
影の輪郭をなぞる
午前の光がコンクリートを叩きつける。蝉の声が四方から降り注ぎ、一匹の鳴き声を追おうとすると別の声に掻き消される。立ち上がった空気のゆらめきが地面の上の視界をぼやけさせる。
影の縁
駐車場の隅に、桐の木が落とす影がある。アスファルトの敷地と芝生の境目に、半円形の闇が伸びている。その縁は、光の強さに押されて、ぎりぎりと細かく震えながら広がっているように見える。目を細めると、縁取りの部分だけ色が違うことに気づく。アスファルトの灰色が、影の中ではさらに暗く沈み、光の側では白っぽく浮き上がっている。その境界線を視線でなぞる。一センチもない幅の狭い帯が、ゆっくりと芝生の方へ移動している。手の甲を影の中に入れると、空気の温度が急に変わる。日なたの熱が指先に残り、影の中の冷気が手首に触れる。
芝生との境
影の先端は、伸びすぎた芝生にかかる。一本一本の草の葉が、影の中と外で別の植物のように見える。光を受けている葉は緑が透けて黄色っぽく輝くが、影に沈んだ葉は濃い青緑色に変わる。風がなく、草の葉はじっとしている。それでも影は確実に動いている。数分前には届いていなかった石の脇まで、今や影の先が届いている。動きは目に見えないほど遅いのに、視線を外して戻すと確かに場所が変わっている。
消える模様
桐の木の枝の隙間から、小さな光の斑点が芝生に落ちている。それらは葉の形を逆にしたような、不規則な明るいパッチだ。時間が経つにつれて、それらの斑はゆっくりと形を変え、やがて互いに融合していく。手を伸ばしてその一つに触れてみる。アスファルトから立ち上る熱が手のひらに伝わる。斑の中の草の葉は、日なたにあるものと同じように熱を帯びている。やがてその斑も影に飲まれ、消えた。
空気の揺らぎ、蝉の声、地面の熱が、影の輪郭を形作っている。影はそれらを飲み込みながら静かに動き続ける。目を離した瞬間に、また影はどこかへ進んでいる。








