
午後のティッシュ箱、角の折り目
午後二時を過ぎた台所で、ティッシュ箱の角に折り目を見つけた。いつの間にかついていた。誰がつけたのか、自分でつけたのかさえ覚えていない。箱はまだ半分以上残っている。
その折り目は、箱の左上の角だけが内側にぽこっとへこんでいた。無造作に押したというより、何かを待ちながら指の腹で何度かなぞったような形だった。触ってみると、段ボールの柔らかい部分が固くなっていた。湿気でふやけたのかもしれない。
思い当たるのは、先週の夕方、電話をしながら箱を抱えていたことくらいだ。コードを巻き取る手が空かず、顎と肩で受話器を挟んだとき、どこかに指が当たった気がする。あのときかどうかは分からない。
ティッシュの箱は、使い終わると畳んで捨てる。でもこの折り目を見ていると、つい捨てられなくなった。折り目はただのへこみで、開けば消えるものではない。軽く押し戻してみたら、少し戻ったが、また同じ場所が沈む。
昔、実家の茶箪笥の引き出しにも、角が潰れた箱があった。母が爪で開けた痕がついたまま、中身を出さずに置いてあった。何が入っていたかは覚えていない。ただ、あの箱も同じように、誰かの指の形を残していた。
午後の光が窓から差して、箱のもう一つの角を照らしている。そちらはきれいな直角のままだった。同じ箱でも、片方だけ記憶があるみたいだ。








