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思考と技術の記録。besoft Blog

開発・設計・運用・プロダクトづくりのなかで得た知見を、読みやすくまとめて共有します。

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夜の台所のシンク脇に置かれた空の缶ビール

缶を置いた時の音、風呂上がりの台所

風呂から上がって台所へ入った。飲みかけの缶を流し台の脇へ置いたとき、底が当たる音が思ったより響いた。窓は少し開いていて、外から風が入っていた。

シンクの縁に手を当てて立っていた。髪から水が一滴落ちて首筋を伝った。缶の表面に水滴がいくつかついていて、置いた場所が濡れていた。指先でそれを拭いたが、完全には取れなかった。

晩御飯を食べていないことに気づいた。冷蔵庫を開けようとして、手が止まった。まあいいかと思った。体はまだ少し熱を持っていて、頬のあたりがぼうっとしていた。

窓の外から虫の声が聞こえた。今日は昼間より涼しい。扇風機を回さなくても寝られそうだと思った。缶を持ち上げて、もう一度置いた。さっきより音は小さかった。流し台の水栓が光っているのが見えた。

夜の机の上に置かれた冷めたマグカップとノートと鉛筆

夜の机、マグカップの冷め

マグカップを机に置いたのは、どのくらい前だったか。中はもう冷めている。表面の釉薬のざらつきが親指の腹に当たる。白い地に青い細い線が一本だけ入った、確か百均で買ったマグだった。台所から持ってきた時は熱かった緑茶が、今はぬるいどころかひんやりしている。底に少しだけ残っている茶葉が、回すと沈んだまま動かない。あの時は何か考えていたはずなのに、もう思い出せない。口をつけると、陶器の温度が唇に冷たく感じた。二度目に口をつけた時、温度はほとんど変わらなかった。

机の上には開きっぱなしのノートと、鉛筆が一本転がっている。ノートはA4の大きさで、方眼の罫線が引いてある。何行か書いただけで止まっている。書いた文字は漢字と平仮名が混じったもので、後ろの方の行は字が乱れている。ページの端が、冷房の風でかすかにめくれる。設定温度は二十六度にしているが、部屋全体がそれ以上に冷えている気がする。窓の外から、道路を走る車の音が時々聞こえる。トラックのエンジン音が遠くでこもる。あの車はどこへ行くのだろう。

マグカップを両手で包むと、陶器の冷たさが掌に伝わる。手のひら全体が冷やされて、少ししびれるような感覚がある。飲みかけの茶は薄い飴色で、天井の蛍光灯の光が水面に映っている。その光の輪が、ほんの少し歪んで見える。手の震えか、それとも机が傾いているのか。以前、この机の脚の下に一枚の紙を挟んだことを思い出した。がたつきは直ったはずだが、今日はまた違う気がする。

また車の音が近づいてきて、通り過ぎていった。その後、静けさが戻る。冷房の風が首の後ろに当たる。マグカップから手を離し、ノートの端を指でなぞった。ページの角が少し反っている。その反りを何度か往復させてから、手を止めた。指に紙の乾いた感触が残る。

夜の洗面所の棚に手を触れる様子

洗面所の棚、夜の手触り

洗面所の明かりを点けた。棚の取っ手を引いて開ける。

中の歯ブラシが二本、立ててある。一本はブラシの毛が開いていて、柄の色が白く濁っている。もう一本は新しいが、同じ形だった。奥に薬の箱がある。箱の端が少し破れていた。

棚の取っ手にもう一度触れる。指先に細かい溝の感触がある。指を離して、扉を閉めようとしたが、指が滑った。もう一度掴み直して、ゆっくり閉める。爪が取っ手に当たって、小さな音がした。

閉めた後も、指先に金属の冷たさが残っている。手のひらに汗がにじんでいた。首の後ろにも汗をかいていた。汗が背中を伝う。耳の裏にも汗をかいていた。

換気扇の音だけが聞こえる。湿度を含んだ空気が肌にまとわりつく。空気が重い。湿気で髪がうねる感じがした。換気扇の音が止まった気がしたが、まだ回っている。耳を澄ませると、かすかに羽根の回る音が聞こえる。汗が額にも浮かんでいる。まぶたが重い。

