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思考と技術の記録。besoft Blog

開発・設計・運用・プロダクトづくりのなかで得た知見を、読みやすくまとめて共有します。

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木製の台に置かれた陶器の醤油差し。朝の光が斜めから差し込み、注ぎ口の小さな醤油の滴が乾きかけている。

朝の台所、出しっぱなしの醤油差し

朝、台所へ水を飲みに行くと、カウンターの上に醤油差しが出しっぱなしになっていた。昨夜、誰かが最後に使ったのだろう。僕は手を伸ばして冷蔵庫のドアを開けながら、なんとなくその醤油差しを見ていた。

陶器製で、注ぎ口の先にほんの少し醤油が乾きかけている。誰が最後に使ったかは分からない。自分ではない気がするけれど、はっきりとした記憶もない。昨夜は冷奴を食べたから、もしかしたら僕かもしれない。でも妻が片付け忘れた可能性のほうが高い。そう思いながら、結局どちらでもいいことに気づく。

冷蔵庫から麦茶を取り出すと、ドアポケットに醤油差しが一つ収まっているのが見えた。そういえば、うちには醤油差しが二つある。一つはこの冷蔵庫用で、もう一つは常温で使うためのものだ。出しっぱなしの方は常温用だが、そもそもなぜ昨夜冷蔵庫から出さずに常温のを使ったのか。冷奴には冷たい醤油のほうがいいはずだ。僕はコップを手に取りながら、それを考えたが、すぐにどうでもよくなった。

麦茶を一口飲んで、ふとシンクの隅を見ると、小さな茶渋のついた湯呑みが置いてある。昨夜のうちに洗うのを忘れたらしい。僕は醤油差しをそのままに、湯呑みを手に取って洗い始めた。スポンジで軽くこすっていると、背後の醤油差しがまだそこにあるのを感じる。でも、とりあえずこの湯呑みを洗ってしまおうと思った。

朝の洗面所、鏡の隅に残る水滴

朝の洗面所、鏡の隅の水滴

朝の洗面所で顔を上げると、鏡の隅に水滴が残っていた。昨夜は使った覚えがない。窓は閉め切っているし、換気扇も回していない。だが確かに、鏡の右下、縁から二センチほどのところに、小さな滴が三つ並んでいる。

一つは米粒ほどの大きさで、真ん中がぷっくりと盛り上がっている。もう一つは細長く流れた跡。三つ目はただの薄い膜のように広がって、光の角度でかすかに虹色に光る。湿度の高い日は水滴がつきやすいと聞いたことがある。昨夜の天気は曇りだったから、そのせいかもしれない。

指先で一番大きな滴に触れると、鏡面を滑って少し動いた。触ったというより、押したという感覚に近い。表面張力で形を保ったまま、ゆっくりと下に下がっていく。それを追いかけるように、もう一度指を置いた。

昔、夏休みに祖母の家で、朝起きると同じように鏡に水滴がついていたことを思い出す。あの時はそれが面白くて、人差し指で何度も水滴を集めては、手のひらに移して遊んだ。祖母は「また鏡を汚して」と笑っていた。

今も同じように指でなぞってみるが、水滴は指の温度で消えてしまう。三つ目の膜は、触れた瞬間に跡形もなくなくなった。残ったのは二つの滴だけ。しばらくそのままでいることだろう。朝の光が窓から差し込んで、鏡面に細く伸びる。それで全部だ。

