
自転車の影
午後の日差しがアスファルトを焼いている。横断歩道の手前で立ち止まり、視線を足元に落とす。一台の自転車が駐輪ラックに止められている。前輪はやや右に曲がり、ペダルには片方だけクリップがついている。フレームは褪せた青色で、所々に擦り傷が走っている。
影の輪郭
自転車の影が路面にくっきりと伸びている。車輪のスポークが放射状に影を刻み、ハンドルの形が歪んで地面に写る。サドルの影は短く、太陽が真上よりやや西に傾いていることを示している。影の先端は歩道の縁石を越えて車道側にわずかにはみ出している。後輪の影には、泥除けの切れ目が薄い線として映っている。影の濃さは、タイヤの接地面付近が特に深く、周辺へ行くにつれてぼやけていく。
留まったままの時間
チェーンには小さな錆びた輪が絡まっている。タイヤの空気はやや抜けているようで、後輪のゴムが扁平に潰れている。ハンドルバーのグリップは黒く、表面に細かいひびが入っている。この自転車がどれだけここに置かれているのか、考えてもわからない。カゴの中には何も入っていないが、底に乾いた葉っぱが一枚張り付いている。
陽炎と静けさ
遠くから車の走る音が風に乗って聞こえる。その音は近づいては遠ざかる。歩道の隙間から雑草が顔を出し、葉の先が焼けて茶色くなっている。影の端で、小さな蟻が一匹、止まっている。その蟻もまた、動くのをやめて、何かを待っているように見える。影の端は、風もないのに微かに揺れているように感じられる。
足を踏み出し、横断歩道を渡る。振り返ると、影はまだそこにあった。日が傾くまで、あとどのくらいだろうか。自転車の影は、ゆっくりと伸びていく。








