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思考と技術の記録。besoft Blog

開発・設計・運用・プロダクトづくりのなかで得た知見を、読みやすくまとめて共有します。

記事一覧

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夕方の歩道に落ちた影とアリ

夕方のアリ、指先の重さ

歩道のひび割れに沿って黒いものが動いていた。アリだ。夕方の影が長く伸びて、アスファルトはまだ熱を持っている。しゃがみ込んで、人差し指を横に置いてみた。

アリは指に触れる前に一度止まった。触角を左右に振って、それから前足を指の腹にかけた。登ってくる。六本の足が交互に動く感触が、思っていたよりはっきりしている。指先まで来ると、そこでまた止まった。爪の横を調べるように触角を動かして、今度は手の甲へ降りようとする。

そういえば、アリって自分の体重の何倍も運べるんだっけ。気になって調べてみたら、働きアリは体重の10倍から50倍の物を運べるらしい。種類によって違うけど、クロオオアリなんかは100倍近くまでいくとか。へぇ、と声が出た。人間だったら車を担いで歩くようなものか。

手の甲を歩くアリの重さを感じようとしたけど、ほとんど分からない。でも足が皮膚を押す感じはある。ちくちくというほどでもない、何かが触れている程度。息を吹きかけたら、アリは立ち止まって触角をぴんと立てた。風が収まると、また歩き始める。

そっと手を地面に戻すと、アリはすぐに降りていった。元のひび割れに沿って歩いていく。巣に向かっているのか、餌を探しているのか。見ていたら、草の茎を迂回して、また真っすぐ進み始めた。僕は立ち上がって、手の甲を見た。さっきアリが歩いた跡は、もう何も残っていない。

夏の日差しが差し込む狭い路地に取り付けられた古い金属製の看板と錆びた留め金

遅い朝の路地、錆びた看板の留め金

錆びた金具との出会い

そういえば、あの路地の看板はいつから傾いているんだろう。

商店街の裏手、ゴミ収集所への近道として使っている細い路地。今朝も通りかかったら、壁に取り付けられた古い看板の下側が、前より垂れ下がっていた。近づいてみると、四隅を固定している留め金のうち、右下の一つが完全に外れている。

人差し指で残った三つの留め金を順に触ってみた。左上のやつは、赤茶色の錆で覆われているけれど、まだしっかりと壁に食い込んでいる。指先に錆のざらつきが残る。右上は……おや、これも少しぐらついている。親指と人差し指で挟んでひねってみると、わずかに回転した。ネジ山が潰れかけているらしい。

金属の温度

左下の留め金は、なぜか他より冷たい。日陰になっているわけでもないのに。手のひら全体で触れてみると、やはり温度が違う。材質が違うのか。よく見ると、こいつだけ錆びていない。後から交換したのかもしれない。

蝉の声が急に大きくなった。すぐ上の電線に止まったらしい。顔を上げると、黒い影が揺れている。

看板の表面をなでてみる。塗装が剥がれかけていて、下地の金属が露出している部分がある。そこだけ妙に滑らかだ。誰かが頻繁に触っているのだろうか。でも、この高さだと子供には届かないし……。

小さな謎と放置

外れた留め金を拾い上げてみた。意外と軽い。アルミ製か。ネジの部分を壁の穴に合わせてみたけれど、もう固定できそうにない。穴自体が広がってしまっている。セメントの粉が指についた。

まあ、このままでも看板は落ちないだろう。三点で支えられていれば、なんとか持つはずだ。物理の授業で習った気がする。三角形がどうとか。

留め金をポケットに入れようとして、やめた。路地の隅、配管の陰に置いておく。誰かが直すときに使うかもしれない。

ゴミ収集所への道を急ぐ。手に錆の匂いが残っている。

ノートPCのキーボードと画面の端に小さく光る赤い通知バッジ

遅い朝の通知バッジ、赤い点の重み

コーヒーカップを置いて、画面に戻ろうとしたら、ブラウザのタブに赤い点が増えていた。

人差し指と中指でトラックパッドを撫でる。カーソルがゆっくりと赤い印に近づいていく。タブの文字が「災害支援」という単語で始まっているのが見えた。指先がパッドから浮く。そのまま二秒ほど、手が宙に留まる。