朝の網戸の枠に残る指の痕

朝の網戸、枠に残る指の痕

朝の光が網戸を通して差し込む。枠のアルミ部分に、指の痕が残っている。昨夜、閉めるときに触れたのだろうか。それとも、もっと前からあったものか。記憶は曖昧だ。

痕は三つ並んでいた。中央が濃く、両端は薄い。押し付けた力の差だろう。指先が少し滑ったように、端がぼやけている。空気の乾燥で、皮脂が酸化したのかもしれない。

額を枠に近づけて見る。角度を変えると、痕が光って見える場所があった。朝の湿度が高いせいか、表面がしっとりしている。指でなぞると、ざらつきが指先に伝わった。

自分の指を、痕の上に重ねてみる。サイズがぴたりと合う。僕のもののようだ。だが、確信はない。昨日の夜、急いで閉めた記憶が、ぼんやりと浮かぶ。

痕は、そのまま残っている。拭いてしまえば消えるのに、不思議と手を伸ばせなかった。枠の隅に、もう一つ小さな痕があった。前の住人のものかもしれない。

光が動いて、痕の見え方が変わった。朝のうちは、はっきりと見えていたのが、今は薄くなっている。時間とともに消えていくのだろう。それでも、目を離すと、また探してしまう。

夜明けの浴室、タオル掛けに垂れる水滴

夜明けの浴室、タオル掛けの水滴

夜明けの浴室は、まだ暗さが残っている。タオル掛けの金属の棒に、いくつかの水滴がぶら下がっていた。大きさはまちまちで、直径が三ミリほどのものもあれば、もっと小さくて、光に透けると筒状に細く伸びたものもある。

棒の表面は、水滴の裏側でわずかに曇っている。水滴の縁は、下に行くほど厚くなり、先端が丸く膨らんでいた。しばらく見ていると、一つの水滴が自重で伸びて、棒から離れて落ちた。水滴が落ちた後、棒には薄い水の膜が残り、それがゆっくりと集まって、新しい水滴ができていく。

窓の外が少しずつ明るくなって、水滴が白っぽく光り始める。水滴の中に、窓の枠の形が逆さまに映っている。その映像は、水滴の表面の曲がりで歪み、実際の枠とは違う形に見える。水滴の位置によって、歪み方も変わる。

一番左の水滴は、ほかの水滴より少し大きい。形は丸くなくて、下に向かって細長くなっている。棒との接点は狭く、今にも落ちそうだ。しかし、そうはならずに、そのままの形を保っている。水の張力で、表面が張り詰めている。

浴室の照明はまだついていない。外からの光だけが、水滴に当たっている。水滴の影が、タオル掛けの下の壁に、小さな点として映っていた。その影も、光の線が強くなると、濃くなっていく。

水滴を指で触れてみようかと思ったが、やめた。見ているままにしておくのがいい。水滴は、落ちるまで、少しずつ形を変えていく。それは、長い時間をかけて行われている。僕は、その過程を眺めていた。

水滴の一つが、ついに棒から離れた。落ちるまでの間、それは速い。落ちた後、棒にはまた何もない。でも、水滴ができた場所に、ほんのりと水の跡が残っている。それが、やがて乾く。それまで、この浴室の静けさが続く。

夜の室内で電池ぶたがわずかに浮いたリモコン

夜のリモコン、電池ぶたのわずかな浮き

夜の部屋で、使い終えたリモコンをテーブルの端に置いた。手を離してからも、黒い外側の一部分だけが薄く明るく見えた。電池ぶたの端が、本体からほんの少し浮いている。

リモコンの電池ぶたを見る

浮きは下側の短い辺に沿っていて、左端より中央のほうがわずかに広い。隙間の中は真っ暗ではなく、部屋の灯りを受けた灰色の線になっている。右側の角は本体に沿ったままで、左右で境目の幅が違っていた。

境目にできた影

横から見ると、ぶたの表面はほぼ平らなのに、その端だけが少し上向きになっている。表面には細い擦り傷が二本あり、光を動かすと一方だけが白く見えた。指で中央を軽く押すと沈むが、離すと元の高さに戻った。乾いた硬さだけが伝わる。

音のない確認

窓の外は暗く、室内には小さな機械音が続いている。リモコンを持ち上げると、電池ぶたは外れず、本体と一緒に動いた。裏返した内側には丸い電池の縁が見え、ぶたとの間に細い空間が残っていた。戻してからも、浮きは同じ位置にある。僕の視線はその薄い影にしばらく留まった。

