水滴が気になって、指では触らず、鉢を少しだけ日陰側へ寄せた。

夜の静かな部屋に置かれた小さな冷蔵庫

冷蔵庫の音が一度だけ途切れた夜

冷蔵庫の音を聞きながら、コップを流しに置こうとしていた。いつもの低い振動が、そこで一度だけ途切れた。止まった、と書くほど長くはなく、耳が勝手に拾っていた音の隙間が急に広がった感じだった。8月の夜らしく部屋は蒸していて、窓の外から入る風もほとんどない。冷蔵庫のない家を想像するほどではないのに、音が消えると置き場所まで少し遠く感じた。

僕はコップを置いたあと、冷蔵庫の扉を見た。閉まっている。取っ手の下に指を入れて、開いていないことを確かめたくなったけれど、そこまでするのも大げさで、結局は扉の端の黒い隙間だけを見た。いつもなら見ない部分なので、汚れが一本ついているのに気づいた。音の確認に来たのに、先にそこを拭くべきかどうかで少し迷った。

その間に、冷蔵庫の音が戻った。低い振動が床から伝わったというより、部屋の奥に置き忘れていたものを拾ったように聞こえた。僕はすぐに安心するでもなく、壁側の電源まで目を動かした。抜けているはずはないのに、コードの根元が見えていないと落ち着かない。しゃがむほどではないと判断して、立ったまま首だけを傾けた。

明日の暑さを考えると、今夜も冷蔵庫は働いているのだろう。そんなことを考えながら、僕はコップの水を飲み、流しの前から離れた。振り返ると扉の端の汚れがまだ見えたので、布を探しかけたが、何をしに来たのか分からなくなり、そのまま冷蔵庫の横を通り過ぎた。

夜の部屋で窓辺のカーテン留め具を直したミニチュア風景

夜のカーテン留め具を、窓を閉める前に直した

カーテンを閉めようとして、留め具の輪が少し斜めになっているのに気づいた。窓を閉めるだけなら、そのままでも困らない。けれど布を寄せたとき、輪の端が壁から浮いて見えたので、指先でいったん外し、金具の向きを確かめた。今夜の21時25分、窓の外は晴れていて、湿気だけが部屋の中に残っている。

留め具は同じ場所へ戻したつもりなのに、布を通すと片側だけ細くなる。カーテンの重なり方を変えたのか、金具が曲がったのか、そこまでは分からない。僕は窓を閉める前に、左右の高さを一度ずつ見た。こういう確認はたいてい役に立たないのに、片方だけを見て終えるのが嫌だった。

直すために布を引くと、窓ガラスに部屋の明かりがぼんやり返った。外を見ようとしたわけではないが、反射の中で留め具が前より正面を向いていることだけは分かった。そこで満足して窓の鍵へ手を伸ばしたものの、今度はカーテンの裾が床に触れていないかを見てしまう。

裾を少し持ち上げ、留め具の輪をもう一度押し込んだ。窓は閉まり、布も動かなくなったが、僕は鍵を回す順番を一瞬忘れた。

池の水面と岸辺の草を少し離れた位置から眺める夏の夕方の風景

池の水面から岸の草へ、目線が戻るまで

池の水面を見ていた目が、岸の草の先で止まった。午後五時五分、雲の切れ目からの明るさはあるのに、池は空をそのまま映さず、細い揺れを何本も重ねていた。水面に何かあるか確かめようとしていたはずなのに、いつの間にか、岸から伸びた草の葉先を数えていた。

草はきれいに並んでいなくて、一本だけ水の方へ倒れ、その隣は途中で折れたまま残っている。僕はその倒れた葉を、池に浮かぶ細い枝だと思って少し身を乗り出した。見間違いと分かっても、戻って水面を見直すより、葉の根元に付いた小さな泥の跡を見ていた。そこを見つけた自分が少し可笑しい。

昨日の雨のせいか、岸の土は乾ききっていない。靴を近づけるのはやめて、草を避けるように一歩横へずれた。すると水面の揺れが広く見え、さっきまで見落としていた丸い波紋が、岸から少し離れたところで消えた。何が作った波紋かは分からないし、確かめるほどのことでもないので、僕はまた草の高さに目を戻した。

一番高い葉だけを基準にすると、ほかが全部短く見える。そんな役に立たない比べ方をしているうち、池の向こう側はぼやけて、手前の草だけが妙に具体的になった。水面を見るために立ち止まったのに、最後は草を踏まない位置を探している。足元を決めるのに時間がかかり、歩き出す方向もまだ決めていない。

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