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思考と技術の記録。besoft Blog

開発・設計・運用・プロダクトづくりのなかで得た知見を、読みやすくまとめて共有します。

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深夜の台所でシンクの隅に指を置く手元

夜の台所で、シンクの隅に指を置いた

台所の明かりをつけずに、シンクの前に立った。なんとなく、右の人さし指を伸ばして、シンクの角の、ボウルと縁のつなぎ目あたりに触れてみる。

金属の冷たさが指の腹に吸いつく感じ。そのまま、そっと押し当ててみると、表面はつるりとしているのに、目には見えない細かなざらつきが指紋にひっかかる。水垢だろうか。力を少しだけ込めて、円を描くように動かす。きゅ、というより、す、に近い摩擦音がかすかに聞こえた。

指を離して、今度は中指と薬指の二本で、同じ場所をなぞる。さっきより広い面積で触れると、ざらつきは均一じゃないことがわかる。部分的に、わずかに盛り上がったような箇所があって、そこだけ指が引っかかる。爪を立てて軽くこする。カリカリと音がして、小さな白い粉が爪の先にたまった。炭酸カルシウムか何かだろう。そういう話をどこかで読んだ気がする。

シンクの下の収納を開けて、タオルを取り出そうかと思ったが、やめた。もう一度、指の腹で、こすった場所を撫でてみる。さっきより滑らかになっている。でも、完全ではない。何度やっても、少しだけ跡が残るんだろうな。

そういえば、子供の頃、庭の水道の蛇口にこびりついた白い汚れを、同じように爪で削ったことがあった。あの時は、夏休みの自由研究みたいな気分で、熱心にやったけど、結局、中途半端に終わった。

蛇口から、水滴が一滴、シンクに落ちる。音が静かな台所に響いて、それからまた、エアコンの室外機の低い振動だけが聞こえる。指先はまだ、シンクの隅に置いたままだ。冷たさはもう感じない。

夜の台所で換気扇のフィルターに触れる指先

夜の換気扇、フィルターの油を指でなぞる

そういえば、換気扇のフィルターをしばらく替えていなかったな、と思い立って台所へ向かう。時刻はもう夜だ。外の空気はまだ蒸し暑い。蛍光灯をつけると、フィルターの表面がうっすら光って見えた。

人差し指を伸ばして、そっと網目に触れてみる。指先にねっとりとした重さがまとわりつく。少し力を入れてなぞると、指の腹に油の筋ができた。透明に近いけど、わずかに黄色い。この感触は久しぶりだ。

中指に持ち替えて、さっきよりも深く押し込むようにフィルターの奥まで指を這わせる。網目の凹凸が指紋に引っかかる感じがして、一度指を止めた。横から見ると、押し込んだ部分だけ油が指の形にへこんでいる。照明の下で角度を変えると、そのへこみがてかてかと反射した。

隣の部屋から物音がして、手を引っ込める。何か言われたわけでもないのに、こういう時は急に現実に戻される気がする。また指を戻す。今度はフィルターの端まで油を伸ばすように、ゆっくりと線を引いてみた。最初はさらさらしていたのに、途中から抵抗が強くなる。温度で油の柔らかさが変わったのかもしれない。

油まみれの指先を見つめながら、そういえば子どもの頃、祖母が天ぷらを揚げた後の網じゃくしを指でぬぐっていたのを思い出した。あれは何のためだったんだろう。まあ、今は関係ないか。

指を拭こうとキッチンペーパーを探すが、このままもう少し触っていたい気もして、しばらく手を宙に浮かせた。外の虫の声がかすかに聞こえる。夜の台所は静かだ。結局、指はフィルターに戻り、もう一度だけ軽くなぞってから、やめた。

夜のベランダで、鉢の土に指を入れる手元の様子

夜のベランダ、鉢の土に指を入れてみた

夜のベランダに出て、鉢の土に指を入れてみた。今日は水をやっていなかった。表面は乾いて白っぽい。人差し指を第一関節まで差し込むと、少し冷たくて、ほんの少しだけ湿っている。

