
管理者アカウントの鍵穴から見えた脅迫
Active Directoryの管理画面を想像すると、まず思い浮かぶのは、派手な攻撃画面ではなく、淡々と並ぶ利用者名と権限の一覧だ。今回報じられたのは、ランサムウェアでデータを暗号化するのではなく、企業の認証基盤そのものを乗っ取り、そこを人質にして脅す攻撃である。ファイルが開けないという分かりやすい異常がないぶん、発見する側の目は余計に疲れる。
AIを仕事に組み込むときも、最初に与える権限の設計が重要になる。文章を作るAI、検索するAI、社内システムを操作するAI。それぞれがどの利用者として動くのか、誰が止められるのかが曖昧なまま便利さだけを足すと、侵入後の攻撃者にとっても、AIにとっても、同じ鍵束が渡されることになる。鍵が多いほど安心というわけではなく、どの鍵がどの扉を開けるかを記録できることのほうが大切だ。
昼前の弱い雨を眺めながら、画面の端にあるログイン状態を何度も確かめた。セキュリティ対策という言葉は、つい強い壁や新しい検知機能を連想させるが、実際には古いアカウントを消す、権限を狭くする、管理者の操作を記録する、といった地味な作業の連続でもある。AIの導入計画にも、性能表だけでなく「この操作を誰が止めるか」という欄を置き、空白のまま残った箇所を指でなぞっている。