窓から入る光が、キーボードの上に斜めの影を作っている。エアコンの音が一定のリズムで続いている。

親指でパッドを押し込もうとして、やめた。代わりに薬指でタブの横の×印をクリックする。小さなポップ音とともに、赤い点が消える。でも、すぐ隣のタブにも同じような印がついていることに気づく。

昨日も似たような通知を消した記憶がある。あの時は夕方だった。今度は朝か。更新のタイミングがあるのかもしれない。いや、単に見る人が多い時間帯に合わせているだけか。

キーボードから手を離す。指先がひんやりとしている。パッドを触っていた部分だけ、体温が逃げたみたいだ。

画面の右下に、また別の通知が滑り込んでくる。今度は青い。支援とは関係ない、何かの更新通知らしい。

マウスに手を伸ばしかけて、止める。コーヒーがまだ温かいうちに飲んでしまおう。カップを持ち上げると、底にわずかに残った液体が、傾きに合わせて動いた。

樹皮にしがみついた蝉の抜け殻、朝の光

朝の蝉の抜け殻、樹皮の細かい繊維

公園のベンチに座ろうとして、脇の木に目が留まった。蝉の抜け殻が、肩の高さあたりにしがみついている。

人差し指と親指で殻の胸のあたりをつまんでみる。思ったより軽い。いや、軽いというより、ほとんど重さを感じない。指に力を入れすぎないよう、そっと引っ張ると、爪が樹皮から離れる時にかすかな音がした。パチッというような、小さな乾いた音。

殻を顔の前まで持ち上げて、背中の割れ目を覗き込む。中は完全に空洞で、胸の内側に白っぽい糸のようなものが見える。気管の跡らしい。蝉が脱皮する時、この気管も一緒に引き抜くんだとか。へぇ、器用なもんだな。

樹皮をよく見ると、殻がしがみついていた場所に小さな傷が六つ、点々と残っている。爪の跡か。指で触ってみると、樹皮の表面がほんの少しへこんでいるのが分かる。

殻を元の場所に戻そうとして、でもうまく引っかからない。爪を樹皮の隙間に差し込もうとするけど、殻がくるりと回ってしまう。結局、枝の分かれ目のところに置いておくことにした。

ベンチに座り直して、手のひらを見る。薄茶色の粉のようなものが少しついている。殻の表面から剥がれたものか、それとも樹皮の破片か。ズボンで軽く払って、また空を見上げた。

どこかで蝉が鳴いている。まだ朝なのに、もうずいぶん暑い。

朝の街角にある自動販売機の釣り銭口に手を伸ばす様子

朝の自販機、釣り銭口の縁

朝の自販機で缶コーヒーを買おうとして、百円玉を二枚入れた。一枚目はすんなり入ったけど、二枚目が戻ってきた。釣り銭口に指を突っ込むと、縁の金属が思ったより冷たくて、人差し指を一度引っ込めた。

もう一度、今度は中指で探る。プラスチックの返却レバーじゃなくて、その下の金属部分。朝露なのか、昨日の雨の名残なのか、わずかに湿っている。指先をずらしていくと、奥の方に百円玉の端が触れた。爪の先でカチッと音がして、でも取れない。

隣でサラリーマンが同じ自販機にお札を入れている。ウィーンという音。彼は迷わずボタンを押して、ガコンと缶を取り出していく。僕はまだ釣り銭口に指を突っ込んだまま。親指も加えて挟もうとするけど、角度が悪い。

そういえば、自販機の釣り銭口って昔はもっと深かったような気がする。子供の頃、よく忘れられた小銭を探したものだ。今のは浅くて、でも逆に取りにくい。設計者は何を考えてこの深さにしたんだろう。

