Blog

思考と技術の記録。besoft Blog

開発・設計・運用・プロダクトづくりのなかで得た知見を、読みやすくまとめて共有します。

記事一覧

投稿日が新しい順に表示しています。

オフィスのデスクでスマートフォンの画面を見つめる男性の後ろ姿。画面には通知が表示されているが、内容は読めない。

昼下がりの通知、タブを閉じるまで

あ、また来た。スマホの画面に、見慣れたアイコンと赤字のバッジ。キャリアからのお知らせだ。何だろう、と思いつつ指でタップする。親指の腹で軽く押すと、すぐにブラウザが起動して見出しが並んだ。データ容量が増えるキャンペーン、だって。

スクロールしようとした指が止まる。なんとなく、数字の部分だけ目で追った。30が40になる、という一行。へえ、と思って少しだけ画面を上に進める。指先でそっとガラスをなぞると、文字の並びが動いて、同じような説明が下まで続いていた。

僕は一度、画面の上部に人差し指を乗せて、タブを切り替えようか迷った。結局、別の指でそっとタブの×印を押す。軽く触れただけで、画面は元のニュース一覧に戻った。

エアコンの風がかすかに聞こえる。午後1時半、窓の外は雲が増えてきた頃だ。もう一度スマホを見ると、バッジの数字が増えている。さっきの通知はまだ未読のまま、別の見出しが目に入った。別の会社が買収されるらしい、というやつ。

なんとなく、その見出しをタップしてみる。でもすぐに、画面を閉じた。今度は指を止める間もなく、×印を押して。また通知一覧に戻る。増えたバッジがちょっとだけ気になったけど、まあ、あとで消せばいいか。

リビングのテーブルに伏せたスマートフォンと、遠くに見えるキッチンの様子。

昼前のスマホ、凍るそうめんつゆの通知

昼前、スマホが短く震えた。画面を覗くと、ニュースの通知が一件。「凍るそうめんつゆ」の文字が見える。何だそれ、と思う。4ヶ月で70万食売れたらしい。へえ。

指でタップするか迷って、やめる。人差し指で画面の端をなぞり、そのまま裏返しにテーブルに置いた。コト、と小さな音がする。

冷房の風が首筋に当たる。外は33度を超えているらしい。部屋の中の空気は動きが鈍くて、少しだけ汗ばんだ手のひらがスマホの背面に跡をつける。もう一度画面を見ようかと思ったけど、指先が触れただけでやっぱりやめた。

そうめんつゆが凍る、ってどういう仕組みなんだろう。ゼリー状になるのか、それともシャーベットみたいになるのか。気になって調べてみたら、冷凍庫で凍らせて使う専用のつゆで、食べ進めるとだんだん溶けて味が変わるらしい。昔、かき氷のシロップを凍らせて食べたことを思い出した。あれは凍らせてもただ甘いだけだったけど。

キッチンの方から、隣の部屋にいる家族の話し声がかすかに聞こえる。何を言っているのかはわからない。エアコンの室外機の低い唸りも混ざっている。

まあ、そんなに売れてるなら今度スーパーで探してみてもいいか。でも、この暑さじゃ買いに行くのも億劫だ。スマホを表に返し、通知をスワイプで消した。画面が真っ暗になる。冷たいつゆの感触を、少し想像してから、立ち上がって冷蔵庫を開けた。

午前の路地のアスファルトに落ちた赤い小花と、それを拾い上げる指

午前の路地、アスファルトに落ちた小さな花

新聞を取りに出たついでに、路地の奥へ少しだけ足を伸ばしてみた。日はもう高くて、アスファルトの照り返しがすごい。32度ってとこか。でも風がちょっとだけあって、湿った熱気が頬にまとわりつく感じ。

足元に、赤い花が落ちてた。小指の先くらいの大きさで、細い茎がついてる。多分、どこかの鉢植えから落ちたんだろう。上を見ても、窓辺にそれらしいのは見当たらない。アスファルトの上だと、花の赤さが妙に浮いて見える。

