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思考と技術の記録。besoft Blog

開発・設計・運用・プロダクトづくりのなかで得た知見を、読みやすくまとめて共有します。

記事一覧

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晴れた昼の東京の歩道と、駐車場の白線に届かない街路樹の影

街路樹の影が、駐車場の白線を一本だけ外れていた

駐車場へ入る前に、僕は歩道の端で一度足を止めた。街路樹の影が、舗装の上から白い駐車場の線へ伸びていて、線をまたぐ直前で細く切れていた。十二時二十五分の空はよく晴れ、影の輪郭だけがくっきりしている。車を探していたはずなのに、まずそこを見てしまった。

白線は少し擦れていて、ところどころ灰色の舗装が透けている。その上に影が重なれば、線が途中で消えたようにも見えるのだけれど、実際には影の先端が線の手前で止まっている。僕は自分の立つ位置を半歩ずらし、さっきとは違う角度から見た。すると枝の細い影が何本か線に触れていて、太い部分だけが届いていないことが分かった。

こういうものは、最初に見た印象のほうが強く残る。確認したあとでも、僕の目は白線の手前にある濃い境目へ戻った。街路樹の幹は駐車場の外側にあり、根元の周りだけ舗装が少し盛り上がっている。そこに落ちた小さな葉を避けながら、僕は区画の番号を探したが、影のことが頭に残っていて、二つ隣まで見てからようやく自分の車の位置を思い出した。

歩き出してからも、振り返るほどではないのに、数歩先で一度だけ足の向きをゆるめた。影と白線の境目はもう建物の陰に隠れかけていて、さっきの形を正確には見られなかった。僕は結局、駐車場へ曲がるところでまた線の位置を確認してから、車のほうへ進んだ。

渓谷の丸い岩のくぼみに乾いた葉が一枚乗っている風景

渓谷の岩に、乾いた葉が一枚だけ乗っていた

足を止めたのは、道の端に大きな岩があったからではなく、その上に乾いた葉が一枚だけ乗っていたからだった。渓谷の岩は水に削られて角が丸くなり、表面には細い筋がいくつも走っている。その筋のくぼみに、葉の細い柄が引っかかっていた。葉は完全に平らではなく、中央だけが少し浮いていて、端の一箇所が岩に触れている。周りには同じような葉が見当たらないので、僕が最初に見たときから一枚だけだったのかどうかは分からない。

九月の late morning は日差しが強く、立ち止まっているだけでも首のあたりが暑い。岩の表面にも白っぽい明るさが出ていて、細い筋の深さが見る角度で変わった。けれど岩のそばまで来ると、渓谷の下から上がってくる風が少しだけ温度を変えた。葉の端が持ち上がり、戻る。乾いた葉なので軽そうに見えるのに、飛んでいくほどではない。そのたびに僕は、拾ったほうがいいのか、そのままにしたほうがいいのかを考え直した。

こういうとき、僕は必要以上に手を出さないようにするくせがある。ゴミなら拾うけれど、この葉はそこにあっても困るものではない。誰かが置いたわけでもないし、置き直す理由もない。それなのに、柄が岩の筋に挟まっているのを見ると、次に風が来たら折れるのではないかと、余計な心配をしてしまう。折れたところで葉の行き先が変わるだけなのに、柄の細さを見ていると、その先の動きまで決めてしまいたくなった。

岩の横を流れる水は浅く、底の小石まで見えていた。水面の明るい部分だけを見ていると流れが速そうなのに、葉の影が映った場所では動きが少し分かりにくい。僕はしゃがまず、立ったまま首だけを傾けて何度か見た。右から見たときは葉が岩の上に置かれているようで、少し左へ体をずらすと、柄だけが引っかかっているのが分かる。近づけばもっとはっきりするのに、近づかないほうが葉の位置を変えずに済む気がした。

結局、僕は葉を拾わず、岩の脇を通って先へ進むことにした。ただ、二、三歩進んだところで、見落とした汚れでもあったような気がして振り返った。葉はまだ岩のくぼみにあり、端だけが風に押されていた。さっきより柄が浅く見えたので、もう一度しゃがむか迷ったけれど、手を伸ばすところまではいかなかった。靴の向きだけを水から遠ざけて、それから歩き出した。

