
午後の自販機、お釣りの音と汗の跡
午後二時を過ぎたばかりの、日差しがまだ真上に近い時間。自販機で缶コーヒーを買った。百二十円のボタンを押して、出てきたお釣りを左手で受ける。小銭が金属の受け皿に落ちる音は、夏になぜかいつもより澄んで聞こえる気がする。まあ、気のせいかもしれないけど。
そのまま缶を右手に持ち替えたとき、左手のひらに汗がにじんでいるのに気づいた。自販機のボタンに触れていたせいもあるけど、暑さのせいのほうが大きいだろう。受け取った百八十円をズボンのポケットに押し込んで、プルタブを開ける。冷たい缶の表面が汗で濡れて、指にまとわりつく。
ふと、自販機の横の植え込みに目が行った。よく見ると、タバコの吸い殻が一つ落ちている。ここは喫煙所でも何でもないのに、誰かがここで吸ったらしい。僕は吸わないから、その気持ちは分からないけど、午後二時の自販機の前に吸い殻が一つ落ちているのは、少しだけ変だと思った。
缶コーヒーを一口飲んで、ふと数日前のことを思い出した。同じ自販機で、お釣りの五十円玉を落として、溝に転がしてしまったことがある。あのときはしゃがんで必死に探したけど、結局見つからなかった。今日はちゃんと受け取れてよかった、と思う。ただ、その五十円玉のことを思い出して、缶コーヒーの味が少しだけ思い出に混ざるような気がした。
まだ半分ほど残っている缶を片手に、僕はゆっくりと歩き出した。








