
蔦の葉の朝
路地の曲がり角で足が止まった。正面のコンクリート壁一面に、蔦が這っている。
日差しの透け方
朝の光が斜めに当たり、重なった葉の間から漏れる。一枚の葉に目を凝らす。縁はわずかに波打ち、表面の葉脈の溝がくっきりと影を作る。光を透かすと、緑の中に黄の混じる部分があり、裏面の細かな毛まで見える。葉の大きさも形もまちまちで、小指の爪ほどの幼い葉から、開いた掌ほどの古い葉まで混じっている。一枚一枚、葉脈の浮き出方も異なり、ある葉は艶やかに光り、別の葉はくすんで見える。蔦の茎は節のところで曲がり、そこから小さな巻きひげを出して壁に絡みついている。コンクリートの表面には細かいひび割れがあり、その隙間から根が張り付いている。光の当たらない下の方の葉は、濃い緑で湿り気を帯びている。一方、日の当たる上の葉は明るい黄緑色で、表面が少し乾いて見える。重なり合う部分では、影が濃淡の層を成し、壁面に複雑な模様を描く。
湿度と音
風はほとんどない。だが、どこからか水道の水を撒く音がかすかに聞こえる。湿度の高い空気が肌にまとわりつく。遠くで電車が走る音が一瞬聞こえ、また消えた。しばらく見ていると、蔦の先端の若い葉が、微かに震えた。蜘蛛の糸が一本、光に浮かび上がっては消えた。壁に落ちる葉影も、同じ微かな揺れを繰り返している。蝉の声が一匹、試しに鳴いては止む。それに応えるように、別の蝉が短く鳴いた。
視線を戻し、もう一度一枚の葉に焦点を合わせる。手を伸ばさずとも、その表面の温度が想像できる。橙を帯びた朝の光が、葉の緑を一層深く見せている。このまま立ち続ける理由はないが、足が動かない。時間はゆっくりと過ぎる。








