Blog

思考と技術の記録。besoft Blog

開発・設計・運用・プロダクトづくりのなかで得た知見を、読みやすくまとめて共有します。

記事一覧

投稿日が新しい順に表示しています。

薄暗いベランダでアサガオのつぼみに水をやる様子

薄暗がりのベランダで、アサガオのつぼみに水をやった

夕方の水やりをしようとベランダへ出たら、暗くなるのが少し早くなっていた。八月に入ってから、昼間の暑さはまだ残っているのに、七時を過ぎると風が涼しい。アサガオの鉢は、昼間の陽を浴びたコンクリートの壁に寄り添うように置いてある。葉っぱが少ししおれているから、今日一日、ずっとあの照り返しに耐えていたんだなと思う。

じょうろを傾けて、土の表面にゆっくり水を注ぐ。土は乾いていて、最初の水を弾くようにして吸い込んでいく。そのうちに、鉢の縁から透明な水が滲み出て、下の受け皿に溜まっていく。僕は水が溢れないように、じょうろの角度を少しずつ変えながら、根元にまんべんなくかかるように気をつけた。葉っぱにかかった水滴が、薄暗い中でも光っている。

ふと、つぼみの数を数え始めていた。明日の朝、咲くつぼみは固く閉じていて、てっぺんの紐がほんの少し緩んでいる。指で触ると、固いのに、中に水が詰まっているような張りがある。昨日の朝も同じように咲いていた。今日はまだ小さくて、青い色がほんの先っぽに見えている。このつぼみが明日開くかどうかは分からないけど、夜の間に膨らんで、朝には花びらを広げているんだろう。

水をやり終えて、じょうろを蛇口のそばに戻した。受け皿の水を捨てようとしたら、中に小さな枯れ葉が一枚浮かんでいた。昨晩の風で飛んできたのか、それともアサガオ自身が落としたのか。そこに手を入れて取るのも面倒で、そのまま流しっぱなしにした。アサガオは明日、また新しいつぼみを上に伸ばしていく。僕は水をやるだけで、それ以上は知らない。

夜のベランダに置かれた白いビニール袋とプランター

台風13号の夜、ベランダで買い物袋の音を聞いていた

夕方、風がいつの間にか強くなっていた。ベランダに出ると、何かがカサカサと鳴っている。洗濯物は取り込んだはずなのに、音の正体が分からず、しばらく立ち尽くしてしまった。

見ると、二日前にスーパーから持ち帰った白いビニール袋が、手すりの近くで風に煽られていた。中身は空だ。捨てるのを忘れて、そのまま雨ざらしにしていたらしい。袋は小さな生き物みたいに震えていて、破れた口からヒューと音が漏れていた。

ニュースでは、台風13号が沖縄の西にあると報じていた。東京はまだ晴れているのに、その影響で風が強まっているのだろう。袋を拾おうと手を伸ばして、やめた。風が強いと、触った拍子に舞い上がりそうだったからだ。

結局、袋はそのまま置いておくことにした。明日の朝に片付ければいい。ただし、夜のうちに風で飛ばされたら、ご近所のベランダに落ちているかもしれない。そう考えると、少しだけ気が重い。

台風の進路はまだはっきりしないという。買い物袋を放置していたのは僕だけかもしれないが、ベランダの端に積んだ植木鉢を動かしておくべきだったかな、と今さら思う。風の音を聞きながら、今夜は眠れない夜になる気がしている。

真昼の踏切で遮断機の影がアスファルトに伸びる様子

真昼の踏切で、遮断機の影を数えていた

遮断機が下りてから、まだ電車が来ない。昼過ぎの踏切で、僕はアスファルトに伸びる影を数えていた。遮断機の影は二本、横木の影がもう一本。合わせて三本。数え終わっても、まだ通過音は聞こえない。

この踏切は遮断時間が長いことで有名で、地元の人たちは文庫本を取り出して待つ。僕はポケットの中で鍵を回して、時間を潰す。普段なら気にしない警報音が、今日はかぐや姫の音楽に聞こえてくる。昔、学校の近くの踏切で同じ音を聞いた。あの時は夏休みで、ラジオ体操の帰り道だった。

