
グロリオサの赤が朝の机でほどける
グロリオサの赤い花を、朝の机の端に置いた。反り返った花びらは炎のようでもあり、細い茎の先で小さな王冠をひっくり返したようでもある。窓の外はよく晴れていて、十月らしい涼しさが残る空気のなか、赤だけが少し先に季節を進んでいる。机の木目までいつもより乾いて見え、花の影が細い線になってノートの端へ伸びていた。
この花に添えられる言葉は「栄光」だという。ずいぶん大きな言葉だと思いながら、花を見ていると、勝ち負けの場面だけに似合うものでもない気がしてくる。誰にも見られないところで続けた作業や、途中で投げ出さずに戻った朝にも、ほんの小さな栄光はあるのだろう。表彰状にはならないので、本人が気づかないまま通り過ぎる。言葉だけが先に立つと落ち着かないのに、花のそばでは少しだけ黙っていられる。
赤い花びらの縁は、よく見ると均一ではない。曲がり方にもわずかな違いがあり、そこへ朝の光が細く乗っている。整いすぎていないところに目が止まり、花瓶の向きを一度だけ変えた。正面らしい正面があるのか確かめたかったが、向きを変えるたびに別の顔が現れる。茎の先端がどこを向いているかまで気になり、確認のために首を少し傾けた。
机の上のノートを開き、今日やることを一つ書こうとして、赤い花の位置をまた少しずらした。栄光という言葉を大げさなまま置いておくか、もっと手の届く意味にしてみるか、ペン先が紙の上で止まっている。