結局、人差し指の腹で押し出すようにして百円玉を取った。温まった硬貨を握りしめて、今度は慎重に投入口へ。カチャン、今度は無事に入った。ボタンを押す。缶が落ちる音。取り出し口に手を入れると、缶の底がひんやりしていて、さっきの釣り銭口の冷たさを思い出した。まあ、朝だからね。

朝の光が差し込む洗面所で、洗濯機の横から排水ホースを覗き込む様子

朝の洗濯機、排水ホースの継ぎ目

洗濯機の脱水音が止まった。扉を開けようとして、ふと排水ホースが気になった。いつもは見ない裏側。しゃがみ込んで覗いてみる。

灰色のプラスチックの継ぎ目が、ホースバンドで締められている。指で触ると、表面がざらついていた。人差し指で撫でてみると、細かい凹凸がある。これって劣化の始まりなんだろうか。親指でぐっと押してみたけど、まだ弾力は残っている。でも、端の方は少し白っぽくなっていて、粉を吹いたみたいだ。

そういえば、この洗濯機を買ってもう七年になる。家電の寿命って、だいたい十年くらいと聞いたことがある。排水ホースの交換時期も調べてみた。メーカーのサイトには「二、三年ごとの点検を」と書いてあった。へぇ、と声が出た。一度も交換したことがない。

ホースバンドのネジ部分を指でつまんでみる。錆びてはいないけど、少し緩んでいる気もする。ドライバーで締め直そうかと思って、工具箱を取りに行きかけたが、やめた。今すぐじゃなくてもいいか。

立ち上がって、洗濯物を取り出す。窓から入る朝の光が、濡れたシャツに当たってきらきらしている。排水口の方を見ると、まだ少し水が残っているようだった。継ぎ目から漏れているわけじゃなさそうだ。

まあ、次の休みにでもホームセンターに行って、新しいホースを見てこよう。そう思いながら、洗濯物を抱えてベランダへ向かった。

朝の光を受けるヒマワリの茎と手元

朝のヒマワリ、茎の産毛

庭に出たとき、ヒマワリの茎が傾いていた。支柱に結んだ麻紐が緩んでいる。茎に手を伸ばすと、表面の産毛が指先にざらついた。細かい毛が朝の光に白く浮かんでいる。親指と人差し指で挟むと、思ったより太い。力を入れずにそのまま上へ滑らせると、産毛の感触が途切れたり戻ったりした。

葉の付け根で指が止まる。葉の裏側が白っぽく、表より毛が密だった。茎を支えたまま麻紐を結び直そうとしたが、片手では難しい。一度手を離すと、茎がゆっくりと元の傾きに戻っていく。

花の重みか、それとも昨日の雨のせいか。迷いながらもう一度茎を起こす。今度は肘で支えながら両手で紐を結ぶ。結び目を作る間、顔が花に近づいた。花びらはまだ開ききっていない。中心の茶色い部分に朝露が残っている。

ヒマワリの花言葉は「あなただけを見つめる」と言われる。去年、花屋の値札で見た記憶がある。紐を結び終えて手を離すと、茎はわずかに揺れて止まった。

水やりのホースに手を伸ばしかけて、やめた。土はまだ湿っている。指先に茎の産毛の感触が残っていた。ざらざらとして、でも柔らかい。もう一度触ろうとして手を引いた。隣の家から換気扇の音が聞こえてくる。ヒマワリは真っ直ぐ立っていたが、花の向きは変わらないまま、東の空を向いていた。

深夜のベッドサイドでスマートフォンの画面を見る手元

深夜のスマホ画面、震度の数字と赤い地図

枕元で鳴った通知音に手を伸ばした。充電コードがついたままのスマホを持ち上げると、画面の明るさで目がくらむ。自動調整をオフにしたままだった。

赤い色が地図の上に広がっていた。震度という文字の隣に数字が並ぶ。7、6強、6弱。知らない土地の名前がいくつか表示されている。親指で画面を上にずらすと、更新時刻が出てきた。21時半すぎ。今は深夜0時を回っている。

