
座席の間隔が広い朝、向かいの人と目が合った
ドアが閉まってから、今日は座席の数を数えそうになった。午前六時四十八分の電車なのに、いつもなら立っている人の肩が並ぶ場所まで空いている。お盆休みの影響だろうと考えたが、考えるまでもなく車内の静けさが答えを出していた。
僕は端の席に座り、向かい側を見た。いつも同じ車両で見かける男性が、二つ先の席にいる。顔を知っているだけで、名前も勤め先も知らない。それでも、平日の朝に同じ駅から乗り、同じあたりで降りる人なので、今日は妙に欠席者の少ない集まりへ来たような気分になった。
車内が空いているせいで、その人の靴のつま先や、少し折れたシャツの襟まで見えた。普段なら誰かの背中に隠れている部分ばかり覚えてしまい、肝心の顔は後回しになった。僕が見すぎたのか、相手が先に見ていたのかは分からないが、そこで目が合った。
二人とも一度だけ視線を外し、すぐに戻した。声をかけるほどではないので、口元だけで苦笑いを交わした。たぶん同じように、いつもの混み方を期待して来たわけではない。僕は次の駅名が表示される窓の上ではなく、向かいの空いた席を見ながら、出勤用の表情に戻った。