ふと見ると、遮断機の影が動いている。風で少し揺れているようだった。影を動かす風が、踏切の周りの草を揺らしている。その草の青さが、真昼の光で透けて見える。僕は影の先端がどこに落ちるのか、目で追った。白い線の少し手前。電車が通れば、その線も踏まれる。

どこかの家の犬が吠えた。遮断機の音に驚いたのかもしれない。犬の声で、僕は影から意識が外れた。時刻はまだ午後三時を過ぎたばかりで、日差しは強い。踏切の向こうの信号が変わり、車が動き出した。それでも遮断機は上がらない。

僕はもう一度影を数えた。三本のまま。結局、遮断機が上がったのは、それから三分後だった。僕は鍵をポケットに戻して、歩き出した。影のことは、そこまで考えていたのに、もう忘れかけている。

夏の昼下がり、街角の自動販売機の前でボタンを眺める男性

昼下がりの自販機、ボタンの色を数えていた

自動販売機の前で、僕はボタンの数を数えていた。五列に並んだ色とりどりのボタンが、夏の光を受けて妙に鮮やかに見える。この時間、日陰はまだ半分手前で、指先に汗が滲んできた。

飲み物を買うだけなのに、なぜか一番下の段の右から二つ目を押す気にならない。色のバランスが悪いからだ。赤、青、緑、そしてまた赤。僕はこの並びをずっと見つめて、結局一番左のオレンジにした。

隣の自販機には、若い女の子が二人いた。一人が小銭を入れながら、もう一人に「どれにする?」と聞いている。僕は遠くから、彼女たちの指がボタンに触れる瞬間を待っていた。けれど、二人はすぐに決めて、スポーツドリンクとレモン水を持って歩き出した。あの指の動きには、迷いがなかった。

缶が出てくる音がして、僕は我に返る。手に取ると、思いの外冷たくて、指の付け根が少し痛んだ。そのまま蓋を開けずに、自販機の脇にある歩道橋の影まで移動した。

影の中に立つと、さっきまで見ていたボタンの色が頭に残っている。あの並びは、僕がいつも押す場所と、なぜか一つだけ違う気がした。どうでもいいことなのに、それが気になって、もう一度自販機の方を見た。

缶の結露が手のひらに広がって、僕はようやく一口飲んだ。炭酸の音が喉の奥で弾けて、それから自分が朝から何も食べていなかったことを思い出した。

真昼の川辺に積まれた小石と水の流れ

真昼の川辺で、小石の温度を確かめる

昼過ぎの川辺に寄り道した。用事の途中、橋のたもとから階段を下りると、思ったより水の音が近かった。きのうの小雨で少し増水しているのだろう、よどみに枯れ枝が何本か引っかかっていた。

日差しが強くて、川原の石が白く光っている。靴を脱ぐまでもなく、手を伸ばせば届く場所に、掌サイズの平たい小石があった。拾い上げてみると、驚くほど熱い。乾いた表面はざらついていて、指先で押すとすぐに温度が伝わる。太陽が近いせいか、持っているうちに手のひらが汗ばんできた。

それをそのまま水の浅いところへ浸けてみた。水は思いのほか冷たく、石の熱が引いていくのが分かったような気がした。数秒で取り出して、今度はさっきより少しだけ冷たい石を握り直す。濡れた石は色が濃くなっていて、乾いた時と同じ石だとは思えなかった。

何度か水に入れたり出したりしているうちに、指先がくしゃくしゃになってきた。ふと足元を見ると、水際の砂に自分の影が落ちていた。時刻は正午を少し過ぎたところで、影はほとんど自分の足の下に縮こまっていた。そんなことは当たり前なのに、改めて見ると夏の日差しの角度を実感する。

小石は結局、乾いた場所に戻して置いた。あとで誰かが拾っても、それがさっきまで水に浸かっていたとは分からないだろう。それでいいのかもしれないと思いながら、階段を上がった。

