
夜の台所、濡れたスポンジの重み
シンクの縁に置いてあったスポンジを取り上げた瞬間、予想より重かった。親指と人差し指で挟んだだけでは持ち上がらず、中指も添えて握り直した。昨日の夜から水を含んだままだったらしい。蛍光灯の白い光がスポンジの表面の小さな穴を照らしていた。
蛇口をひねると、最初に温かい水が出てきた。配管に残っていた分だろうか、それとも外気温のせいか。スポンジを水流の下に持っていくと、含んでいた水が押し出されて薄くなった。指の間から古い水が染み出してきて、洗剤の匂いと混じった。人差し指で表面を押すと、新しい水が吸い込まれていく音がした。
食器用洗剤のボトルを左手で持ち上げたが、思ったより軽い。残量を確かめようと傾けると、中で液体が偏る感触が伝わってきた。スポンジの上に垂らすと、緑色の液体が染み込む前に一瞬表面に留まった。
皿を一枚手に取った。冷蔵庫の低い唸り声が止まり、急に静かになった。スポンジを皿の表面に当てて円を描き始めると、すぐに泡が立った。親指の腹で皿の縁を支えながら、人差し指と中指でスポンジを動かす。泡が指の第二関節まで這い上がってきた。
隣の部屋から扇風機の首振り音が聞こえてきた。皿をすすいでいる途中で、スポンジから垂れた泡が素足の甲に落ちた。冷たさが一瞬走って、すぐに温かくなった。水を止めようと蛇口に手を伸ばしかけたが、まだ泡が流し台の隅に残っているのが見えた。スポンジを絞る手を止めて、そのまま立っていた。窓の外から遠くの車の音が聞こえてきて、また消えた。








