
冷蔵庫のドアポケットで、輪ゴムの束をほどいた
冷蔵庫のドアポケットから輪ゴムの束をつまみ上げた。夕食の片づけを終えたあと、飲み物を戻そうとして、奥にある小さな絡まりが目に入った。外では細い雨が続いていて、台所の換気扇を止めたあとも、窓の向こうの音だけが残っている。輪ゴムは何本あるのか分からないまま、ひとつの塊になっていた。
爪で端を探すと、赤茶色の一本が少しだけ動いた。そこを引けば早いはずなのに、切れそうで手を止める。輪ゴムをほどく作業に「早いはず」という言い方をするのも変だが、僕はこういう小さなものほど順番を決めたがる。まず外側、次にその内側、と決めたところで、どれが外側かまた分からなくなった。
束の下には、ドアポケットの底に細かな白い粉がたまっていた。輪ゴムの汚れだと思い、指でこする代わりに、束をいったんポケットの縁へ寄せて、見える範囲だけ布巾で拭いた。拭き終えてから、今はほどく途中なのに掃除を挟んだことが少し可笑しくなる。冷蔵庫の明かりが消えるたび、手元の順番まで消えたようだった。
一本ずつ外していくと、太さの違う輪ゴムが混じっているのが分かった。短いものは伸びきって、輪というより折れた線に近い。使えるかどうかを確かめるため、引っ張るのはやめておく。ほどけた分だけをポケットの手前に並べ、残った束の結び目に爪を入れたところで、また一本だけが動いた。








