
夜の線香花火、火のつかなかった一輪
夜の八時前、急に線香花火をやりたくなって、コンビニまで買いに行った。袋のままベランダに出る。風があまりなくて、蚊はいるかもしれない。ちょうど、昨日の夕方に汗をかいたときに脱いだシャツに、虫よけスプレーをかけてから外へ出た。
一本目を火で燃やした。先がふわっと赤くなって、小さな火の玉になる。それが揺れて、ぽとりと落ちた。
三本目のときに、火がつかないのがあった。最初は焦げているのに、火が先まで伝わらない。もう一度つけようとしたけど、マッチの火を近づけるだけじゃだめで、結局その紙の部分で火が消えた。僕はそれを一度足元に置いて、なんでつかなかったのか考えた。湿気かな、と思ったけど、残りはすんなりついているから、多分だけど、製造のときに紙が重なったんだろう。
その火のつかなかった一輪を、しばらく手に持って眺めていた。先だけ、焦げ茶色に変色して、残りの部分は白い。僕はどこで折ろうか迷った。線香花火って、火のついた後に折ると持ちやすくなることを、確か去年の八月に知った。折る場所が悪いと、火が紙に伝わって手元に進んでくる。
結局、火はついたけれどしばらくすると火の玉が落ちた。短い間だった。
足元を見たら、前にやった花火の灰がまだ残っていた。いつのだか分からない。風に吹かれて、少しずつ減っていた。ベランダに置いてある植木鉢の横で、七輪の火が消えた後みたいに、細かい灰が固まっていた。それを掃き集める前に、次の一輪をつけた。