夜の自宅で細い隙間が見える網戸

夜の網戸、細いずれの隙間

夜の20時18分、僕は窓を閉めようとして、網戸の縁で手を止めた。外はもう暗く、室内の明かりが細かな網を灰色に浮かべている。右側の枠が、窓枠の縦線からほんの少し離れていた。

網戸の隙間を近くで見る

隙間は上から下まで同じ幅ではない。上の角では黒い線が重なっているのに、中央へ進むにつれて細い明るさが現れ、下の十センチほどでまた狭くなる。網そのものは四角い目を保っていて、ずれているのは枠の境目だけに見えた。

光が縁を変えて見せる

斜めから見ると、隙間の内側に室内の白い光が一本通る。正面へ戻ると、その光は消え、枠の黒さだけが残る。外の植木鉢は影になり、網の向こうで葉の輪郭が一度だけ揺れた。風の強さまでは分からない。

枠に触れると、網は動かず、縁だけがわずかに硬く返った。直すほどの変化か判断できず、手を離す。冷蔵庫の低い音が続く間も、細い線は同じ場所にあり、僕の視線だけがその境目に残っていた。

夕方の窓枠に光る細い溝

夕方の窓枠、細く光る溝

帰宅して、部屋の窓を開けようとしたとき、指先が窓枠の隅で止まった。枠の木の部分に、細く光る溝が一本走っている。夕方の光が斜めに差し込んで、そこだけ銀色に光っていた。

窓を開ける手をそのままにして、体を少し窓の方へ向ける。外では雨が小降りになり、アスファルトを叩く音が遠くで聞こえる。部屋の中は静かで、換気扇の低い音だけが続いていた。

溝は縦にまっすぐ伸びていて、長さは指二本分くらい。幅は爪の先ほどで、深さはわからない。表面の塗装が剥がれて、木の地が見えている。剥がれた縁はギザギザしていて、ところどころ小さなささくれが浮いている。

溝の中には灰色の埃が溜まっていた。光が当たっている部分は埃が浮き上がって見える。それ以外の部分は暗く沈んでいて、どこまで続いているのか判然としない。

窓枠のすぐ下には曇りガラスがはまっていて、外の光をぼんやりと通している。ガラスの表面は結露で濡れていて、時々水滴が伝って落ちる。溝のある木枠は乾いていて、ガラスとの境目に細い影ができていた。

一度窓から離れて、部屋の明かりをつけようかと思ったが、もう一度視線を溝に戻す。角度を変えると、光の反射が消えて、ただの黒い線に見える。埃の色もほとんどわからなくなる。

もう少し近づいて、顔を少し傾けてみた。そうすると、溝の一番上の部分がわずかに広がっているのが見えた。そこだけ塗装が大きく剥がれ、木が露出している。ささくれがいくつか重なって、小さな影を作っている。

しばらくそのまま見ていたが、窓を開ける用事を思い出して、伸ばしかけた指を戻した。窓枠から手を離し、体を部屋の中へ向ける。それでも、視線だけはもうしばらく溝に残っていた。

夕方の公園の植え込みの根元に半分埋まった石。湿った表面と周囲の細い根、乾いた土の質感。

植え込みの根元、土に埋もれた石

公園の隅にある植え込みの根元、土の表面に半分だけ埋まった石がある。大きさは親指と人差し指で作る輪くらい。形は丸みを帯びているけれど、完全な球ではなく、片側が少しだけ平らになっている。色は全体的に灰色で、ところどころに白っぽい粒が混じっている。

表面はざらついていて、土がこびりついたままの部分もある。雨のせいか、表面の一部が湿っていて、その部分はやや濃い灰色に見える。乾いている上の部分は埃っぽく、細かい筋がいくつか走っている。縁に沿って、茶色い細い根が何本か絡みついている。根は石の表面を這うように伸び、所々で土の中へ消えている。

石と土の境目を見ると、土が石の下半分をしっかりと覆っている。隙間からは、細かい砂粒が流れ出して、石の周りに小さな山を作っている。石の下の方は、土の湿り気のせいで黒ずんでいて、表面とはっきり区別がつく。日が当たっている面と陰になっている面があり、陰の部分では細かい凹凸がはっきりと見える。

