
夜の縁側でアゲハチョウ
夜の縁側に、アゲハチョウが一匹止まっていた。網戸を開けようとして手を止める。昼間の暑さがまだ残っていて、縁側の木もほんのり温かい。
その蝶は、羽を閉じたまま微かに動くだけだ。もう飛べないのかもしれない。近づいても逃げない。指を伸ばして、そっと触れてみようかと思ったが、やめた。
ふと思い出すのは、昼間のニュースだ。すねのツボを押すと精神が安定するという話を見た。あのツボの位置、正確には覚えていないけれど、何となく押してみたくなった。夜の縁側で、一人で。
アゲハチョウはまだ動かない。ひょっとしたら、夜の暗さに驚いているのかもしれない。昼間はあんなに暑かったのに、今は風が冷たく感じる。蝶の羽が風で少し揺れる。
僕は縁側に座って、蝶を眺めながら、あのツボの話を思い出していた。あの人は、ツボを押すと動悸が改善すると言っていた。動悸なんて、普段感じないけれど。でも、この静かな夜に、蝶と二人きりだと、心臓の音が聞こえてくる気がする。
蝶は、突然、羽を広げた。そして、ふらふらと飛び立った。縁側の端まで来て、また止まる。僕は、もう一度、そっと息を止めて見守った。