朝の光の中で鉢に咲く赤いケイトウ

赤い鶏頭の、少し平らなところ

鉢の前にしゃがむ前に、僕は一度だけ立ったままケイトウを見た。赤い花の部分が思っていたより平らで、鶏のとさかという名前を知っていても、すぐにはその形に結びつかなかった。縁は細かく波打っているのに、全体は横へ広がっている。丸い花を想像していたせいか、目の置き場が少し決まらない。

今日は9月2日で、朝の7時20分。空は晴れていて、昨日までの夏の名残のような湿り気がまだ空気にある。ケイトウの葉には水滴がいくつか残っていたが、花の赤い面にはほとんど付いていなかった。僕は水をやる前に、葉の付け根を覗き込み、それから花の上側へ視線を戻した。順番として正しいのかは分からないけれど、いつも花を見るときだけ、先に葉を確認してしまう。

今日の花として紹介されるケイトウの花言葉には、「おしゃれ」や「気取り」、「風変わり」などがあるらしい。並べてみると、少し温度の違う言葉が同じ花のそばに置かれている感じがする。赤は目立つし、形も普通の花びらとは違う。けれど、鉢全体を見ると花だけが派手に浮いているわけではなく、茎は意外なほど細く、葉の緑も控えめだった。

僕は「おしゃれ」という言葉を考えながら、花の中央に近いところを見た。そこは均一な赤ではなく、細かな凹凸が重なって、少し暗く見える箇所がある。遠くからなら一枚の布のように見えるのに、近づくと表面がざらついている。以前、店先で見たケイトウも赤かった気がするが、花の形までは覚えていない。覚えているのは、値札の横から茎が一本だけ斜めに伸びていたことくらいだ。

花言葉を知ってから見ると、つい言葉に合う部分を探してしまう。「風変わり」は、この平らな形のことだろうか。それとも、赤い面が花らしく見えないことだろうか。決めようとして、僕はまた少し体を起こした。近すぎると凹凸ばかりが目に入り、離れるとただ赤い花になる。その中間くらいで見るのがよさそうだった。

水をやるため、鉢の土に指先を近づけた。表面は乾いているように見えたが、指を入れるのはやめて、鉢の縁を回る細いひびのほうを先に見てしまった。ひびは底まで続いているのか、途中で隠れているのか分からない。ケイトウとは関係のない確認をしているうちに、花の影が葉へ落ちているのに気づいた。

結局、水はいつも通りの量にして、赤い部分へかからないよう少し横へ流した。ケイトウの花言葉を覚えたかと聞かれたら、たぶん明日には曖昧になっている。それでも今朝は、「おしゃれ」という言葉を思い出すたび、あの平らで細かな表面が先に浮かんでくる。

夜の玄関で鍵置きの皿から少し外れて置かれた鍵

鍵置きの皿から、少しだけ外れていた夜

鍵を皿の中へ入れたつもりで、手を引いた。けれど、玄関の灯りを消す前に見ると、鍵の先だけが皿の縁から外へ出ていた。完全に落ちているわけではないので、そのままでも困らない。僕は一度、壁のスイッチへ向きかけた。

時刻は22時40分。外はもう暗く、窓を閉めた家の中には、帰ってきたときの靴底の音も残っていない。皿は小さく、鍵を横に置くと半分ほどが縁にかかる。今夜は置く向きが少し斜めだったらしい。手に取って確かめるほどのことではないのに、足だけが玄関に残った。

僕は鍵の輪になった部分をつまみ、いったん皿の中央へ移した。金属が陶器に当たって、乾いた音がした。その音が思ったより大きく聞こえたので、隣の靴の向きを見た。右の靴だけつま先が少し内側を向いている。直すならこちらも直せるが、今夜は鍵のことだけにしておいた。

皿の底には、鍵がいつも擦る細い跡がある。そこへ沿わせるように置くと、さっきより収まりがよくなった。僕はすぐに手を離さず、輪の部分が皿から浮いていないか、横から一度だけ見た。確認しているあいだ、玄関の灯りが足元だけを照らしていた。

