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思考と技術の記録。besoft Blog

開発・設計・運用・プロダクトづくりのなかで得た知見を、読みやすくまとめて共有します。

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夜のベランダで線香花火を持つ男性と、火のつかない一輪

夜の線香花火、火のつかなかった一輪

夜の八時前、急に線香花火をやりたくなって、コンビニまで買いに行った。袋のままベランダに出る。風があまりなくて、蚊はいるかもしれない。ちょうど、昨日の夕方に汗をかいたときに脱いだシャツに、虫よけスプレーをかけてから外へ出た。

一本目を火で燃やした。先がふわっと赤くなって、小さな火の玉になる。それが揺れて、ぽとりと落ちた。

三本目のときに、火がつかないのがあった。最初は焦げているのに、火が先まで伝わらない。もう一度つけようとしたけど、マッチの火を近づけるだけじゃだめで、結局その紙の部分で火が消えた。僕はそれを一度足元に置いて、なんでつかなかったのか考えた。湿気かな、と思ったけど、残りはすんなりついているから、多分だけど、製造のときに紙が重なったんだろう。

その火のつかなかった一輪を、しばらく手に持って眺めていた。先だけ、焦げ茶色に変色して、残りの部分は白い。僕はどこで折ろうか迷った。線香花火って、火のついた後に折ると持ちやすくなることを、確か去年の八月に知った。折る場所が悪いと、火が紙に伝わって手元に進んでくる。

結局、火はついたけれどしばらくすると火の玉が落ちた。短い間だった。

足元を見たら、前にやった花火の灰がまだ残っていた。いつのだか分からない。風に吹かれて、少しずつ減っていた。ベランダに置いてある植木鉢の横で、七輪の火が消えた後みたいに、細かい灰が固まっていた。それを掃き集める前に、次の一輪をつけた。

夜のバルコニーで朝顔の種を手に取る様子

夜のバルコニー、咲き終わった朝顔の種を取る

風呂上がりにバルコニーへ出てみると、朝顔の花がすっかり萎れていた。昼間のうちに咲いたのだろう、青い花びらがしぼんで、くるりと丸まっている。紐に絡まったつるの先に、いくつかは落ちずに残っていた。明日の朝には新しい花が咲くはずで、それまでには花がらを摘んでおきたかった。

摘むついでに、咲き終わった後の丸い実のようなものに指が触れた。触るとぱりっと硬い。もしかして種になるのかと、一つもいで掌に載せてみた。緑色だったのが茶色く変わっている。親指で割ると、中から黒い種が三つ、きれいに並んで出てきた。朝顔の種がこんな形で入っているのを、初めてちゃんと見た気がする。小学校の理科で植えた時は、買った種を埋めただけだった。

茶色い殻の内側は、薄い膜みたいなものが張っていて、種を外すと少し湿っていた。他の実も割ってみたくなり、枯れた花を探して手当たり次第に触る。まだ青いのは固くて開かない。開くのは茶色く乾いたものだけだった。結局、取れたのは十二個。数えながら、去年の夏に種をまいた時のことを思い出した。近所の人がこぼしてくれた小さな袋。

ベランダの手すりに置いた種を、アパートの下の明かりで見ていると、暗くなってきて形がぼやけ始めた。虫が一匹、蛍光灯の周りを飛んでいる。種は小さな封筒に入れて、引き出しの奥にしまおうと思ったが、どこに置いたか忘れてしまいそうで、結局、植木鉢の横に置いたままにした。明日また、見つけられるはずだ。

夕方の網戸の前で虫よけスプレーを持つ手

夕方の網戸、開いたままの虫よけスプレー

夕方、網戸を開けたままにしていた。閉め忘れではなく、わざとだ。ちょっと風を通したくて。

それで、テーブルの上に置いてあった虫よけスプレーを手に取った。8月に入ってから、夕方になると網戸の外側に虫が集まる。特にカメムシ。今日はまだ見かけないけど、スプレーを網戸の桟にかけておけば、少しは寄ってこない気がする。

