
朝のラベンダー、葉の裏の白さ
ベランダのラベンダーに水をやろうと思った。朝の光はまだ柔らかくて、鉢の土がほんのり湿っているのが見える。
葉の先が少し茶色くなっているのに気づいて、摘もうと手を伸ばした。親指と人差し指で葉の縁をつまむ。そのとき、指が葉の裏に触れて、思ったより柔らかい感触がした。
表は緑なのに、裏側は白っぽい。なんだか粉をふいたみたいだ。人差し指の腹でそっと撫でてみる。ざらざらしているのかと思ったけど、意外と滑らかだった。少し力を入れてこすると、指に薄っすらと白いものがついた。
これは何だろう。毛だろうか。それとも、植物が出す粉みたいなものなのか。前に読んだ本で、ラベンダーの葉の裏には細かい毛が生えていると書いてあったのを思い出した。乾燥に耐えるための仕組みらしい。南フランスの暑くて乾いた土地を想像してみる。あの紫色の花畑の下で、葉っぱたちはこうやって水分を守っているのか。
そういえば、ラベンダーの花言葉は「沈黙」だった。去年、鉢を買ったとき、店先の小さなカードにそう書いてあった。へえ、と思ってそのまま忘れていた。
もう一度葉に触れる。香りがふわりと立った。さっき水をやったせいか、いつもより強い気がする。指先を鼻に近づけると、あの甘くてすっとする匂いが残っていた。
手を止めて、隣の家の壁を見る。朝の静けさの中で、ラベンダーの香りだけが漂っている。葉の裏の白さは、沈黙しているみたいだ。








