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思考と技術の記録。besoft Blog

開発・設計・運用・プロダクトづくりのなかで得た知見を、読みやすくまとめて共有します。

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机の上に置かれたベルトファンが風を送っている様子。背景には窓からの日差しと書類。

ベルトファンの風、昼の部屋

窓の外は日差しが強く、午後一時の気温が三十度を超えているらしい。部屋の中はエアコンを入れているが、それでもじっとりとした暑さが残っている。机の上に置いたベルトファンのスイッチを入れると、細かな振動が指先に伝わってきた。

ベルト部分は黒い布地でできていて、折りたたんでスタンド代わりに机に立てかけている。風量は三段階あって、今は真ん中の強さだ。モーターの音は思ったより静かで、風が前髪を揺らすだけのひたむきさがある。机の上には書類が何枚か広がっていて、扇風機の風がその端をわずかに浮かせている。

充電ポートはUSB-Cで、ケーブルが机の縁から垂れている。ランプは青く光っている。底面にゴムの滑り止めがついているが、机の上では少しずつ位置がずれる。遠くで車の通る音が聞こえる。扇風機の首は固定で、向きを変えるには本体ごと回さなければならない。

机の上の温度計は三十一度を示している。湿度の数字は見ていないが、肌にまとわりつく空気の重さは感じる。ベルトファンの側面には電源ボタンと風量切り替えボタンが並んでいる。押すたびにカチッと小さな音がする。

画面を見続けていると、腕の皮膚に空気の流れが途切れる瞬間がある。風が直接当たっている場所と、そうでない場所の温度の違いがはっきりと分かる。外では蝉の声が聞こえる。風が途切れると、耳の裏が汗ばんでいるのに気づく。

木の幹に張り付いた蝉の抜け殻のクローズアップ

夏の昼の抜け殻

木の幹に手を伸ばす。指先に触れたのは蝉の抜け殻だった。背中が縦に割れていて、中は空洞だ。脚の先まで透けていて、だらりと垂れている。太陽の光が真上から当たっている。半透明の殻が金色に近い色に見える。手のひらに乗せると、風で倒れそうになる。左右に揺れた。親指と人指し指で挟み直す。軽い。何も入っていない。

隣の枝を見上げると、もうひとつあった。少し色が違う。片方はうすい茶色で、もう片方は黒っぽい。幹の凹凸に沿って、爪のように食い込んでいる。触ると、ぱりっとした音がした。割らないように注意しながら、ゆっくり引っ張る。鉤状の足が一本、幹に残った。そのままにしておく。

足元に目を落とすと、枯れた葉の間に落ちているものがあった。拾い上げると、古い抜け殻で、一部が欠けている。腕のあたりが欠けている。セミの抜け殻はいつも同じような形だ。手の甲に汗がにじむ。時計を見ると、正午を過ぎている。日陰を探して歩き出す。アスファルトの上を歩く。足音だけが続く。振り返ると、先ほどまで見ていた木はもう見えない。風が吹いて、首の後ろが冷たく感じた。立ち止まる。何かを忘れたような気がするが、思い出せない。また歩き出す。

日差しが強い。汗が首筋を伝う。蝉の声が一斉に鳴いている。抜け殻を手のひらで転がす。薄い膜が破れそうだ。幹の表面はざらついている。木の皮が剥がれかかっている。もう一度、枝を見上げる。葉の間から青空が見える。何秒かそのままでいた。手に持った抜け殻をどこに置こうか迷って、結局、幹の割れ目に挟んだ。また日陰を探し始める。

蝉の声が途切れる瞬間がある。その間、急に静かになる。また一斉に鳴き始める。抜け殻を置いた後、指にはかすかに粉がついていた。それをズボンで拭う。足を止めて、もう一度木を見る。幹の割れ目に挟んだ抜け殻は、風で少し動いている。それを見ている。また歩き出す。

男性がソファでスマホを見ている様子、扇風機と窓外の夏の光

昼時のてんこ盛り

昼時のてんこ盛り

スマホを開いたら、かつやの新作てんこ盛りどんぶりのニュースが目に入った。写真のとんかつは厚くて、キャベツが山盛りになっていた。値段は書いていなかった。エアコンのリモコンを手に取って、一度温度を下げた。窓の外から蝉の声が聞こえる。冷房の風が足元に当たって、冷えてきた。

腹は空いている。昨夜の冷やし中華が冷蔵庫にあるのを思い出したが、それも面倒だ。新作を食べに行くのも手だが、外は31度まで上がっていると天気予報で言っていた。玄関の鍵と財布をどこに置いたか忘れて、探すのが億劫だ。扇風機の首を手で少し右に向けた。強風が顔に当たる。ソファに座ったまま、スマホの画面をまた見ている。新作の記事の下には、同じくかつやの別のメニューの広告が出ていた。どれも写真は美味そうだが、今動く気になれない。スマホのバッテリーが気になるが、まだ見ている。