立ったまま、しばらくそこにいた。何かを取りに来たのだったか、もう思い出せなかった。思い出せないまま、もう一度棚の取っ手に触れる。今度は親指で溝をなぞる。爪の先で溝をなぞる音がかすかに聞こえた。

そのまま手を下ろした。指の間に汗が残っている。もう一度、取っ手に触れる。今度は手のひら全体で包み込むように。金属の温度が手に移る。そのまま手を離さないでいた。汗が垂れるのを感じた。

A dim kitchen at dusk with an open refrigerator, light illuminating vegetables and drinks inside

夕方の台所、冷蔵庫を開ける

夕方の台所に立つ。電気はつけていない。窓の外はまだ明るさが残っており、白っぽい雲が空を覆っている。その光が床に淡く落ちていた。

冷蔵庫の取っ手に手をかけると、金属の冷たさが指先に伝わった。引くと、中の灯りがパッとつく。冷気が顔に当たった。庫内は整理されていて、右側の棚にトマトが三つ、楕円形のボウルに入っている。その隣に卵パック、奥にペットボトルの麦茶。一段下にはキャベツの半玉がラップに包まれている。さらにその下の引き出しにはキュウリとナスが二本ずつ並んでいる。蛍光灯の光でトマトの表面がつやつやしていた。

冷蔵室の奥から、少し古くなったネギの匂いが混じった空気が流れ出る。温度差で庫内の扉の縁に水滴がついていた。手で触れると、ベタつかないが湿っている。

麦茶のペットボトルを取り出そうとして、指が横の卵パックに当たった。プラスチックの乾いた音がする。ボトルを掴むと、表面が結露で濡れている。そのまましばらく立っていた。冷気が足元に落ちるのを感じる。冷蔵庫のコンプレッサーの低い振動が床から伝わる。

麦茶を飲もうと思ったが、まだ喉が渇いていない。ペットボトルを元の場所に戻した。ドアを閉める時、ブレーカーのような音がした。暗い台所に戻る。まだ目が明るさに慣れていない。しばらくその場に立ち、スリッパのつま先で床の一部をこすっていた。冷蔵庫の灯りが消えた後の暗さが、目の奥に残っている気がした。

駐輪場の自転車の前かごに水滴がついている夕方の様子

自転車かごの水滴、夕方の感触

手を伸ばして、自転車の前かごに触れた。指先に冷たい感触がぶつかる。昨日の雨がまだ残っているらしい。かごの網目は金属製で、ところどころに水滴が丸く留まっている。指で軽くなぞると、水滴がいくつかつながって、一つの大きな滴になって落ちた。腕を伝って、水滴が肘の内側に当たる。冷たい。

駐輪場の端に置かれた自転車は、他に二台ほど。どれも前かごが濡れている。夕方の薄暗い光の中で、水滴が鈍く光っている。空は部分的に雲が広がり、星はまだ見えないが、雨の気配はない。日中は晴れていたらしい。

かごの中を覗くと、折りたたまれたスーパーの袋が一つ入っていた。触ってみると、湿っている。持ち主が置き忘れたのだろう。袋を取り出そうと思ったが、やめた。さらに濡れてしまいそうだった。

自転車のサドルに手を置く。こちらも冷たいが、かごほどではない。サドルの表面に細かい水滴がついていて、指で拭うと手のひらがしっとりする。サドルの端に水滴が垂れそうになっている。

ハンドルのグリップにも触れてみた。ゴムの表面が濡れていて、指が滑る。押すと、水が少ししみ出てくるようだった。その感触が、なぜか昔使っていた水鉄砲を思い出させた。あれも濡れたゴムの匂いがした。でも、それ以上は特に何も浮かばない。