しゃがみ込んで顔を近づけると、石の上の方に小さな割れ目があるのが分かる。割れ目の中にも細かい土が入り込んでいて、線のように見える。割れ目の縁は少しだけ欠けていて、角が丸まっている。触れてはいないが、見ていると、表面のざらつきや冷たさが伝わってくるような気がした。

立ち上がるとき、右足のつま先で石の近くの土を少しだけ動かした。細かい砂が石の表面に落ちて、湿った部分を覆った。石は動かない。そのまま植え込みの葉が風で揺れるのを背中で感じながら、僕は歩き出した。

植え込みの葉先に残った小さな水滴、曇り空の下の午前中

植え込みの葉先、まだ落ちていない滴

植え込みの葉先に、小さな滴がまだ残っている。きのうの夕方から夜にかけて小雨が降った。そのまま落ちずに、ここにある。

葉は濃い緑で、先端がわずかにとがっている。滴はほぼ球形に近いが、下のほうがわずかに細長く引き伸ばされている。表面は滑らかで、曇り空の白っぽい光をぼんやりと映している。葉先に接している部分は、細い帯のように緑色が濃く見える。

顔を近づけると、滴の中に周囲の葉が逆さまに映っている。上下がつぶれて、奥行きのない平面の絵のようだ。角度を変えると、映り込む葉の形が少しずつ変わる。僕の顔の影がかかると、一瞬だけ滴の表面が暗くなり、そのあと周囲の明るさに戻る。

少しだけしゃがんで、下から見上げる。滴の底の縁が、葉の裏側のくぼみに引っかかるようにして止まっている。葉の表面には細かい筋が何本も走っていて、その一本がちょうど滴の下まで続いている。

風はほとんどない。それでも、通りかかった人の足音でほんのわずかに葉が震え、滴がわずかに揺れる。揺れが収まると、またもとの位置で静止する。下のほうの葉に触れるか触れないかの距離を保っている。

しばらく見ていると、滴がごくゆっくりと先端のほうへ移動するような気がした。実際には動いていないのかもしれない。

そのまま触れずに、視線を隣の葉へ移す。そちらにも同じくらいの大きさの滴がついている。どちらも落ちそうで、まだ落ちない。

朝の光に照らされた紫陽花の花びらに触れる指先

朝の紫陽花、花びらの縁を指でなぞる

そういえば、ベランダの隅の紫陽花がまだ咲いていたなと思い、サンダルを引っかけて外に出た。鉢の土は乾いていて、表面に細かいひびが入っている。葉は朝の光を透かして、葉脈が浮き上がって見えた。

花に近づくと、青だったはずの色がところどころ緑がかっている。外側の花びらから順に視線を移す。一枚だけ、縁が茶色く枯れかかっていた。その縁に、人差し指をそっと当てた。力を入れずに、ただ乗せる。指先に伝わるのは、わずかなざらつきと、まだ残っている柔らかさ。ゆっくりと縁をなぞると、枯れた部分は軽く持ち上がりそうで、そのまま指を止めた。

風が吹いて、花全体が小さく揺れる。奥のほうの花びらは、中心に近づくほど青が濃い。蕊はもうほとんど落ちていて、数本が細く突き出ているだけだった。花びらの影が、下の葉の上で崩れた形に落ちている。人差し指を離して、今度は中指で別の花びらに触れた。こっちはまだしっかりしていて、表面に朝露のなごりか、ほんの少し湿り気がある。指をずらすと、かすかに冷たい感触が残った。

どこかで読んだ、紫陽花の花言葉のことをふと思い出す。確か、移り気、だったか。でもそれ以上は考えずに、もう一度、枯れかけた縁に指を戻す。さっきより少しだけ強く押してみると、花びらが内側にしなった。手を離すと、ゆっくりと元に戻りかけて、また風で揺れる。

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