時計を見ると12時55分だった。立ち上がって窓の外を見た。隣の家の屋根の上で、陽炎が揺れている。道路をトラックが通った。エンジン音が部屋に響いて、すぐに消えた。冷蔵庫の冷気を思い出して、結局立ち上がった。冷蔵庫まで歩く。途中で扇風機のコードに足を引っかけた。冷蔵庫を開けると、冷気が顔に当たる。冷やし中華の容器が目に入る。弁当箱もあった。どれを食べるかはまだ決めていない。

正午の魚市場のにぎわい

正午の魚市場、潮の匂いと人の声

正午を過ぎた魚市場は、人の流れがまだ途切れない。屋根のない区画では太陽が照りつけ、アスファルトの熱気が足首から立ち上る。ぬれた床に反射する光がまぶしい。イワシの箱の前でしゃがみ込む中年の男が、指で魚の目玉を押して鮮度を確かめている。隣の台ではカツオが氷の上に並び、尾びれが少し乾いている。包丁がまな板を叩く乾いた音と、水が流れる音が混じる。ぬれた障子の向こうで、店の男が声を張り上げている。人がぶつかるたびに、半袖の腕が触れて汗が張り付く。どこからか漂ってくる焼き魚の煙が目にしみる。喉が渇いたが、自動販売機までたどり着くのに時間がかかりそうだ。冷蔵ケースのガラスの前に立つと、自分の顔と後ろの人のシルエットが重なって見える。トレーに並んだタイの切り身が蛍光灯の光を受けて、白く乾いた表面を見せている。手を伸ばしてエビのパックを取ろうとしたが、誰かの肘が脇腹に当たってやめた。スマートフォンを見ると12時8分。日曜日だからか、家族連れも多い。子供がしゃがみ込んで水槽のカニを指さしている。金網のゲージに活きたアワビがひっついている。カツオの台の横のバケツには、内臓が入っている。朝から何も食べていないことに気づく。

通路の真ん中で立ち止まり、左右を見る。どちらへ行くでもなく、ただ人の間をすり抜ける。壁際の水道の蛇口が少しだけ開いていて、水が垂れ続けている。水滴が床の水溜まりに落ちる音がかすかに聞こえる。どこかでアナウンスが流れているが、内容は聞き取れない。足を止めて耳を澄ませたが、ザワザワした声に消される。壁に貼られた値段表がはがれかけている。水道の水が一度止まり、また流れ出す。時々、乾いた氷が砕ける音がする。全体に湿気がまとわりつき、シャツが肌にはりついて離れない。足元にビニール袋が落ちているが、拾わない。知らない人の背中ばかり見ている。

正午の魚市場、人混みの中で立ち止まる後ろ姿

市場の人混み、正午の熱気

朝早く起きて魚市場へ向かった。海鮮を食べるつもりだった。着いたのは正午近く、すでに人でいっぱいだった。

入口から人の肩が見えた。通路の幅は狭く、前を歩く人の背中が近い。右側の店に並ぶ人、左側の店を覗き込む人、真ん中で立ち止まる人。どこを向いても誰かがいた。

氷の箱が足元に置いてあった。誰かの靴が箱の角を踏んでいた。氷が少し溶けて、地面に水が広がっていた。アスファルトが濡れて黒く光っていた。

陽が真上から差していた。影が短く、頭の真下にあった。首の後ろが熱くなった。風はほとんどなかった。誰かが団扇を使っていた。

人の声が重なって聞こえた。店の呼び込み、注文する声、笑い声。どれも遠くて近い。魚の匂いより人の気配のほうが強かった。

腹は空いていたが、何も食べなかった。人の間に立ったまま、どこかの店先を見ていた。

真夏の昼前の路地、駐車場で車の下から顔を出した白い猫があくびをしている。背景には錆びた消火器と水を撒く駄菓子屋の店主、買い物袋を提げたおばあさんがいる。

昼前の路地、猫のあくび

外に出ると、もう日差しが強かった。アスファルトから照り返しが立ちのぼって、サンダルの底からじんわりと熱が伝わってくる。自販機で冷たいお茶を買おうとして、小銭入れの中身を確かめる。十円玉が三枚、五円玉が一枚。指先で硬貨をはじいて、結局何も買わずに歩きだす。

路地の角に古い消火器が置かれている。塗装が剥げて、ところどころ錆びている。誰が管理しているんだろう、と一瞬思うが、考えても仕方ない。横を通り過ぎるとき、金属の表面に自分の歪んだ姿が映っていた。

少し先の駐車場で、白い猫が車の下から半分だけ体を出して寝そべっていた。前足をだらりと伸ばし、目を細めている。しゃがみこんでその姿を眺めていると、猫が大きなあくびをした。口の中が真っ赤で、尖った歯が並んでいる。あくびが終わると、猫はまた目を閉じ、耳の先だけが微かに動いた。