画面を横にして地図を拡大しようとしたが、指が滑って別のアプリが開いた。戻るボタンを押す。また通知が入り、画面上部に小さく文字が流れた。病院、手当て、意識なし。途中で切れて全文は見えない。

充電コードを握ったまま、ベッドの端に座り直した。コードの被覆がところどころ剥がれかけていて、指先に引っかかる。画面をもう一度見る。数字は変わっていない。7、6強、6弱。

隣の部屋から物音がした。誰かが起きたらしい。廊下の隙間から光が漏れてくる。画面の明るさを下げようとして、間違えて音量ボタンを押した。無音のまま音量バーだけが表示される。

スマホを置いて横になった。充電コードが首筋に触れて冷たい。天井の暗がりに、さっきの赤い地図の残像がまだ浮かんでいる。エアコンの送風音が急に大きく聞こえた。また通知音が鳴る。今度は手を伸ばさず、青白い光が天井に反射するのを見ていた。

夜の台所で換気扇の羽根を触る手元

夜の換気扇、羽根の油膜

換気扇のカバーを外した。羽根の縁に指を当てると、油膜がぬるりと指先を覆った。人差し指と親指をこすり合わせてみる。粘りがあって、離すときに細い糸を引いた。

洗剤をスプレーしようと手を伸ばしたが、ボトルの底が濡れていた。流しの縁に置き直す。換気扇の羽根を見上げると、蛍光灯の光が油膜に反射して、虹色の筋が浮かんでいた。去年の大掃除のとき、同じように虹色を見た記憶がよぎる。あのときは昼間だったか。

羽根を指で押してみた。軸が少しだけ回転して、カタンと音を立てて止まった。もう一度押す。今度は抵抗があって動かない。力を込めると、指が油で滑った。

隣の部屋から同居人の足音がした。廊下を通って洗面所へ向かう音。水が流れる音が壁越しに聞こえてくる。

スプレーボトルを手に取り、換気扇に向けて二回押した。泡が羽根に付着して、ゆっくりと垂れ始める。一滴が私の手首に落ちた。冷たくて、レモンの匂いがした。

羽根の隙間から奥を覗き込む。モーターの黒い塊が見える。その周りにも油と埃が層になっていた。指を差し込もうとしたが、届かない。手を引いて、また羽根の表面を撫でた。泡と油が混ざって、白く濁った液体になっていく。

台所の窓の外は真っ暗で、自分の姿がぼんやり映っていた。腕を上げたまま、換気扇を見上げている姿。泡がまた一滴、今度は床に落ちた音がした。拭かずに、そのまま羽根の油膜を指でなぞり続けた。金属の冷たさが、まだ指先に残っている。

夜の暗い部屋でタブレットを持つ手元、画面の光と充電ケーブル

夜のタブレット、震度の数字と充電コード

タブレットの通知音が二回鳴って、布団の横に置いていた端末を引き寄せた。画面の上部に赤い枠で囲まれた文字が並んでいて、震度という字と数字が見えた。親指でロックを解除しようとしたが、指紋が読み取れずにもう一度押し直した。

画面を横向きにすると、地図が表示された。知らない地名がいくつか並んでいて、赤い円が重なっていた。人差し指で画面に触れると、円の大きさが変わった。指を離すと元に戻った。もう一度触れて、今度は少し長く押した。画面の明るさで、枕元のティッシュ箱の角が白く浮かび上がった。

充電コードを探った。ケーブルの先端が布団の隙間に入り込んでいて、引っ張ると抵抗があった。もう一度引くと、するりと抜けてきた。端子の金属部分に埃がついていて、シャツの裾で拭いた。

タブレットの充電口にケーブルを差し込もうとしたが、向きが逆だった。裏返して差し直すと、小さくカチッと音がした。充電中を示すアイコンが右上に現れた。

画面をもう一度見た。更新時刻が「21:57」となっていた。下にスクロールすると、同じような赤い文字の通知がいくつも続いていた。親指が画面の端についたまま、そのままの位置で止まっていた。エアコンの送風音だけが部屋に流れていて、画面の光で照らされた親指の腹に、細かい指紋の線が見えた。

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