
蛇口の先
太陽が真上に近づく。キッチンの窓から差し込む光が、シンクの縁に長く影を落としている。蛇口をひねると、濁りのない水が弧を描いて流れ落ちる。指先をかざせば冷たさが伝わるが、空気の熱さを思えば、すぐに体温と同じになるだろう。
カルピスの蛇口
スマートフォンで見たニュースのことを思い出した。アサヒ飲料が「カルピスじゃぐち」の本格展開を始めたという。蛇口そのものを取り替えれば、水代わりにカルピスが出てくる仕組みだと言う。実際にその蛇口をひねったことはないが、想像するだけで少し可笑しくなる。この日常の動作に、甘酸っぱい白い液体が乗るのだ。
水の落ち方
手のひらで受け止めた水を、そのまま口に運ぶ。カルピスの味はしない。ただの水道水だ。だが、もしこの蛇口から甘い飲料が出てきたら、きっと毎日何度もひねるだろう。喉の渇きを癒す以上の、楽しみがそこにある。
ニュースによれば、節約目的ではなく、車中泊を趣味としている層などに需要があったらしい。蛇口をひねるという単純な行為に、少しだけ遊び心を加えたいのかもしれない。
水の流れを見続けていると、視界の端に映った窓の外の景色が揺らいだ。蝉の声が一段と大きくなる。そろそろ冷たいものを飲みたい気分だ。蛇口を閉じ、水滴が一つ、シンクに落ちる音がした。