立ち上がるとき、膝が小さく鳴った。手のひらを見ると、砂と小さな石がついている。それをズボンの腿のあたりで払ったが、なかなか落ちなかった。

角の駄菓子屋の前を通ると、店主が店先にホースで水を撒いていた。水しぶきが陽の光にキラキラと反射して、一瞬だけ涼しげに見える。その横を、買い物袋を提げたおばあさんがゆっくりと歩いていく。袋から長ネギが一本、はみ出していた。

家に戻る道すがら、さっきの猫はもういなかった。車の下を覗き込むと、影だけが濃く落ちている。手すりの熱さを指先でつまんだまま、地面の影を見ていた。

真夏の朝、緑の葉の間に咲く大輪の白いヤマユリの花

ヤマユリの花言葉「威厳」—真夏の朝、凛と咲く姿に宿る誇り

七月も終わりに近づいた朝、山際の緑の中に白い大輪が開く。ヤマユリだ。花びらを大きく反り返らせ、芳香を漂わせるその姿には、華やかさの中に凛とした気品が宿っている。

ヤマユリは日本固有のユリで、本州の山地に自生する。七月から八月にかけて開花し、直径二十センチを超える花を咲かせることもある。白地に黄色い筋と赤褐色の斑点が入る花びらは、遠くからでもひと目でそれと分かる存在感を放つ。別名「鳳来寺百合」「エイザンユリ」とも呼ばれ、古くから日本人に親しまれてきた。

ヤマユリの花言葉は「威厳」「荘厳」。その由来は、大きく堂々とした花姿と、甘く濃厚な香りにある。他の花に媚びることなく、ただ自らの美しさを誇るように咲く様子が、威厳という言葉に結びついた。かつて武家屋敷の庭にも好んで植えられたというのも頷ける。

誰かに認められるためではなく、自分自身のために咲く。ヤマユリの姿は、そんな生き方を静かに教えてくれる。今日一日、自分らしく凛と過ごしてみてはどうだろう。

朝の光を浴びて、ヤマユリはまた一輪、花を開いていく。

早朝の川岸のコンクリート護岸に座り、足元に生える草を見下ろす視点

川岸のコンクリート、足元の草

川岸のコンクリートに座った。足を投げ出して、靴の先が草に触れた。護岸の継ぎ目から伸びた草で、湿っていた。

水の音が下から聞こえた。流れは見えなかったが、音だけは途切れなかった。コンクリートは冷たくて、尻の下に手を入れた。片方だけ入れて、もう片方はそのままにした。

草の先が靴紐に引っかかっていた。足を動かすと草が揺れた。揺れたあと、また元に戻った。草の根元に小さい石があって、コンクリートの欠けた破片だった。

向こう岸に自転車が一台通った。ライトがついていた。音は聞こえなかった。水音だけが続いていた。

立ち上がろうとして、手を地面についた。指先にざらつきがあった。そのまま少し座っていた。草はまだ靴に触れたままだった。足を引いて、靴底をコンクリートに擦った。立った。

早朝の草地に立つ靴と湿った土

草の匂い、靴底の土

草地に入ったら靴底が湿った。コンクリートの縁に片足だけ乗せて、靴底を見た。土が薄く張り付いていた。草の匂いが靴から上がってきた。

靴底の土と草の欠片

靴底の溝に草の欠片が挟まっていた。緑色じゃなくて茶色い部分だった。指で取ろうとしたけどすぐやめた。もう一方の靴も同じように湿っていた。そっちは見なかった。

靴紐の結び目

立ったまま靴紐の結び目を見た。片方だけ緩んでいた。結び直さなかった。草地に戻ってもう少し歩いた。足跡が浅く残った。二歩進んだところで振り返ったけど、跡はほとんど見えなかった。

湿った草の先端

草の先端が靴の側面に当たっていた。湿り気が染みてくる感じがした。しゃがんで草を触った。指先に水滴がついた。立ち上がって手のひらを見たけど、もう乾いていた。草の匂いだけが残っていた。靴底の土はそのままだった。

薄暗い台所で開いた冷蔵庫から漏れる光と、手に持った水のグラス

冷蔵庫の灯りが消えるまで

冷蔵庫の取っ手を引いた。中から白い灯りが床に長く伸びる。麦茶の入ったガラス瓶が一段目の棚にある。キャップを回して、そのまま口をつける。

麦茶は少しぬるかった。作り置きしてから一晩経っている。冷蔵庫の奥からコンプレッサーの音が聞こえる。それを聞きながら、もう一口飲んだ。

グラスをシンクに置こうとしてやめた。かわりに壁際の水切りかごに逆さまに立てかける。水滴が一本、かごの縁を伝って流れた。

窓の外はまだ薄暗い。カーテン越しに街灯のオレンジ色がにじんでいる。誰かの自転車のチェーンが鳴った。遠くでゴミ収集車の音。

冷蔵庫の扉を閉めた。灯りが消えて、台所がまた暗くなる。立ったまま、その暗さに慣れるのを待っていた。

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