スイッチを押す前に、もう一度鍵置きを見る。今度は中央にある。中央というほど広い皿でもないので、正確には、外へ出ていた先端が内側へ戻っただけだ。それでも最初の置き方を思い出そうとして、手を動かした順番まで考えた。帰宅して、鍵を抜いて、皿へ置いた。その間に何を見ていたのかは分からない。

灯りを消すと、鍵の形は見えなくなった。玄関を離れる途中で、皿に触れた音がしなかったことだけを覚えている。僕は廊下で一度立ち止まり、戻るほどではないと決めて、そのまま部屋へ入った。

夕暮れの台所でシンク脇に立てかけられた木のまな板

まな板を立てる向きを、夕暮れに一度変えた

まな板を洗い終えて、いつものようにシンク脇へ立てかけようとした。水を切るために少し斜めにしてから、厚い面を壁側へ向ける。そこまでは手が覚えている動きだったのに、置いたあとで端の一部が台に触れているのが見えた。ほんの少しだけ、立てる角度が足りなかったらしい。いったん離れた視線を戻して、端と台の隙間だけを見直した。

いったん手を離したものを、また持ち上げる。まな板の表面には包丁の跡が細く残っていて、洗った直後なので木の色が少し濃く見えた。向きを変えれば端が浮くかもしれないと思い、今度は横幅の短い側を下にした。倒れないことを確かめるため、指で押す代わりに目だけでしばらく見ていた。見ている間に、さっきより立っているように感じたが、感じただけなので、もう一度下端の位置を確認した。

窓の外はもう明るさが薄くなり、台所の白い壁にも昼間とは違う影が出ていた。湿気が残る時期なので、乾きやすい置き方を選んだつもりだったが、実際にどちらが早いのかは分からない。分からないままでも、最初の向きに戻す理由はなかった。水滴が一つ、まな板の下端から台へ落ちた。

布巾でそこだけ拭こうとして、先にまな板をまた倒さないよう肩を少し引いた。こういうとき、拭く動作まで慎重になる自分は面倒だと思う。けれど、まな板を持ち上げて置き直すほどではないので、端に残った水を布の角で押さえ、立てた向きはそのままにした。布巾を戻す前に、濡れた跡が広がっていないかだけ見て、それから手を引いた。

昼の街にある、白線の一部が欠けた横断歩道

横断歩道の白線を、欠けたところだけ避けて渡った

白線の上に足を置きかけて、僕は一度だけ靴先を横へずらした。横断歩道の途中で、白く塗られた部分が小さく欠けていて、そこだけ黒いアスファルトが見えていた。避けなければならない理由はない。段差があるわけでも、何か落ちているわけでもない。それでも、見つけてしまったあとでは、その欠けたところを踏むのが少し雑な気がした。

昼の街は明るく、雲の少ない空から光が落ちていた。九月に入ったとはいえ、歩いていると腕に暑さがまとわりつく。風はほとんどなく、信号を渡るあいだもシャツの背中が乾かないままだった。僕は急いでいたわけではないのに、最初の数歩だけは信号が変わる前に渡り切る人のような歩幅になっていた。

白線は何本か続いていて、欠けた部分はそのうちの一つの端にあった。塗料が薄くなったというより、角だけが削れているように見える。近づいたときには、右足を置く場所を変えるほどでもないと考えたのに、足はもう左側へ寄っていた。通り過ぎてから振り返ることはしなかった。振り返ると、今度は欠け方を確かめるために立ち止まりそうだったからだ。

次の白線へ移るとき、靴底がアスファルトの細かなざらつきを拾った。白いところは見た目ほど滑らかではなく、表面に細いひびがいくつか走っている。僕はそこで、白線なら全部同じように踏めると思っていた自分の歩き方を、急に細かく見てしまった。足の向きも、間隔も、普段は記憶していない。なのに一度ずらした右足だけは、妙に覚えている。

