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思考と技術の記録。besoft Blog

開発・設計・運用・プロダクトづくりのなかで得た知見を、読みやすくまとめて共有します。

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真夏の昼前の路地、駐車場で車の下から顔を出した白い猫があくびをしている。背景には錆びた消火器と水を撒く駄菓子屋の店主、買い物袋を提げたおばあさんがいる。

昼前の路地、猫のあくび

外に出ると、もう日差しが強かった。アスファルトから照り返しが立ちのぼって、サンダルの底からじんわりと熱が伝わってくる。自販機で冷たいお茶を買おうとして、小銭入れの中身を確かめる。十円玉が三枚、五円玉が一枚。指先で硬貨をはじいて、結局何も買わずに歩きだす。

路地の角に古い消火器が置かれている。塗装が剥げて、ところどころ錆びている。誰が管理しているんだろう、と一瞬思うが、考えても仕方ない。横を通り過ぎるとき、金属の表面に自分の歪んだ姿が映っていた。

少し先の駐車場で、白い猫が車の下から半分だけ体を出して寝そべっていた。前足をだらりと伸ばし、目を細めている。しゃがみこんでその姿を眺めていると、猫が大きなあくびをした。口の中が真っ赤で、尖った歯が並んでいる。あくびが終わると、猫はまた目を閉じ、耳の先だけが微かに動いた。

立ち上がるとき、膝が小さく鳴った。手のひらを見ると、砂と小さな石がついている。それをズボンの腿のあたりで払ったが、なかなか落ちなかった。

角の駄菓子屋の前を通ると、店主が店先にホースで水を撒いていた。水しぶきが陽の光にキラキラと反射して、一瞬だけ涼しげに見える。その横を、買い物袋を提げたおばあさんがゆっくりと歩いていく。袋から長ネギが一本、はみ出していた。

家に戻る道すがら、さっきの猫はもういなかった。車の下を覗き込むと、影だけが濃く落ちている。手すりの熱さを指先でつまんだまま、地面の影を見ていた。

真夏の朝、緑の葉の間に咲く大輪の白いヤマユリの花

ヤマユリの花言葉「威厳」—真夏の朝、凛と咲く姿に宿る誇り

七月も終わりに近づいた朝、山際の緑の中に白い大輪が開く。ヤマユリだ。花びらを大きく反り返らせ、芳香を漂わせるその姿には、華やかさの中に凛とした気品が宿っている。

ヤマユリは日本固有のユリで、本州の山地に自生する。七月から八月にかけて開花し、直径二十センチを超える花を咲かせることもある。白地に黄色い筋と赤褐色の斑点が入る花びらは、遠くからでもひと目でそれと分かる存在感を放つ。別名「鳳来寺百合」「エイザンユリ」とも呼ばれ、古くから日本人に親しまれてきた。

ヤマユリの花言葉は「威厳」「荘厳」。その由来は、大きく堂々とした花姿と、甘く濃厚な香りにある。他の花に媚びることなく、ただ自らの美しさを誇るように咲く様子が、威厳という言葉に結びついた。かつて武家屋敷の庭にも好んで植えられたというのも頷ける。

誰かに認められるためではなく、自分自身のために咲く。ヤマユリの姿は、そんな生き方を静かに教えてくれる。今日一日、自分らしく凛と過ごしてみてはどうだろう。

朝の光を浴びて、ヤマユリはまた一輪、花を開いていく。

早朝の川岸のコンクリート護岸に座り、足元に生える草を見下ろす視点

川岸のコンクリート、足元の草

川岸のコンクリートに座った。足を投げ出して、靴の先が草に触れた。護岸の継ぎ目から伸びた草で、湿っていた。

水の音が下から聞こえた。流れは見えなかったが、音だけは途切れなかった。コンクリートは冷たくて、尻の下に手を入れた。片方だけ入れて、もう片方はそのままにした。

草の先が靴紐に引っかかっていた。足を動かすと草が揺れた。揺れたあと、また元に戻った。草の根元に小さい石があって、コンクリートの欠けた破片だった。

向こう岸に自転車が一台通った。ライトがついていた。音は聞こえなかった。水音だけが続いていた。

立ち上がろうとして、手を地面についた。指先にざらつきがあった。そのまま少し座っていた。草はまだ靴に触れたままだった。足を引いて、靴底をコンクリートに擦った。立った。

早朝の草地に立つ靴と湿った土

草の匂い、靴底の土

草地に入ったら靴底が湿った。コンクリートの縁に片足だけ乗せて、靴底を見た。土が薄く張り付いていた。草の匂いが靴から上がってきた。

靴底の土と草の欠片

靴底の溝に草の欠片が挟まっていた。緑色じゃなくて茶色い部分だった。指で取ろうとしたけどすぐやめた。もう一方の靴も同じように湿っていた。そっちは見なかった。

靴紐の結び目

立ったまま靴紐の結び目を見た。片方だけ緩んでいた。結び直さなかった。草地に戻ってもう少し歩いた。足跡が浅く残った。二歩進んだところで振り返ったけど、跡はほとんど見えなかった。