しゃがんで拾う。親指と人差し指で茎をつまむと、まだ水気が残っててしっとりしてる。花びらは五枚? いや、四枚か。真ん中に白い蕊みたいなのが見える。匂いをかぐ。甘いような、草っぽいような、どっちつかず。

立ち上がって、花びらを指でそっと潰してみた。少し力を入れると、水分が指先ににじむ。色はそのままだけど、潰れた部分が濃くなる。指を離すと、花びらは元に戻らなくて、しわが寄ったまま。

ふう、と息を吐いて、花をそっと元の場所に置いた。なんの花かはわからない。調べる気も起きない。ただ、拾って、潰して、置いただけ。でも指先には、まだ赤い色と匂いがかすかに残ってる。

玄関に戻って、手を洗おうか迷ったけど、そのまま新聞を手に取った。しばらくしてから、また指の匂いをかいでみたけど、もうほとんどしなかった。まあ、そんなものか。

遅い朝の生け垣に張られたクモの巣、細かい水滴が光る

午前のクモの巣、指に絡んだ糸

そういえば、駅までの近道にある生け垣のあたり、いつも朝はクモの巣が多いんだよな。今日は特に気をつけて通ろうと思ってたのに、結局、顔の前で右手をかざすのが遅れた。糸が指の股のあたりにかかる。べたつくような、でもしっとりした感触。親指の先で軽くつまもうとしたら、指先にまとわりついて離れない。仕方なく、指をこすり合わせてみる。糸は目に見えないけれど、確かに邪魔な膜みたいに残ってる。

少し屈んで、生け垣の隙間をのぞき込む。放射状に張られた糸が、朝の光を受けて、水滴をいくつもくっつけていた。真ん中には小さなクモ。脚をたたんでじっとしている。さっきの接触で、巣の一部が切れてしまったらしい。クモは動かない。僕はその場にしゃがみ込まず、中腰のまま数秒止まる。通りがかった自転車の音が後ろでして、それからまた静かになった。

人差し指の腹で、もう一度親指の根元をなぞる。まだ何かがついてる気がする。でも、視界には何も映らない。透明な糸って、乾くと消えたようになるらしい。そういえば、クモの糸は人間の髪の毛よりずっと細くて、強度は鋼鉄以上だという。へぇ、じゃあ今のこの違和感も、まあ、あながち気のせいじゃないのかもしれない。指をパタパタと振って、そのまま歩き出す。手のひらには、もう何の感触もなかった。

朝の商店街、冷凍ケースの結露に指を触れる

朝の商店街、冷凍ケースの結露

商店街を抜けようとして、精肉店の前で足が止まった。店先の冷凍ケース、ガラス面にびっしり水滴がついている。朝の光を受けて、それが細かく光っていた。

人差し指の先で、そっと触れてみる。ひんやりとした冷たさが指に吸いつく。そのまま指を少し横にずらすと、水滴が筋になって、ガラスの向こうの肉のパックが一瞬くっきり見えた。力を抜くと、また曇りが戻ってくる。

そういえば、これって結露というやつだよな。冷凍庫の中と外の温度差で起こる。夏場は特にひどくて、店の人はしょっちゅう拭いているんだろう。隣の八百屋から「らっしゃい」という声が聞こえたけど、僕はまだケースの前に立っていた。

指を離すと、触れた跡が丸く残った。すぐにまた水滴が集まってきて、跡は消えていく。その速さがなんとなく面白くて、もう一度、今度は指の腹全体で押し当ててみた。さっきより大きな跡がつく。冷たさが指の関節まで伝わって、じんわりと痛いような気もする。まあ、大したことじゃないけど。

ふと横を見ると、自転車に乗ったおばあさんが通り過ぎるところだった。買い物袋をハンドルにかけて、ゆっくりペダルを漕いでいる。僕はまたケースに目を戻した。もう指は触れずに、ただガラス面の水滴の動きを見ていた。細かい粒がくっついて、大きくなって、下に流れ落ちる。その不規則な動きを、しばらく眺めていた。