指を抜くと、爪の間に細かい粒が入り込んだ。月明かりにかざしてみたけど、粒の色まではわからない。黒っぽい小さな欠片がいくつか、指の腹に張り付いている。匂いを嗅いでみた。土の匂いというより、湿った埃に近い。

そういえば、この鉢には何の植物も植えていない。春に種を蒔いたけど芽が出ず、それきりだ。今はただの土が入っているだけ。それでも、こうして時々触りたくなるのはなぜだろう。

隣の家の室外機が低く唸っている。遠くでパトカーのサイレンが聞こえた。風はほとんどなく、夜の空気が肌にまとわりつく。手に付いた土を払おうとして、やめた。もう一度、今度は中指を深くまで沈めてみる。今度は根っこに触れる感覚はなく、ただ細かい砂のような抵抗があるだけだ。指を動かすと、土がわずかに崩れて指先に集まる。

そのまましばらく手を止めて、街の明かりを眺めた。指先の土が乾いていくのがわかる。もう水をやる気にはならなかった。鉢から手を抜いて、ベランダの手すりに軽く触れた。手すりの塗装は剥げかけていて、ざらざらしている。夜の湿気がそこにも少し残っていた。

夜の台所でスポンジを水切りする手元の様子

夜の流し台、スポンジの水切り

夜の台所で、食器を洗い終えたスポンジを手に取った。シンクの隅に置いてあったそれを、指先でつまみ上げる。まだずっしりと水を含んでいて、冷たい。まずは軽く握る。親指と人差し指、中指で力を込めると、スポンジからじわっと水がにじみ出て、指の間を伝った。

そのまま手のひら全体で包み込むようにして、ぎゅっと絞る。最初は勢いよく水が流れ落ちるけど、だんだんと雫が細くなる。力を入れ続けると、スポンジがきゅっと音を立てるような気がした。実際には音はしなくて、自分の指の関節がかすかに鳴っただけかもしれない。

何度か握り直しているうちに、ふと疑問が湧いた。このスポンジって、どれくらいまで絞ればいいんだろう。完全に乾かすわけじゃないし、でも水が滴るまま置いておくのも気になる。以前、誰かが「スポンジは立てて乾かすと良い」と言っていたのを思い出す。根拠は忘れたけど、空気に触れる面が増えるかららしい。

まあ、そんなことを考えながら、結局いつもと同じように、もう一度だけ軽く握ってから、シンクのふちに立てかけた。指先が少しふやけている。蛇口から一滴、水が落ちる音がして、それから静かになった。明日もまた、同じように絞るんだろう。何も結論は出ないまま、手を拭いた。

夕暮れの公園の隅で、木の枝に張られたクモの巣。指先がそっと糸に触れている。

夕暮れのクモの巣、指先で触れた糸の震え

公園の隅、ベンチに座ってぼんやりしていたら、視線の先にクモの巣が見えた。木の枝と枝の間に張られていて、夕方の薄暗い光に透けて、ほとんど目立たない。でも、風が吹くたびに、全体がかすかに揺れて、ああ、そこにあるんだな、って思う。

で、なんとなく指を伸ばしてみた。人差し指の先で、そっと一番外側の糸に触れる。思ったより強い。指を離すと、糸はすぐに元の位置に戻って、小さく震えていた。その震えが、隣の糸にも伝わって、波みたいに広がっていった。

クモの糸って、すごく強いらしい。同じ太さの鋼鉄よりも強いって話をどこかで聞いたことがある。本当かどうかはわからないけど、実際に触れてみると、たしかにちょっとやそっとじゃ切れそうにない。それに、ベタベタしてない。粘着性のある糸と、ない糸を使い分けるらしい。僕が触れたのは、たぶん枠組みの糸で、粘着性はなかった。ほっとしたような、ちょっと残念なような。

もう一度、今度は真ん中のあたりに触れてみようかと思ったけど、やめた。巣を壊してしまいそうで。そのかわり、顔を近づけてよく見てみる。縦糸と横糸が、きれいに放射状に張られてて、真ん中は少しだけ盛り上がって見えた。そこが隠れ場所なんだろうか。クモ自身はどこにも見当たらなかった。

