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思考と技術の記録。besoft Blog

開発・設計・運用・プロダクトづくりのなかで得た知見を、読みやすくまとめて共有します。

記事一覧

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東京のかき氷の記事を眺める夏の午後のミニチュア風景

東京のかき氷、候補が多すぎて決められない

16時34分、東京のかき氷を紹介する記事を開いたまま、僕は画面を一度いちばん上まで戻した。写真がいくつも並んでいるのに、どれが最初に出てきた店なのか分からない。暑さで頭がぼんやりしているせいにしたが、たぶん普段から選ぶのが遅い。

気温は28.7度で、窓の外は晴れている。冷たいものを食べたい気持ちはあるのに、記事に出てくる「個性豊か」という言葉を読むと、急に比較を始めてしまう。氷の細かさ、果物の量、器の大きさ。まだ食べてもいないのに、僕の中で採点表だけができていく。

候補の写真を指で横へ送っているうち、画面の端に小さく残ったスクロールバーが気になった。何軒あるか数えようとして、三つ目でやめた。数えたところで決まらないのは分かっているのに、数を知れば選べる気がする。このあたりが自分でも面倒くさい。

行列や営業時間まで考え始めると、かき氷を食べたいという話が、出かける計画の採点になってしまう。僕は記事の中ほどへ戻り、写真の下にある短い説明を読み直した。味より先に、文字の長さがそろっていることを見ていた。

閉じる前に、いちばん赤いシロップの写真だけもう一度見た。味の想像ではなく、暑い日にこれを見た人が同じように立ち止まるのか、と考えていた。結局、店の名前を覚える代わりに「東京のかき氷」という見出しだけが残った。画面を消すと、指先が少し熱かった。

午後のロッカー前で隙間のある扉を係員に伝える場面

ロッカーの扉の隙間を、係員に伝えた

ロッカーの前を通り過ぎかけて、扉の隙間に目が止まった。閉まっているようで、端だけが少し浮いている。午後四時十五分の明るさでは、見落としたと言うほど細い隙間でもないのに、さっきまで僕も普通に歩いていた。手を伸ばして押すことはせず、顔を少し横にして、隙間が上下で同じ幅なのかを見た。

一度、扉の番号を確かめようとして、番号より隙間のほうを先に見てしまった。こういうとき、肝心なものを確認する前に、どうでもいい部分の形を覚えようとする癖がある。扉は動かず、内側から音もしなかった。勝手に開けるのも違う気がして、僕はその場から離れずに係員を探した。

係員に「扉の隙間が少し開いています」と伝えると、係員はロッカーの前まで来て、僕が見ていた端を確かめた。僕は念のため、「閉めてよいものか分からなかったので」と付け足した。言わなくてもよかった気はするが、触らなかった理由を伝えたくなった。

係員が扉の具合を見ている間、僕は足元ではなく、隣の扉との境目を見ていた。隙間の幅を比べているつもりだったが、比べるほどの差はなかった。係員の短い返事を聞いてから、僕は通路の端へ寄り、歩き出した。

パペットスンスンデザインのほぼ日手帳を机の上で開いたミニチュア風の場面

ほぼ日手帳2027のニュースを、予約前に閉じた

ほぼ日手帳2027に、パペットスンスンのデザインが初めて登場するというニュースを読んだ。全7種類で、9月1日から発売され、いっしょに使える文具も出るらしい。午後の机でその記事を開いたまま、僕は手帳を買うときの基準を思い出そうとしていた。

といっても、予定をきちんと管理したいわけではない。空白のページに、あとで読み返すほどではないことを書くのが好きなのだ。昼に飲んだものや、買おうとしてやめたものまで残っている。役に立つ記録というより、書いた本人だけが分かる小さな置き場所に近い。

パペットスンスンの顔が表紙にあると、たぶんページを開く回数は増える。かわいいものに背中を押されるのは、少し気恥ずかしいけれど、僕は文具店で無地のペンを選ぶときにも、持ったときの気分をかなり見ている。結局、実用性だけでは決めていない。

一方で、表紙を眺めて満足し、三日で書かなくなる可能性もある。僕の手帳には、最初の数ページだけ妙に丁寧な字が並び、その後に急に大きな空白が現れることがある。ニュースを読み終えてから、発売日より先に、今使っているページを最後まで埋められるかを確認した。

机の端に置いた手帳を開くと、今日の欄にはまだ何も書いていない。午後の暑さで少し重くなった頭のまま、まずニュースの題名だけを書こうとして、文字の幅が足りるかを気にしている。

夏の歩道の縁に置かれた青いボタンのミニチュア模型

青いボタンを、縁に置いた

青いボタンを拾おうとして、指を伸ばしたところで一度止めた。午後三時五分の歩道は夏の光を返していて、道の端に落ちたそれだけが、妙に濃い青に見えた。服から外れたのか、袋の飾りなのか、裏返せば分かる気もしたが、靴先で触るのはやめた。