道路の反対側へ着いてからも、欠けた場所の大きさを頭の中で測ろうとした。指二本分くらいだったか、もっと狭かったか、はっきりしない。実際に測るものでもないので、すぐに考えるのをやめた。こういうとき僕は、重要ではない部分だけ正確に覚えようとして、肝心の用事を忘れそうになる。今日はまだ忘れていないが、横断歩道を渡っただけで少し余計な手間を使った。

そのまま歩き出して、数歩進んだところで、さっきの歩幅に戻っていることに気づいた。白線のない舗装の上では、足をどこへ置くかを決める必要もない。けれど僕は一度だけ足元を見て、靴の先に小さな砂が付いているのを確認した。取るほどではないので、そのまま次の角まで歩いた。

皿に並べたグリーンキウイとゴールドキウイの断面

キウイの日、グリーンとゴールドを並べて迷ったこと

グリーンキウイとゴールドキウイの栄養の違いを紹介する記事を読んで、冷蔵庫にあった二つを同じ皿へ並べた。今日はキウイの日らしい。こういう記念日は、知った直後だけ少し律儀になる。皿を出すところまでは迷わなかったのに、二つの距離だけは妙に気になって、端に寄せすぎないよう何度か置き直した。

先に手に取ったグリーンは、表面の毛が指に引っかかって、まだ硬そうだった。ゴールドのほうは同じくらいの大きさでも触った感じが少し素直で、包丁を入れる順番をそこで迷った。栄養を比べるつもりだったのに、僕はいつも食べやすそうなほうから始めたくなる。結局、最初に持ち上げたグリーンを皿へ戻し、ゴールドを一度だけ転がしてからまたグリーンへ戻った。

半分に切ると、グリーンの中心には黒い種が細かく並び、ゴールドは果肉の黄色が先に目に入った。見た目の違いは知っていたはずなのに、皿の上で隣り合うと、思っていたよりはっきりしている。スプーンですくったグリーンは酸味があり、ゴールドは口当たりが丸い。ただ、どちらが上という話ではなく、同じ果物の中で好みの向きが違うという感じだった。すくった跡が断面の中央に残るのも、二つで少し違って見えた。

記事では栄養素の差も説明されていたけれど、僕が覚えていたのは、切った断面を見比べるために皿を何度も回したことのほうだ。窓から入る late morning の光で、種の並び方が少しずつ変わって見えた。切り口の水分が光る位置まで見ようとして、皿を回しすぎ、スプーンの柄を端に当てた。結局、二つを交互に食べ、最後の一口をどちらにするかだけ決めないまま、スプーンを皿の端へ置いた。

朝の光の中で咲くリンドウと閉じたつぼみ

リンドウの青を、名前より先に見た朝

リンドウの花を見ようとして、最初に目に入ったのは花ではなく、少し斜めになった茎だった。朝の七時半、窓から入る光はもう夏の勢いを持っているのに、空気には昨日までとは違う薄さがある。九月一日の朝に見る花として、リンドウを選んだというより、青い色がそこにあることを先に思い出した。茎は完全に倒れているわけではなく、葉の重なりのあたりから少しだけ横へ逃げている。花を見る前にそこを直すべきかとも思ったが、手を出さずに立ったままにした。

花は上を向いているものもあれば、まだ口を閉じたままのものもある。開いている一輪の縁を見ていると、青が一色ではないことに気づいた。中心へ向かうにつれて少し濃くなり、花びらの端では光を受けて弱く見える。僕はこういうところを見始めると、肝心の名前を確認するのが遅くなる。リンドウで合っているか、札を見る前に茎の数を数えかけて、途中でやめた。数えたところで何か分かるわけではないのに、三本目の途中まで進んでしまったので、そこから先を続けるのも中途半端だった。

リンドウの花言葉には「正義」や「誠実」があるらしい。強い言葉なので、青い花を見た瞬間にそれを当てはめると、少し立派に見すぎる気がした。正義というほどまっすぐに伸びていない茎もあるし、誠実という言葉から想像する整った咲き方でもない。葉の向きもそろっておらず、開いた花の隣で、まだ形を決めきらないつぼみが小さく残っている。けれど、咲く準備の途中にあるつぼみまで含めて眺めると、その二つの言葉が完全に場違いとも思えなかった。言葉のほうを花に合わせるのか、花を見て言葉の印象を少し変えるのか、そこだけ決められないままになった。