朝の光の中で、手がラベンダーの葉の裏に触れている様子

朝のラベンダー、葉の裏の白さ

ベランダのラベンダーに水をやろうと思った。朝の光はまだ柔らかくて、鉢の土がほんのり湿っているのが見える。

葉の先が少し茶色くなっているのに気づいて、摘もうと手を伸ばした。親指と人差し指で葉の縁をつまむ。そのとき、指が葉の裏に触れて、思ったより柔らかい感触がした。

表は緑なのに、裏側は白っぽい。なんだか粉をふいたみたいだ。人差し指の腹でそっと撫でてみる。ざらざらしているのかと思ったけど、意外と滑らかだった。少し力を入れてこすると、指に薄っすらと白いものがついた。

これは何だろう。毛だろうか。それとも、植物が出す粉みたいなものなのか。前に読んだ本で、ラベンダーの葉の裏には細かい毛が生えていると書いてあったのを思い出した。乾燥に耐えるための仕組みらしい。南フランスの暑くて乾いた土地を想像してみる。あの紫色の花畑の下で、葉っぱたちはこうやって水分を守っているのか。

そういえば、ラベンダーの花言葉は「沈黙」だった。去年、鉢を買ったとき、店先の小さなカードにそう書いてあった。へえ、と思ってそのまま忘れていた。

もう一度葉に触れる。香りがふわりと立った。さっき水をやったせいか、いつもより強い気がする。指先を鼻に近づけると、あの甘くてすっとする匂いが残っていた。

手を止めて、隣の家の壁を見る。朝の静けさの中で、ラベンダーの香りだけが漂っている。葉の裏の白さは、沈黙しているみたいだ。

夏の夜、洗面所のコップを手に取る手元。縁に水跡が光る。

夜の洗面台、コップの縁の水跡

夏の夜、顔を洗おうと洗面台に立つ。窓の外はもう真っ暗で、冷房の効いた部屋から一歩入ると、ここだけ空気が少し違う。湿り気を含んだぬるさが肌にまとわりつく感じがした。

蛇口をひねって水を出し、両手ですくって顔に当てる。少しだけ生ぬるい。もう一度すくい、今度は口に含んでから吐き出す。うがいをしようと、置いてあったコップを手に取った。

コップは陶器製で、白地に細かいひびが入っている。いつからあるのか覚えていない。縁に指をかけると、かすかにざらつく部分があった。目を近づけると、水滴の乾いた跡がくっきりと輪を作っている。なるほど、これは昨日の夜、僕が使ったまま放置したやつだ。

人差し指でその跡をなぞってみる。最初は指先に何も感じなかったが、少し力を入れてゆっくり動かすと、微かな凹凸が伝わってきた。水に含まれていたカルキか何かが固まったのだろうか。少しだけ白く濁った線が、指の動きに合わせて薄れていく。

ふと、コップを逆さまにして底を見る。そこにも同じような跡が点々とある。どうやら洗った後にちゃんと拭かずに伏せておくから、こうなるらしい。まあ、気にしたことなんてなかったけど、よく見ると面白い模様だな、と思う。

顔を上げると、鏡に映った自分が同じコップを持って立っている。目が合った気がして、すぐに視線を外した。口に水を含んでうがいをし、勢いよく吐き出す。コップを軽くゆすいで、また伏せて置いた。次に使うときも、きっと同じように跡がついているんだろうな。

夕方の台所の三角コーナー、指先で触れた水切りの網目と微かな食材の残り

台所の三角コーナー、夕方の水切り

夕食の皿を洗い終えて、三角コーナーの水を切ろうと手を伸ばした。

指先でつまんだ網の部分は、まだ少しぬるま湯の温度が残っていた。人差し指と親指で縁を持ち上げると、予想より軽い。中には茶殻と、夕飯で使ったネギの青い部分が数切れ。それから、なぜか一粒だけ残った米。

網目を親指の腹でなぞってみる。ステンレスの細かい格子が、指紋に引っかかるような、引っかからないような感触。力を抜いてもう一度なぞると、今度は網目の並びを指先が拾う。縦、横、縦、横。思わず三回、四回と繰り返してしまった。