早朝の露草と水滴を撮影した手作りフェルトのミニチュア風景

朝の露草、花言葉を数える

七時を過ぎたばかりの庭で、露草が一輪だけ咲いているのに気づいた。昨日の夕方にはなかった場所で、茎が伸びるのも咲くのも一晩の出来事らしい。隣の株はまだ蕾で、この一輪だけが朝の光を受けて青く透けていた。

露草の花言葉は「尊敬」と「小夜曲」と聞いたことがある。露草は朝に咲いて昼にはしぼむ儚い花として知られるのに、「尊敬」という言葉は少し硬い気がして、何度か記憶の隅で引っかかっていた。そのうち「小夜曲」のほうは本当かどうか分からなくなり、結局どちらも確かめないままにしている。

花びらを見ると、上の二枚は青が濃くて大きいのに、下の一枚だけ小さくて白い。青色が浅いところを取り出したような白で、それがどこか中途半端な感じを残していた。触ると紙みたいに薄く、それでいて水を含んでいて、指先にわずかな重みが張り付いた。

風が止んだ隙に、花びらの先に溜まった露を傾けてみた。丸い水滴がゆっくり横へ流れて、花の裏側に落ちる。もう一度同じように動かしても、新しい露は溜まっていなかった。朝の空気が少しずつ乾き始めている証拠らしい。

しばらくしゃがんで花を眺めていたら、シャツの背中がじんわり暑くなってきた。今日は晴れそうな空で、早朝の涼しさも長くは続かない。そのうち蟻が茎を昇ってきて、花びらの中に入ったので、僕は立ち上がって家の中へ戻ることにした。

早朝の自宅駐車場に停めた車と、後部座席に置かれたコンビニの袋とクーラーボックス

桃狩りとBBQの連休初日、早朝の出発

連休初日の早朝、まだ外は薄暗かった。時計は六時過ぎを指していて、カーテンの隙間から白っぽい光が差し込んでいる。高速道路の渋滞を考えて、早めに出ようと決めていたのに、起きてからも布団の上でだらだらしてしまった。

今日は桃狩りに行って、そのあと川原でBBQをする予定だ。前日の夜に肉を買って、クーラーボックスの中に氷と一緒に放り込んだ。野菜を切るのを忘れていて、今朝になってから包丁を出して、にんじんとピーマンを乱切りにした。形は不揃いだけど、焼けば分からないだろう。

桃狩りという言葉を聞くと、去年のことを思い出す。あのときは、もぎたての桃をその場でかじったら、果汁が手首まで伝ってきた。甘いだけじゃなくて、皮の近くが少し酸っぱくて、それがよかった。今年も同じ園に行く。丸ごと一つ、どこを選べばいいのか、僕はまだよく分かっていない。

台所で水を二本、ペットボトルのままリュックに突っ込んだ。汗拭きタオルも忘れずに。玄関で靴を履いていると、妻が「保冷剤、入れた?」と声をかけてきた。入れた、と返したけど、本当は冷凍庫に置いたままだったかもしれない。確認しに行くのは面倒で、そのまま車に乗った。

車のエンジンをかけて、ガソリンのメーターを見ると、半分くらいしか残っていない。次のサービスエリアで入ればいいかと思った。渋滞に巻き込まれたら、どうなるか分からないのに。

深夜のベランダの手すりに洗濯バサミが一つ挟まったままのミニチュア模型

深夜のベランダで、洗濯バサミを一つだけ外した

目が覚めたのは、午前三時を少し回った頃だった。エアコンが効きすぎていて、喉が乾いていた。台所で水を飲んで、リビングのカーテンを開けたら、ベランダの物干し竿にタオルが一枚だけ残っていた。

昨夜、取り込むのを忘れたらしい。触ってみると、すっかり乾いていた。昼間の暑さで、パリパリに固まっていた。朝まで置いておくのも変な話だ。夜中に洗濯物を取り込むのは、近所から見れば少し不気味に見えるかもしれない。でも、このまま朝まで干しておくほうが、よっぽど落ち着かない。

タオルを外そうとして、洗濯バサミを一つだけ外した。残りのバサミは、タオルが乾いて縮んだせいで、布をしっかり挟んだまま動かない。指先でグリップを押して、布を引っ張り出そうとしたけど、うまくいかなかった。プラスチックの劣化で、バサミの開きが浅くなっているような気がした。それでも、一つ外したおかげで、タオルが垂れ下がって、重みで少しずつ布が抜けていく。

