
マスカットの星
袋を開けて、一粒取り出した瞬間、指が止まった。
シャインマスカットの表面に、黒い点が二つ並んでいる。しかも、その下にうっすらと曲線。まるで顔のような何かだ。虫が止まっていた跡だろうか。それとも、成長の過程でできた傷なのか。
僕はその粒を照明にかざした。光を通すと、黒い部分がかえってはっきり見える。目を凝らすと、確かに左右対称の模様——小さな住人が潜んでいるみたいだ。
最初は気持ち悪いと思った。食べるのをやめようか。でも、よく見るとその「顔」は、怒っているわけでも悲しんでいるわけでもない。ただそこにある。ふと、ネットで見た「マスカットに現れた生き物」という話題を思い出した。
結局、その粒はそのまま食べた。模様の部分だけ避けようか迷ったが、そのまま口に入れた。味は普通のマスカットだった。甘くて、少しだけ硬い。食べ終わった後、種を捨てる時に、またあの模様を探したけれど、もう見えなかった。
窓の外では、雨がぽつりぽつりと降り始めていた。傘を持って出ればよかった。でも、まあいいか。あのマスカットの住人は、今夜は僕の胃の中で眠っている。