ふと、昨日の雨で湿った空気のせいか、網がいつもよりひんやりしている気がした。指を離すと、わずかに濡れた指先に、台所の照明が小さく反射している。

流しの排水口から、かすかに水の流れる音が聞こえる。どこか上の階で誰かが水を使っているんだろう。音に合わせて、また網目をなぞる。今度は米粒をつまんで、ゴミ箱へ。ネギの切れ端は網にへばりついていて、爪でこそげ落とした。

そういえば、この三角コーナー、買い替えてからもう半年くらいになる。前のはもっと目が粗くて、細かい茶殻がすぐに下に落ちてしまっていた。今のは随分と目が細かい。店で手に取って、なんとなくこれを選んだんだよな。

そんなことを思いながら、三角コーナーを元の位置に戻す。手を拭いて、蛇口の水滴を親指で拭った。夕方の台所は、外の暑さが嘘みたいに静かだ。まあ、あとは何もない。コップに水を注いで、一口飲んだ。

夕方の駅のエスカレーター、手すりに触れる指先と空いた通路

早帰りの金曜、エスカレーターの手すり

仕事が落ちてこないうちに帰ろう。そう思って早めにオフィスを出た。外はまだ明るくて、陽射しも眩しい。銀座の街にセミの声は聞こえない。いたら、多分VUITTONの服を着てるんだろうな、なんてどうでもいいことを考えながら駅へ向かった。

改札を抜けてエスカレーターに乗る。いつもより空いている。前には誰もいなくて、後ろからも足音はしない。右手で手すりのゴムを握った。親指と人差し指で軽くつまんで、少しだけ力を入れる。すべるような、吸い付くような感触。手を離して、今度は指の腹でなぞってみる。ざらついているような、でも滑らかだ。こういうの、昔はもっとベタベタしてなかったかな。なんて思いながら、手をパーに開いて手すり全体を包んでみた。体温がゴムに移っていくのがわかる。

エスカレーターを降りて、乗り換え通路を歩く。壁にある大きな換気口から、生ぬるい風が出ていた。外と変わらないくらいの温度だ。この風、どこから引いてるんだろう。多分、地下の空気を循環させてるだけなのかもしれない。調べてみたけど、詳しい仕組みはよくわからなかった。

電車はわりと空いていた。座れないまでも、吊り革につかまる場所には困らない。いつもは人で埋まっている時間なのに、金曜の夕方ってこんなものか。

一駅すぎて、隣の人が降りた。空いた席に腰を下ろす。窓の外はもう薄暗くなり始めている。早く帰ると、なんとなく一日が長い。

まあ、たまにはこういうのも悪くない。

信号機の押しボタンに触れる指

信号のボタン、押しごたえ

交差点で信号待ちをしていた。ボタンが押されているか確かめたくて、押してみることにした。

人差し指の腹でボタンの面を押す。最初は軽く、真ん中に触れた。表面はプラスチック製で、太陽の熱で少し温かい。指を少しずつ強く押し込むと、あるところで「カチッ」という感触が指先に伝わった。押し切った後の沈み込みはわずかで、指を離すとすぐに戻る。ボタンの中央は少しすり減っていて、光沢があった。何度も押された跡だ。指を離した後、しばらく押した感覚が残る。

で、待ってみたが、信号は変わらない。もう一度押そうか迷って、結局やめた。そういえば、このボタンには触覚的なフィードバックがあるけど、音はほとんど聞こえない。周りの車のエンジン音や、誰かの足音——そういう音に埋もれてしまうんだろう。たまに、押した瞬間だけ聞こえるかすかな音がある。

ふと、昔のボタンはもっと深く沈んだ気がする。もっと大きなクリック感があった。最近のは小型化されて、感触も浅くなったらしい。でも、確かめたわけじゃない。ただ、そういう話をどこかで読んだような記憶があるだけだ。そういえば、視覚障害者用の音響信号は、このボタンには付いていないらしい。押したときの感触だけが頼りだという話を聞いたことがある。

信号はまだ変わらない。僕はもう一度、ボタンの表面を指でなぞってみた。温かい。熱いのか、それとも自分の指の温度か。まあ、どっちでもいいか。

1 26 27 28 29 30 164