駐輪場の地面にはもう水たまりはない。昨日の雨が嘘のように乾いている。自転車の金属だけがまだ冷えている。肘をかごの縁に置いて、水滴が落ちるのを待った。数秒後、一滴が垂れて、地面に小さな染みができた。次の一滴はなかなか落ちない。かごを少し揺らしてみようかと思ったが、やめた。そのまま、手を引っ込めて、ポケットを探る。何もなかった。立ち上がり、その場を離れた。

オフィスの机に置かれた缶コーヒーと書類

残業と腹時計

夕方のオフィスで、書類の端を折り曲げてから手を止めた。時計は六時半を少し回っていた。窓の外はまだ明るいけど、空は灰色っぽい雲で覆われている。湿度が高いのか、窓ガラスが少し曇っているように見えた。

同僚の田中はとっくに帰った。彼のデスクのモニターは消えていて、イスの背もたれに上着が掛かったままだった。忘れたんだろう。

パソコンの画面には、まだ半分も終わってない表が広がっている。明日の朝までには仕上げるって言ったのに、数字がうまく合わない。計算し直そうと思ったが、その前に腹が鳴った。低い、長い音だった。自分でも驚くくらいはっきり聞こえた。周りに人はいないけど、思わず腹に手を当てた。

この時間に帰れば、確かめるまでもなく中央線は混んでいるはずだ。でも残って仕事を続ける気にもなれない。弁当を買いに行くか、コンビニで何か食べてから戻るか。エレベーターホールの自販機で缶コーヒーだけ買って戻ったこともあったが、それだと胃がもっと鳴く。

窓の外を見ると、向かいのビルの窓に明かりが点き始めていた。一階の居酒屋の看板が、ちらつきながら光っている。椅子の背に体重を預けて、天井の蛍光灯を見上げた。目を細めると、光の周りに輪っかが見える。

エアコンの風が首の後ろに当たる。冷たいけど、肌にまとわりつく湿気が取れない。書類の紙の匂いと、床のワックスの匂いが混ざっている。

コーヒーの缶が机の隅に置いてある。まだ開けていない。プルトップに指をかけたまま、止まった。

夕方の街路樹の幹に触れる手

夕方の街路樹、手触りと匂い

夕方の街路樹

幹に手のひらを押し当てた。ざらついた樹皮が指の腹に引っかかる。日中の熱がまだ残っていて、皮膚にじんわりと伝わってくる。幹を巻く蔦の葉はひんやりしていて、触れた指先が一瞬冷えた。まだ温かい空気と混ざって、体温の境界がわからなくなる。指を離すと、樹皮の感触がまだ残っている。

足元に目をやると、根がアスファルトを持ち上げてひび割れを作っている。太い根の表面はつるつるした部分とざらざらした部分が混ざっていて、指でなぞると細かい粒が落ちた。乾いた土の匂いが立ち上がる。根の隣に小さな蟻が一匹、歩いている。足を止めて見ていると、蟻はひび割れの奥へ消えた。根の横に、小さな石が落ちていた。拾って地面に置いた。

顔を上げると、枝の隙間から雲が流れている。薄暗くなり始めた空の色が、葉の裏側に映っている。風が止まっていて、葉の揺れる音がしない。代わりに、遠くで車のエンジン音が聞こえた。その音が次第に近づき、通り過ぎて、また遠ざかる。一時的に排気ガスの匂いが混じったが、すぐに消えた。空の雲がゆっくりと動いているのがわかる。風が吹くたびに、葉の裏側が見える。

もう一度幹に耳を近づけてみた。何の音も聞こえない。樹皮のざらつきだけが頬に当たっている。しばらくそのまま動かずにいると、自分の呼吸の音だけが聞こえてくる。目を閉じてみた。何も変わらない。

