
夕方のアリ、指先の重さ
歩道のひび割れに沿って黒いものが動いていた。アリだ。夕方の影が長く伸びて、アスファルトはまだ熱を持っている。しゃがみ込んで、人差し指を横に置いてみた。
アリは指に触れる前に一度止まった。触角を左右に振って、それから前足を指の腹にかけた。登ってくる。六本の足が交互に動く感触が、思っていたよりはっきりしている。指先まで来ると、そこでまた止まった。爪の横を調べるように触角を動かして、今度は手の甲へ降りようとする。
そういえば、アリって自分の体重の何倍も運べるんだっけ。気になって調べてみたら、働きアリは体重の10倍から50倍の物を運べるらしい。種類によって違うけど、クロオオアリなんかは100倍近くまでいくとか。へぇ、と声が出た。人間だったら車を担いで歩くようなものか。
手の甲を歩くアリの重さを感じようとしたけど、ほとんど分からない。でも足が皮膚を押す感じはある。ちくちくというほどでもない、何かが触れている程度。息を吹きかけたら、アリは立ち止まって触角をぴんと立てた。風が収まると、また歩き始める。
そっと手を地面に戻すと、アリはすぐに降りていった。元のひび割れに沿って歩いていく。巣に向かっているのか、餌を探しているのか。見ていたら、草の茎を迂回して、また真っすぐ進み始めた。僕は立ち上がって、手の甲を見た。さっきアリが歩いた跡は、もう何も残っていない。