しゃがむと、ボタンの脇に細い糸が一本だけ残っていた。糸は青ではなく、少し白っぽい灰色だった。僕はそこを見て、持ち主の服を想像するより先に、ボタンの穴が二つか四つかを確かめた。四つだった。こういう確認だけはするのに、落とし物を届けるほどの判断はすぐにできない。

歩道の縁には、昼の熱がまだこもっていた。手を近づけると、拾ったあと置く場所まで考えなければならない気がして、結局、指先ではなく爪の先でボタンを押した。転がった青いボタンは、縁の少しへこんだところで止まった。そこなら踏まれにくいと思ったが、根拠は特にない。

通り過ぎてから、僕は二歩だけ戻った。戻った理由を決めるためではなく、さっき置いた向きが変ではないか見るためだった。表面の小さな傷が光を外していて、最初に見たときより地味に見えた。明日の雨を思い出したものの、拾い直すことはせず、そのまま歩いた。

夏の午後の森の道にある蝉の抜け殻

森の蝉の抜け殻へ、三歩戻った

森の道を歩いていて、足元の少し先に蝉の抜け殻があるのを見つけた。午後二時二十五分で、夏の光は葉の間から細かく落ちている。通り過ぎてから、僕は三歩戻った。戻るほどのことではないのに、見なかったことにするのも妙だった。

抜け殻は細い枝の根元にしがみついていた。背中の割れ目がよく見え、脚の先だけが土に触れている。近づいて眺めると、殻なのに歩き出しそうに見える、という決まり文句が頭に浮かんだ。ただ、実際には歩き出しそうというより、置き場所を間違えた小さな部品に近かった。

僕はしゃがまず、立ったまま枝の向きを確かめた。風で揺れているのかと思ったが、動いていたのは上の葉だけだった。抜け殻の表面には薄い土がついていて、指で払えば取れそうに見える。けれど、触る理由はないので、靴先も手も出さなかった。

その横をもう一度通ると、今度は木の根が道へ出ている部分に目が移った。根を避けるために歩幅を変えたあと、蝉の抜け殻が見える位置まで首だけ戻した。さっきより小さく見えたのは、離れたからではなく、見つけた驚きが薄れたせいだと思う。

森を出る用事があったので、そこで立ち止まるのはやめた。三歩戻ったことだけが、歩いた距離よりはっきり残っている。抜け殻について考えながら進んだわけでもなく、次に聞こえた蝉の声の方向を見ただけだった。

歩道へ伸びた茎を避けて歩く街角の植木鉢

街角の植木鉢から伸びた茎を、避けて通った

街角の植木鉢から細い茎が歩道へ伸びていて、僕はその手前で足の向きを少し変えた。踏んでも折れないようには見えたけれど、靴の底で確かめる気にはならなかった。午後の強い光で鉢の縁は熱そうになり、茎だけが頼りなく、歩く人のほうへ出ていた。

大きく回り込むほどのことではないので、左足を先に出し、次の一歩を茎の外側へ置いた。歩幅をいつもより狭くしたせいで、通り過ぎる動作が少しぎこちなくなった。誰かに見られているわけでもないのに、僕は着地した靴の位置を一度だけ確認した。必要のない確認だと思いながら、茎の先を踏まなかったことだけは確かめておきたかった。

植木鉢は壁際に寄せられていて、葉の影が歩道へ小さく落ちていた。茎の先はどこにも固定されず、風がないのに横へ張っている。折れているのか、最初からその向きなのかは分からない。持ち主に知らせるほどではないし、見るためにしゃがんで触るのも違う気がした。僕は立ったまま目だけを動かして、その場を抜けた。

数歩進んだところで、今度は足元の白い線を踏まないように歩幅を調整した。線は舗装の継ぎ目だった。植木鉢の茎より、こちらのほうがずっと気にしなくていいものなのに、僕の足はそちらへ寄っていった。暑さのせいにしておけばいいと思いながら、街角の植木鉢を避けた一歩の幅だけは、妙に正確に思い出せた。

昼の湿地でぬかるみの縁にある葉を避ける風景

湿地の葉を一枚だけ避けた

昼の湿地を歩いていて、ぬかるみの縁に広がった葉の一枚へ靴先が近づいた。葉は水を含んだ土に半分だけ沈み、中央の筋だけが乾いて見えた。踏んでも破れるようなものではなさそうなのに、僕は足を横へずらした。避けるなら大きく回ればいいのに、その一枚の外側を靴の幅ぶんだけ通ることにした。

歩幅を小さくすると、泥の表面に残った細い水の筋まで目に入る。葉の先に靴底を置かないようにしていたら、今度は隣の草の根を踏みそうになり、膝を少し曲げた。こういうとき、僕は肝心の葉よりも、避けた後の足の置き場所を何度も確認する。慎重というより、決めたことを途中で変えるのが面倒なのだと思う。

湿地の葉は風に押されたのか、片側だけ泥から浮いていた。裏側に細かな土が付いていて、拾って見れば理由が分かるのかもしれない。ただ、手を伸ばすほどのことでもなく、葉の向きを直すのも違う気がした。近くでは水面が小さく揺れ、僕の影がその揺れに合わせて細く伸びていた。