夕方の公園のベンチの下に転がる空き缶と靴

夕方の公園、空き缶と靴

駅から歩いて十分ほどの公園に来た。ベンチに座る。足元に空き缶が一つ落ちている。

缶は少し潰れている。昨日の雨で表面に錆びたような茶色い跡がついている。ラベルは半分剥がれかけて、中の銀色が見えている。飲み口の周りに埃が溜まっていた。

夕方の陽射しが木の間から斜めに落ちて、缶の一部だけを照らしている。光が当たった部分は乾いていて、影の部分はまだ少し湿っているように見える。

靴で軽く蹴ると、缶は乾いた音を立てて転がり、数センチ先で止まった。また元の位置に戻す。風が吹いて、缶の横の落ち葉が動いた。遠くで子供の声がして、すぐに静かになる。

手を膝に置いたまま、缶を見ていた。

夕方の東京の歩道にある緑色の電話ボックス

電話ボックスの明かり

電話ボックスの明かり

歩道の端に電話ボックスが一台、設置されている。ボックスは緑色で、塗装が剥げているところがある。歩道側のガラスは曇りがついていて、内側がよく見えない。

中をのぞき込むと蛍光灯がついていた。まだ十七時半で外は明るいのに、あの白い光はもう夜のものだ。受話器がフックにかかっているのが見える。ダイヤルボタンの数字もはっきり見える。ダイヤルボタンの数字はかすれている。

戸を引いた。取っ手はそれほど熱くないが、少し温かかった。中に入ると、冷房はないが直射日光を避けられる分、外よりはましに感じる。受話器を取るとツーという音が続いている。耳に当てると何も聞こえないわけではないが、無音に近い。ボタンを押すかどうか迷って、結局受話器を戻した。受話器のプラスチックは少しべたつく。

案内板の紙は縁が黄ばんでいて、文字が薄くなっている。ボタンの隙間にほこりがたまっている。風はほとんどなく、湿度が高い。汗がにじむ。耳の後ろに汗がたまる。

外に出ると、ガラスの表面に自分の顔が逆さまに映った。ちょうどそのとき、サラリーマンらしい男が通り過ぎていった。スマートフォンを片手に見ている。誰も電話ボックスには近づかない。遠くで蝉の鳴き声が聞こえる。

しばらくその場に立っていた。足元にタイルの継ぎ目がある。左足でその線を踏んでみた。そして、振り返らずに歩き出した。交差点の信号が変わるのが見えた。足音が二つ聞こえた。空はまだ明るいが、西の空が少し赤くなっている。

夕方のガレージに置かれた工具と、半分閉じたシャッターから差し込む光

工場扇の風、夕方のガレージで

夕方、ガレージのシャッターを半分上げた。昨日の雨で地面がまだ濡れているところもある。空気は重く、動かない。温度計は28度だ。湿度が高く、肌にじっとりと貼りつく感じがする。

ネットで見たナカトミの工場扇、QZC-45がタイムセールになっていた。45センチの大きな羽根、キャスター付きで移動できるという。今ガレージにあるのは普通の扇風機で、風が届かない場所が何か所かある。エアコンはないので、夏の夕方はいつもこの重い空気と向き合うことになる。新品を買うかどうか、その値段を何度か見直した。ポイントを使えばもう少し安くなるが、まだ決めていない。画面を閉じて、ガレージの中を歩く。

隅の工具箱の上に、古い扇風機のリモコンが置いてあった。もう使えない。コードが切れている。プラスチックの部分が黄ばみ、ボタンの印字はほとんど消えている。夕方の光がシャッターの隙間から差し込んで、コンクリートの床に長い影を作っている。床には何かの油が垂れた跡がいくつかある。その染みをしばらく見ていた。

工場扇の風量はどれくらいなのだろう。商品ページには3段階の風速調節ができると書いてあった。45センチの羽根が回れば、この湿った空気も動き出すかもしれない。でもまだ買っていないので、想像だけが先にいく。表の道路を車が通る音が聞こえる。シャッターの下から少し風が入ってきたが、ぬるい。タイムセールはあと数時間らしい。もう一度スマホを見ようとして、やめた。ガレージのシャッターを半分閉めた。風が来るかどうかは、まだわからない。

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