
時計の針の夜
秒針の揺れ
壁掛け時計のガラス面に、部屋の灯りが薄く映り込んでいる。秒針は規則正しく一歩ずつ進むが、その都度、針の先端がわずかにぶれる。ぶれの振れ幅は、時刻によって変わる。今は、ちょうど文字盤の下半分を指している時間帯だ。影が壁に伸び、数字の輪郭をぼやけさせている。吊るされたチェーンも微かに揺れているのか、影がゆらゆらと動く。電球の光がガラスを透過し、針の先に小さな光を宿らせる。
ガラスの反射
正面から見ると、ガラス越しに自分自身の姿が薄く浮かぶ。その像は、時計の文字盤と重なって、二重の時刻を示しているようだ。視線を少しずらすと、反射が消え、素の文字盤だけが現れる。プラスチックの枠には、日中の埃がうっすらと積もっている。角度を変えると、反射に映る部屋の様子も変わる。天井の照明が歪んで写る。
歯車の音
耳を澄ませると、秒針が刻む音の裏に、もっと低い機械音が聞こえる。かすかな歯車の擦れる音だ。それは、冷蔵庫のモーター音とも、外の風の音とも違う。一つの部品が、次の部品を動かす。その連鎖が、途切れずに続いている。それは、自分の鼓動と混ざり合うように聞こえる。耳の奥で響く低い音。
この部屋の中では、いちばん古いものかもしれない。誰かが購入した日も、壁に取り付けた日も、知らない。ただ、ずっとここで同じリズムを刻んでいる。夜の静けさの中では、その音がふと際立つ。そして、また戻る。時計は何も語らないが、そこにある。その事実だけが、確かにある。その存在は、生活の一部として溶け込んでいる。意識して見ると、その輪郭が浮かび上がる。