風がまた吹いて、巣全体が揺れた。今度は少し強めに。でも、糸はびくともしない。しばらく見ていたけど、何かが引っかかる様子もない。まあ、こんなもんか。そう思って、ベンチから立ち上がった。

オフィスのデスクでスマートフォンの画面を見つめる男性の後ろ姿。画面には通知が表示されているが、内容は読めない。

昼下がりの通知、タブを閉じるまで

あ、また来た。スマホの画面に、見慣れたアイコンと赤字のバッジ。キャリアからのお知らせだ。何だろう、と思いつつ指でタップする。親指の腹で軽く押すと、すぐにブラウザが起動して見出しが並んだ。データ容量が増えるキャンペーン、だって。

スクロールしようとした指が止まる。なんとなく、数字の部分だけ目で追った。30が40になる、という一行。へえ、と思って少しだけ画面を上に進める。指先でそっとガラスをなぞると、文字の並びが動いて、同じような説明が下まで続いていた。

僕は一度、画面の上部に人差し指を乗せて、タブを切り替えようか迷った。結局、別の指でそっとタブの×印を押す。軽く触れただけで、画面は元のニュース一覧に戻った。

エアコンの風がかすかに聞こえる。午後1時半、窓の外は雲が増えてきた頃だ。もう一度スマホを見ると、バッジの数字が増えている。さっきの通知はまだ未読のまま、別の見出しが目に入った。別の会社が買収されるらしい、というやつ。

なんとなく、その見出しをタップしてみる。でもすぐに、画面を閉じた。今度は指を止める間もなく、×印を押して。また通知一覧に戻る。増えたバッジがちょっとだけ気になったけど、まあ、あとで消せばいいか。

リビングのテーブルに伏せたスマートフォンと、遠くに見えるキッチンの様子。

昼前のスマホ、凍るそうめんつゆの通知

昼前、スマホが短く震えた。画面を覗くと、ニュースの通知が一件。「凍るそうめんつゆ」の文字が見える。何だそれ、と思う。4ヶ月で70万食売れたらしい。へえ。

指でタップするか迷って、やめる。人差し指で画面の端をなぞり、そのまま裏返しにテーブルに置いた。コト、と小さな音がする。

冷房の風が首筋に当たる。外は33度を超えているらしい。部屋の中の空気は動きが鈍くて、少しだけ汗ばんだ手のひらがスマホの背面に跡をつける。もう一度画面を見ようかと思ったけど、指先が触れただけでやっぱりやめた。

そうめんつゆが凍る、ってどういう仕組みなんだろう。ゼリー状になるのか、それともシャーベットみたいになるのか。気になって調べてみたら、冷凍庫で凍らせて使う専用のつゆで、食べ進めるとだんだん溶けて味が変わるらしい。昔、かき氷のシロップを凍らせて食べたことを思い出した。あれは凍らせてもただ甘いだけだったけど。

キッチンの方から、隣の部屋にいる家族の話し声がかすかに聞こえる。何を言っているのかはわからない。エアコンの室外機の低い唸りも混ざっている。

まあ、そんなに売れてるなら今度スーパーで探してみてもいいか。でも、この暑さじゃ買いに行くのも億劫だ。スマホを表に返し、通知をスワイプで消した。画面が真っ暗になる。冷たいつゆの感触を、少し想像してから、立ち上がって冷蔵庫を開けた。

午前の路地のアスファルトに落ちた赤い小花と、それを拾い上げる指

午前の路地、アスファルトに落ちた小さな花

新聞を取りに出たついでに、路地の奥へ少しだけ足を伸ばしてみた。日はもう高くて、アスファルトの照り返しがすごい。32度ってとこか。でも風がちょっとだけあって、湿った熱気が頬にまとわりつく感じ。

足元に、赤い花が落ちてた。小指の先くらいの大きさで、細い茎がついてる。多分、どこかの鉢植えから落ちたんだろう。上を見ても、窓辺にそれらしいのは見当たらない。アスファルトの上だと、花の赤さが妙に浮いて見える。