花の向きを確かめるために、僕は一度だけ見る位置を変えた。正面からは開いた花ばかりが目立ったが、少し横へずれると、葉の間に小さなつぼみが隠れていた。つぼみは青くなる前のような色で、指で触れて確かめたいとは思わなかった。代わりに、光がそこまで届いているかだけを見た。葉の影がつぼみの片側にかかり、反対側だけが明るくなっている。朝のうちに開くのか、今日はこのままなのか、僕には分からない。紙に名前と花言葉を書き留めようとして、最初の一文字だけ書いたところで、茎の傾きをもう一度見ている。文字の続きを書くために視線を下げたのに、結局また花のほうへ戻ってしまった。

夜の室内の低いテーブルに置かれたリモコン

リモコンの電池ぶたを、閉め直した夜

リモコンを置こうとして、電池ぶたの端が少し浮いているのに気づいた。指で押せば済む程度なのに、そのまま低いテーブルへ戻すのが嫌で、いったん持ち上げた。裏返すと、ぶたは外れているわけではなく、片側だけ溝からずれていた。

僕は押し込む前に、電池の向きまで確認した。さっきまで普通に使えていたのだから、そこを見る必要はない。それでも小さなばねの位置を見て、電池の白い印字が内側に隠れていることまで確かめた。確認したというより、見る場所を間違えたくなかっただけだと思う。

ぶたをいったん端から合わせると、ぱち、と短い音がした。閉じたように見えたので手を離したが、親指で中央をもう一度押した。今度は浮き上がらない。こういうとき、最初の一回で終わらせればいいのに、終わったかどうかを確かめる動作が余計に一つ増える。

窓の外は雲が広がった夜で、部屋の中にも夏の湿った空気が残っている。リモコンの表面は少し滑り、握った指の跡が薄く見えた。画面を操作する予定はなかったのに、電池ぶたのためだけに手に取ったことが妙に残った。

テーブルへ戻すとき、今度は表を上にした。いつもどちら向きに置いているのか思い出せず、二度見してから、さっきより少し端へ寄せた。ぶたがまた浮いていないか、横から確認しているうちに、押す場所が分からなくなった。

暮れかけた空を背景に、網戸の端と布が見える室内の窓

網戸の端に残ったほこりを、閉める前に見た

窓を閉めようとして、指をかけたところで一度止まった。網戸の端に、細いほこりが少しだけ引っかかっていた。大きな塊ではないし、そのまま窓を動かしても困ることはなさそうだったが、見つけたあとで見なかったことにするのは、かえって手間が増える気がした。閉めるだけの動作なのに、網戸の端だけが残ってしまうのも落ち着かなかった。

19時20分の外はまだ完全には暗くなく、雲の切れ目から入る光が網の目を薄く浮かせていた。昨日の小雨の名残なのか、枠の下側には乾いた細かな汚れもある。僕は窓を閉める動きを途中まで戻し、網戸の端を反対側からも見た。片側からは一本に見えたものが、向きを変えると短い線が二つ重なっていた。顔を近づけすぎると全体が見えなくなるので、少しだけ後ろへ下がった。

指で取ると網を押しそうだったので、近くにあった布の角を使った。けれど最初は布が枠に当たり、ほこりは取れずに少し横へずれただけだった。布を持ち替えるほどでもないと思いながら、結局、角の折れた部分を選び直す。もう一度、今度は下から上へなぞる。取れたかどうかを確認するため、網戸そのものではなく、外の暗くなりかけた空を通して端を見た。

ほこりは布の角に小さく付いていた。僕はそれをすぐ捨てず、なぜか布を裏返して同じ場所をもう一度なぞった。何も付かなかったので、そこでやめた。窓を閉めるとき、さっきより手応えが軽くなったように感じたが、実際に変わったのかは分からない。手を離す位置だけ少し考えてから、いつものところまで動かした。

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