バサミは全部で四つ。タオルの角に、それぞれ挟んであった。三つ目のバサミを外したとき、隣の部屋の窓が、少しだけ開いているのが見えた。カーテンが風で揺れていた。うちのベランダは道路に面していて、遠くの街灯がオレンジ色に光っていた。

タオルを抱えて部屋に戻った。洗濯物を畳む前に、外したバサミを、物干し竿に一つだけ戻した。理由は特にない。明日の朝、取り込むときに、あれがあったほうが、竿が安定する気がした。そのまま洗面所へ行って、タオルを洗濯機の中に入れた。

深夜の寝室でエアコンのリモコンを手にする男性

深夜のエアコン、風向きを変えたら止まらなかった

深夜二時過ぎ、目が覚めてしまった。寝汗が気持ち悪くて、エアコンのリモコンを手に取った。風向きが下向きのままだと、冷気が直接体に当たる。設定温度はそのままに、風向きボタンを押した。

リモコンの小さな表示が、下向きの矢印から横向きに変わった。それだけのはずだった。ところが、エアコン本体から出る風の音が、急に大きくなった。風量を変えたわけでもないのに、冷気が部屋の中をぐるぐる回り始めた。

何度もリモコンを押して、風向きを戻そうとした。表示は元に戻ったのに、風の音はおさまらない。首を傾げながら、本体のランプを見つめた。オレンジ色の小さなランプが、何かの合図のように点滅している。

そういえば、先週も似たことがあった。風向きを変えたとき、少し変な音がした。あのときはすぐに直ったから、気に留めなかった。今夜は、どうも様子が違うみたいだ。

迷った末、電源ボタンを押した。エアコンは静かになったが、部屋の空気がむっとする。窓を開けると、夜の風が入ってきた。外は思いのほか涼しい。エアコン止めたままでも、大丈夫かもしれない。

リモコンを置いて、もう一度横になった。天井のシミが暗闇に浮かんで見える。あのランプの点滅は、何だったんだろう。朝になったら、説明書を見てみよう。そんなことを考えているうちに、眠気が戻ってきた。

深夜のキッチンで冷蔵庫を開けたまま、中に卵のケースが見える様子

深夜の冷蔵庫、卵のケースを開けたままにした

冷蔵庫を開けたまま、卵のケースをじっと見ていた。深夜二時過ぎ、暑さで目が覚めて、麦茶でも飲もうとキッチンへ来たのに、なぜか卵を取り出してしまった。ケースには半分だけ卵が残っている。賞味期限のシールが斜めに貼ってあって、それが気になって剥がそうとしたけど、指先でつまんだら千切れて余計に汚くなった。

ケースを開けたのは、たぶん明日の朝に目玉焼きを作ろうと思ったからだ。でも、卵が何個あるか確認しただけで、結局また冷蔵庫に戻す。そのまま閉めればいいのに、右手でケースを持ったまま、左手で冷蔵庫の温度設定を触っていた。何度も触るところでもないのに、つい指が動いてしまう。

冷たい空気が足元に流れてくる。夏の夜でも、冷蔵庫を開けているとひんやりする。麦茶のボトルは棚の奥にあって、手前の牛乳パックの向こう側。取るために腕を伸ばしたら、卵のケースが少し傾いて、中の卵が二個、転がってぶつかった。カチッと小さな音がした。

その音でようやく我に返って、麦茶をコップに注いだ。冷蔵庫を閉めようとしたとき、卵のケースのフタが閉まりきっていないのに気づく。出し入れのとき、指で押し込む位置がちょっとずれていたみたいだ。フタを押そうとしたけど、閉める前にもう一度卵の数を数えたくなる。五個。それでいいはずなのに、もう一回数えても五個だ。

キッチンの時計を見ると、二時四十三分。まだ夜だ。麦茶を飲みながら、卵のことは明日考えようと思う。ケースのフタは、ちゃんと閉めたかどうか覚えていない。

1 … 25 26 27 28 29 … 173