しゃがんで拾う。親指と人差し指で茎をつまむと、まだ水気が残っててしっとりしてる。花びらは五枚? いや、四枚か。真ん中に白い蕊みたいなのが見える。匂いをかぐ。甘いような、草っぽいような、どっちつかず。

立ち上がって、花びらを指でそっと潰してみた。少し力を入れると、水分が指先ににじむ。色はそのままだけど、潰れた部分が濃くなる。指を離すと、花びらは元に戻らなくて、しわが寄ったまま。

ふう、と息を吐いて、花をそっと元の場所に置いた。なんの花かはわからない。調べる気も起きない。ただ、拾って、潰して、置いただけ。でも指先には、まだ赤い色と匂いがかすかに残ってる。

玄関に戻って、手を洗おうか迷ったけど、そのまま新聞を手に取った。しばらくしてから、また指の匂いをかいでみたけど、もうほとんどしなかった。まあ、そんなものか。

遅い朝の生け垣に張られたクモの巣、細かい水滴が光る

午前のクモの巣、指に絡んだ糸

そういえば、駅までの近道にある生け垣のあたり、いつも朝はクモの巣が多いんだよな。今日は特に気をつけて通ろうと思ってたのに、結局、顔の前で右手をかざすのが遅れた。糸が指の股のあたりにかかる。べたつくような、でもしっとりした感触。親指の先で軽くつまもうとしたら、指先にまとわりついて離れない。仕方なく、指をこすり合わせてみる。糸は目に見えないけれど、確かに邪魔な膜みたいに残ってる。

少し屈んで、生け垣の隙間をのぞき込む。放射状に張られた糸が、朝の光を受けて、水滴をいくつもくっつけていた。真ん中には小さなクモ。脚をたたんでじっとしている。さっきの接触で、巣の一部が切れてしまったらしい。クモは動かない。僕はその場にしゃがみ込まず、中腰のまま数秒止まる。通りがかった自転車の音が後ろでして、それからまた静かになった。

人差し指の腹で、もう一度親指の根元をなぞる。まだ何かがついてる気がする。でも、視界には何も映らない。透明な糸って、乾くと消えたようになるらしい。そういえば、クモの糸は人間の髪の毛よりずっと細くて、強度は鋼鉄以上だという。へぇ、じゃあ今のこの違和感も、まあ、あながち気のせいじゃないのかもしれない。指をパタパタと振って、そのまま歩き出す。手のひらには、もう何の感触もなかった。

朝の商店街、冷凍ケースの結露に指を触れる

朝の商店街、冷凍ケースの結露

商店街を抜けようとして、精肉店の前で足が止まった。店先の冷凍ケース、ガラス面にびっしり水滴がついている。朝の光を受けて、それが細かく光っていた。

人差し指の先で、そっと触れてみる。ひんやりとした冷たさが指に吸いつく。そのまま指を少し横にずらすと、水滴が筋になって、ガラスの向こうの肉のパックが一瞬くっきり見えた。力を抜くと、また曇りが戻ってくる。

そういえば、これって結露というやつだよな。冷凍庫の中と外の温度差で起こる。夏場は特にひどくて、店の人はしょっちゅう拭いているんだろう。隣の八百屋から「らっしゃい」という声が聞こえたけど、僕はまだケースの前に立っていた。

指を離すと、触れた跡が丸く残った。すぐにまた水滴が集まってきて、跡は消えていく。その速さがなんとなく面白くて、もう一度、今度は指の腹全体で押し当ててみた。さっきより大きな跡がつく。冷たさが指の関節まで伝わって、じんわりと痛いような気もする。まあ、大したことじゃないけど。

ふと横を見ると、自転車に乗ったおばあさんが通り過ぎるところだった。買い物袋をハンドルにかけて、ゆっくりペダルを漕いでいる。僕はまたケースに目を戻した。もう指は触れずに、ただガラス面の水滴の動きを見ていた。細かい粒がくっついて、大きくなって、下に流れ落ちる。その不規則な動きを、しばらく眺めていた。

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