通り過ぎてから、避けた距離が本当に必要だったか考えた。必要ではなかったはずだが、戻って踏む気にもならない。湿地の葉を一枚だけ避けた足は、次の柔らかい場所を探しながら、少し先の乾いた土へ進んだ。

夏の昼、歩道の縁石に沿って残る細い水の筋

歩道の縁石を一歩だけ回った

昼の歩道で、僕は歩道の縁石に沿って残った水の筋を見ながら、靴の向きを少し変えた。12時05分、雲の少ない空から日がまっすぐ落ちていて、乾いた舗装の中でそこだけ色が濃い。水たまりと呼ぶほど広くないので、避けるほどでもない。けれど踏んだら靴底の模様がどんなふうに残るかを考え、結局、縁石の外側を一歩だけ回った。

水は植え込みのほうから流れてきたらしく、歩道の縁石の継ぎ目で細く止まっていた。誰かが散水したのか、清掃のあとかは分からない。僕は通り過ぎてから二歩戻り、流れの先に小さな葉が一枚貼り付いているのを見た。拾うほどではないのに、靴先で押せば動くかどうかだけ確かめたくなり、触れて、葉が半回転したところでやめた。こういう確認には、たいてい用事がない。

その横には、縁石の角に詰まった黒い砂があった。水の通った跡を目で追っているうち、砂の中に白い粒が混じっているのが見え、僕はそれを小石だと思った。近づいて見ると、舗装の欠片だった。見分けがつかないまま、指で取ることもせず、歩道の端を三歩ほど眺めていた。

向かいのガラスに、白い照り返しが四角く映っていた。30度を超える暑さで、立ち止まった首筋だけが先に汗ばんだ。明日は雨になる予報らしいが、今ここで考えると、水の筋まで予報の一部に見えてくるのでやめた。横断歩道へ向かいかけ、信号の手前で、さっき回った一歩分だけ歩幅を戻してしまった。縁石の角に靴が当たり、乾いた音がした。

森の縁で地面から浮いた枝を避ける場面

森の縁で、浮いた枝の向きを確かめた

またごうとして、僕は足を止めた。森の縁に出たところで、細い枝が地面から少し浮いている。折れて落ちたというより、下に何かを挟んだまま持ち上がったような形で、片方の端だけが土に触れていた。午前十時二十六分、晴れた八月の空気は湿っていて、動かないでいるとシャツの背中が暑い。

靴先で枝を押すと、思ったより軽く跳ねた。乾いている音ではなく、内側にまだ水分があるような鈍い音がしたので、僕はまたいで進むのをやめた。枝の下に足を入れたら、靴底が滑るかもしれない。そんなに大げさな話ではないのに、こういう場面では転ぶ可能性より、転んだあとに自分が何を見落としたか考えるのが嫌になる。

しゃがみ込む代わりに、立ったまま向きを確かめた。枝の細い先は草の中へ入り、太い側には薄い樹皮が一枚だけめくれている。僕は跨ぐなら太い側を先に越す、と決めかけたが、決め方が妙に細かくなってきたので、いったん横へ一歩ずれた。

そこには、枝の影で押しつぶされた草が短く並んでいた。誰かが通った跡に見えなくもないが、僕が知りたいのは由来ではなく、今の足場だけだった。先に別の場所へ足を置き、枝を靴の先で端へ寄せると、土の表面が少しだけ崩れた。

それで通れる幅ができた。僕は枝を踏まずに進んだが、数歩先で振り返ることはしなかった。振り返ると、また向きや端のことを考え始めそうだったので、草の間に見える明るい地面だけを見て歩いた。

朝のハイビスカス、「勇ましさ」の札を見ていた

札の端を押さえながら、ハイビスカスの鉢を少しだけ回した。朝の七時五分、ベランダには湿った空気が残っていて、葉の先に昨夜の水が一粒ついている。花は思ったより横を向いていて、正面から見るには僕の立つ場所を変えなければならなかった。

鉢の脇に立てた札には、赤い花の名前と一緒に「勇ましさ」と書かれていた。花言葉を見たくて置いたのに、僕が先に見ていたのは札の角の丸まりだった。雨に濡れたわけでもないのに、紙の表面が少し波打っている。そこを爪で押し戻してから、花のほうへ目を移した。

赤い花びらは五枚とも開いていたが、中央の細い部分だけが妙に頼りなく見えた。勇ましいという言葉から、もっと立ち上がった形を想像していたらしい。昨日の朝も同じ鉢を見たはずなのに、花の付け根に小さな傷があることには気づかなかった。僕は傷を見つけると、必要以上に何度も確認してしまう。

水を足そうとしてじょうろを持ったところで、鉢土の色がまだ濃いことに気づいた。底の受け皿をのぞき、残った水を捨てるか迷っているうちに、隣の葉が手の甲に触れた。少しくすぐったくて腕を引き、札が傾いていないかまた見た。文字の最後の一画だけが、朝の光で薄く見えていた。

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