湿った草の先端

草の先端が靴の側面に当たっていた。湿り気が染みてくる感じがした。しゃがんで草を触った。指先に水滴がついた。立ち上がって手のひらを見たけど、もう乾いていた。草の匂いだけが残っていた。靴底の土はそのままだった。

薄暗い台所で開いた冷蔵庫から漏れる光と、手に持った水のグラス

冷蔵庫の灯りが消えるまで

冷蔵庫の取っ手を引いた。中から白い灯りが床に長く伸びる。麦茶の入ったガラス瓶が一段目の棚にある。キャップを回して、そのまま口をつける。

麦茶は少しぬるかった。作り置きしてから一晩経っている。冷蔵庫の奥からコンプレッサーの音が聞こえる。それを聞きながら、もう一口飲んだ。

グラスをシンクに置こうとしてやめた。かわりに壁際の水切りかごに逆さまに立てかける。水滴が一本、かごの縁を伝って流れた。

窓の外はまだ薄暗い。カーテン越しに街灯のオレンジ色がにじんでいる。誰かの自転車のチェーンが鳴った。遠くでゴミ収集車の音。

冷蔵庫の扉を閉めた。灯りが消えて、台所がまた暗くなる。立ったまま、その暗さに慣れるのを待っていた。

明け方の窓辺から外を眺める様子

まだ暗い朝、汗の匂い

目が覚めた。窓の外はまだ薄暗い。部屋の空気が重くて、肌にまとわりつく。エアコンが動いていない。昨夜、何度も寝返りを打っては目を覚ましたことを思い出した。時計は5時40分を指している。

ベッドの上で仰向けになり、首の後ろが汗でべたつく。手のひらで顔を拭うと、汗の匂いがした。シーツの湿った端を指でつまんだ。足の裏も湿っていて、フローリングに足を下ろすと少しひんやりした。床の冷たさが気持ち良い。

テーブルの上に、昨夜のコップと缶がそのまま置いてある。コップの水を一口含んだ。ぬるい。炭酸の抜けた味がした。そのまま窓の方へ歩く。

窓の外がだんだん明るくなるにつれて、部屋の中の家具の輪郭が見えてきた。網戸の向こうから、かすかに風が入ってくる。温度は変わらないが、空気が動く。遠くで電車の音が聞こえた。一番列車だろう。東の空が白み始めている。雲がなく、今日も暑くなりそうだった。空の色が変わっていく。青みがかった灰色から、白っぽい青へ。風が止んだ。また風が吹き始めた。網戸がかすかに揺れた。

街灯の下で何かが動いた。猫だった。立ち止まり、こっちを見ているように見えた。目が合ったような気がしたが、猫はすぐに塀の向こうへ消えた。遠くでカラスが鳴いた。もう一声、遠くから。耳を澄ますが、もう鳴かない。もう一度コップの水を飲もうかと考えたが、そのままやめた。

窓枠に両手を置いて、そのまま立っていた。指先が冷たい。首を回したら、音がした。冷蔵庫のモーターが鳴っている。低い音だ。

明け方の窓辺と残った酒のグラス

明け方の窓辺と残った酒

目が覚めた。まだ暗い。時計は5時34分。窓の外はうっすら青くなっている。身体中が汗でべとつく。Tシャツが背中に張り付く。昨夜、焼酎の水割りを飲みながらスマホを見ていて、そのまま寝てしまった。エアコンも扇風機もつけていない。窓は少し開けてある。入ってくる風は生暖かいだけだ。

ベッド横のサイドテーブルにグラスが置いてある。中の焼酎が1センチほど残っている。表面を指でなぞるとベタベタする。指紋がついている。一口飲む。ぬるくて水っぽい。まずい。すぐに置いた。枕を冷たい方に裏返すが、すぐに温くなる。

シーツが湿っていて、寝ていた形がくっきり残っている。外の電線にカラスが一羽止まっている。羽をばたつかせている。遠くで車の音がする。空が白み始めている。道路に面した部屋だが、まだ静かだ。隣の家から物音はしない。

グラスの中の液体を指先で揺らす。茶色っぽい色がグラスに沿って動く。指から酒の匂いがする。手を拭こうとしたが、タオルがない。左脚を布団の外に出す。生暖かい空気が足に触れる。変わらない。また引っ込めた。首の後ろが汗でべたついている。指で触るとざらつく。

自分の吐く息が酒の匂いがする。手のひらに息を吹きかけると、アルコールの匂いが強い。昨夜の飲みすぎを後悔する。水を飲みたいが、起き上がるのが面倒だ。もう一度横になる。天井の木目がぼんやり見える。節がいくつかある。眠れる気配がない。窓の外からゴミ収集車の音が遠くでするような気がする。まだかもしれない。

明け方の薄暗い部屋で回る扇風機

明け方の扇風機

扇風機の羽根が回る音だけが部屋に響いている。羽根の影が壁に映っているのが、目に入る。弱の風が顔を撫でるたびに、モーターの低い唸りが耳に残る。首振りのギアがカチカチと鳴る間隔が、ぼんやり数えられる。

