
朝の台所、出しっぱなしの醤油差し
朝、台所へ水を飲みに行くと、カウンターの上に醤油差しが出しっぱなしになっていた。昨夜、誰かが最後に使ったのだろう。僕は手を伸ばして冷蔵庫のドアを開けながら、なんとなくその醤油差しを見ていた。
陶器製で、注ぎ口の先にほんの少し醤油が乾きかけている。誰が最後に使ったかは分からない。自分ではない気がするけれど、はっきりとした記憶もない。昨夜は冷奴を食べたから、もしかしたら僕かもしれない。でも妻が片付け忘れた可能性のほうが高い。そう思いながら、結局どちらでもいいことに気づく。
冷蔵庫から麦茶を取り出すと、ドアポケットに醤油差しが一つ収まっているのが見えた。そういえば、うちには醤油差しが二つある。一つはこの冷蔵庫用で、もう一つは常温で使うためのものだ。出しっぱなしの方は常温用だが、そもそもなぜ昨夜冷蔵庫から出さずに常温のを使ったのか。冷奴には冷たい醤油のほうがいいはずだ。僕はコップを手に取りながら、それを考えたが、すぐにどうでもよくなった。
麦茶を一口飲んで、ふとシンクの隅を見ると、小さな茶渋のついた湯呑みが置いてある。昨夜のうちに洗うのを忘れたらしい。僕は醤油差しをそのままに、湯呑みを手に取って洗い始めた。スポンジで軽くこすっていると、背後の醤油差しがまだそこにあるのを感じる。でも、とりあえずこの湯呑みを洗ってしまおうと思った。








