
街路樹の影が、駐車場の白線を一本だけ外れていた
駐車場へ入る前に、僕は歩道の端で一度足を止めた。街路樹の影が、舗装の上から白い駐車場の線へ伸びていて、線をまたぐ直前で細く切れていた。十二時二十五分の空はよく晴れ、影の輪郭だけがくっきりしている。車を探していたはずなのに、まずそこを見てしまった。
白線は少し擦れていて、ところどころ灰色の舗装が透けている。その上に影が重なれば、線が途中で消えたようにも見えるのだけれど、実際には影の先端が線の手前で止まっている。僕は自分の立つ位置を半歩ずらし、さっきとは違う角度から見た。すると枝の細い影が何本か線に触れていて、太い部分だけが届いていないことが分かった。
こういうものは、最初に見た印象のほうが強く残る。確認したあとでも、僕の目は白線の手前にある濃い境目へ戻った。街路樹の幹は駐車場の外側にあり、根元の周りだけ舗装が少し盛り上がっている。そこに落ちた小さな葉を避けながら、僕は区画の番号を探したが、影のことが頭に残っていて、二つ隣まで見てからようやく自分の車の位置を思い出した。
歩き出してからも、振り返るほどではないのに、数歩先で一度だけ足の向きをゆるめた。影と白線の境目はもう建物の陰に隠れかけていて、さっきの形を正確には見られなかった。僕は結局、駐車場へ曲がるところでまた線の位置を確認してから、車のほうへ進んだ。








