
水冷ベストの流れ
日差しの重さ
昼時の路上は、目を開けているだけで痛いくらいだ。アスファルトの表面から立ち昇る熱で、遠くの車の輪郭が揺らぐ。電信柱の影は足元にわずかに寄り添うだけで、逃げ場がない。シャツの背中が肌に貼りつく。蝉の声は一層響き、耳の内側で反響しているようだ。地面すれすれの空気が厚く、歩くたびに足元から熱が這い上がる。喉の奥が渇き、舌先が上顎に張り付く。
冷却の仕組み
スマートフォンの画面をのぞき込む。眩しさに目を細めながら、水冷ベストの記事を読む。ペルチェ素子で冷却した水をチューブで循環させる仕組みだ。布地の中を冷えた水が流れ、熱を奪い取る。昨年モデルより冷却性能が向上し、屋外作業のプロ向けに作られている。細い管が全身を巡る様子が写真に写っていた。透明なホースと小型の水タンク。動作音はどのくらいだろう。
帰路に思う
指先でポケットの端の縫い目を確かめる。冷えた水が肌の上を滑る感触を想像する。しかし、実際に感じているのは汗ばんだシャツの重さだけだ。アスファルトの照り返しが瞼の裏に残る。水冷ベストをまとった人の背中だけが、この熱の中にあって別の温度を保っている。その輪郭が、陽炎の中で一瞬ひときわくっきりと浮かんだような気がした。