昨夜は飲みすぎた。時計を見ると、もうすぐ五時半だった。エアコンをつけるのを忘れてそのまま寝てしまい、気づいたら汗でシーツが湿っていた。枕も湿っていて、ひんやりする。目が覚めたのはたぶん四時過ぎ。まだ暗かったけど、窓の外が少し青くなり始めていた。起き上がって、扇風機のスイッチを入れた。

湿度が高いせいか、風にまとわりつくような重さがある。風が汗ばんだ肌に触れるたびに、少しだけ涼しさが戻る。首を左右に振るたびに、風が途切れてまた当たる。そのリズムに合わせて、部屋の空気がゆっくり動く。狭い部屋だからこそ、風の循環がはっきり感じられる。

窓を開けてみた。外の空気はひんやりしている。アスファルトが夜のうちに冷えたのだろう。遠くで車の音が一つ。あとは静かだ。蝉の声が聞こえるような気もするが、はっきりしない。まだ朝が浅いのだ。

扇風機の前で立ったまま、外の気配を感じている。風が汗ばんだ首筋を冷やす。アルコールが抜けきらない頭がぼんやりする。部屋の隅に置いてある空のグラスが、薄暗がりの中で光っているように見える。風向きを変えるために、扇風機の首を少し傾けた。

そのまましばらく、動かずにいた。扇風機だけが回り続けている。

夜の部屋で扇風機の首振り部分を直している手のクローズアップ

扇風機の首を直す

扇風機の首振りが止まっていた。リモコンを手探りで探す。暗くて見えないが、手触りで分かる。首振りボタンを押す。ランプは点くが、首が動かない。もう一度押す。変わらない。リモコンの電池を確認する。蓋を開けて中を見る。電池はまだ使えそうだ。首の付け根を覗き込む。隙間に埃が詰まっている。細い指でそっと摘まむ。固まっていて取れにくい。少し力を入れると、ぼろっと取れた。その瞬間、カチッと音がして首が動き始めた。風が顔に当たる。直ってよかった。そのまま寝ようと思ったが、喉が渇いていた。冷蔵庫に行く。庫内の灯りが眩しい。麦茶を取り出す。グラスに注ぐ。氷が浮かんでいる。それを飲みながら、扇風機の風に当たる。もう一度リモコンを見る。首振りのランプは点いたまま。動きは安定している。実際に触ってみると、埃は油っぽかった。台所の油が混じっているのかもしれない。指を拭くためにティッシュを取る。窓を開けて寝よう。カーテンを開けると、外の空気が入ってくる。湿度が高いが、風がある。歯を磨こう。洗面所へ向かう。鏡を見ると、寝癖がついている。直そうと思ったがやめた。そのまま布団に入る。扇風機の風が気持ちいい。スマホの充電を確認する。まだ半分残っている。アラームは明日の朝七時に設定してある。それを確認して、枕を直す。右を向いて寝ようか左を向いて寝ようか迷う。結局、仰向けになった。目を閉じる。室温はまだ高いが、風があるので過ごしやすい。外からは車の音が遠くに聞こえる。

暗い洗面所の床に街灯の光が差し込む様子

洗面所の電気を消す

洗面所のドアを閉めてから、スイッチに手を伸ばした。指先でパチッと音がして、蛍光灯の明かりが消える。一瞬、完全な暗闇になる。目が慣れるまで、何も見えない。そのまま動かずにいると、さっきまで使っていた洗面台の水の流れる音が、まだ耳の奥に残っていることに気づいた。

足元のタイルの冷たさが素足に伝わってくる。湿度が高くて、床が少しべたつく。さっき歯を磨くときに水を跳ねさせた部分がまだ乾いていないのだ。

窓の外から、街灯の明かりがわずかに差し込んでいる。カーテンは半分だけ閉めてあったので、その光が床に細長く伸びていた。光の筋が、洗面所の中の輪郭をかろうじて見せている。

洗面所の電気を消すとき、いつもはすぐに寝室へ向かう。でも今夜はなぜか、その場を離れなかった。理由はよくわからない。ただ、暗くなった洗面所が、昼間とは違う空間に見えたのだ。壁際に掛けてあるタオルの白さが、わずかに浮かび上がっている。

電気を消す前に、鏡の中の自分の顔を見ていた。その顔が、消えたあとも目の裏に残っている。ぼんやりとした残像が、だんだんと暗闇に溶けていく。何かを忘れている気もしたが、思い出せなかった。

その直後、換気扇のスイッチが入ったままだったことに気づいた。消そうかと思ったが、暗闇の中でスイッチの位置を探すのが面倒で、そのままにした。低いモーター音が、遠くで続いている。

やがて、廊下の方から冷たい空気が流れてきて、足首に当たった。そろそろ寝室に戻ろうと思い、洗面所をあとにした。ドアを閉める手が、少し湿っている。歩き始めると、廊下の明かりが足元を照らした。洗面所の暗さとは違う、安定した明るさだった。

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