手に取ったのは、確か去年買ったものだ。缶を振ってみると、中身が少なそうな軽さ。シュッと試しに吹いたら、案の定、霧がすぐに切れた。もうだめかもしれない。でも、捨てる前に取説を読むと、「残量確認のため、缶を逆さまにして吹く」と書いてあった。逆さまにして吹いてみると、かすかにスプレーが出た。まだ少しだけ残っているらしい。

そのまま逆さまにした缶をしばらく見ていた。虫よけスプレーの缶は、部屋の湿度計みたいに置き場所を選ぶ。なぜか自分は、これを棚の隅の奥に置く癖がある。手に取るたび、背後のホコリに気づく。

スプレーを網戸の下のほうに一吹きして、缶を戻した。まだ使えそうだ。だが、いちいち逆さまにするのは面倒だ。新しいのを買うべきか。そう思いながら、台所にあった「洗剤」のボトルを手に取ってしまった。同じ形式のポンプなのに、中身は虫よけではない。はっきり言って、時間の無駄だった。まあ、缶の残量を確かめただけで、今日はもういいか。

午後の台所で買い物袋を広げる男性

午後の買い物袋、折り目の癖

午後、成城石井で買い物をして、ついレジ横の買い物袋を買ってしまった。825円。普段はエコバッグを持ち歩く方だけど、今日は忘れて、しかも保冷剤入りのものをいくつか買ったので、どうせならと思って。

この袋、底板が入っていて、置いても倒れない。それは確かに便利だ。家に帰ってから、買ったものを出して、試しに空の袋を床に置いてみたら、ちゃんと立った。気持ちがいい。

でも、たたんで収納しようとしたとき、折り目の癖がついているのに気づいた。新品なのに、最初から決まった場所で折れている。たぶん、工場でたたまれたときの癖だ。僕はそれを伸ばそうとして、逆に余計な折り目をつけてしまった。

袋の内側に、小さなポケットがあった。何に使うんだろう。レシートを入れるには浅いし、保冷剤を入れるには場所が微妙だ。しばらく眺めて、結局何も入れなかった。

そういえば、この袋を買う前に、隣の棚にあった同じ形の黒い袋と迷った。黒のほうが汚れが目立たないだろうけど、夏だし、この生成りの色のほうが涼しげに見える。それでこの色にした。実際、今日の暑さは35度を超えていて、外に出た瞬間、袋の色なんてどうでもよくなった。

買った袋は、今、台所の椅子の背に掛けてある。たたむのをやめて、とりあえず干している。乾かしているわけでもないけど、まだ折り目のことを考えている。

夏の午後、自販機の前で缶コーヒーを手に立つ人の手元

午後の自販機、お釣りの音と汗の跡

午後二時を過ぎたばかりの、日差しがまだ真上に近い時間。自販機で缶コーヒーを買った。百二十円のボタンを押して、出てきたお釣りを左手で受ける。小銭が金属の受け皿に落ちる音は、夏になぜかいつもより澄んで聞こえる気がする。まあ、気のせいかもしれないけど。

そのまま缶を右手に持ち替えたとき、左手のひらに汗がにじんでいるのに気づいた。自販機のボタンに触れていたせいもあるけど、暑さのせいのほうが大きいだろう。受け取った百八十円をズボンのポケットに押し込んで、プルタブを開ける。冷たい缶の表面が汗で濡れて、指にまとわりつく。

ふと、自販機の横の植え込みに目が行った。よく見ると、タバコの吸い殻が一つ落ちている。ここは喫煙所でも何でもないのに、誰かがここで吸ったらしい。僕は吸わないから、その気持ちは分からないけど、午後二時の自販機の前に吸い殻が一つ落ちているのは、少しだけ変だと思った。

缶コーヒーを一口飲んで、ふと数日前のことを思い出した。同じ自販機で、お釣りの五十円玉を落として、溝に転がしてしまったことがある。あのときはしゃがんで必死に探したけど、結局見つからなかった。今日はちゃんと受け取れてよかった、と思う。ただ、その五十円玉のことを思い出して、缶コーヒーの味が少しだけ思い出に混ざるような気がした。

まだ半分ほど残っている缶を片手に、僕はゆっくりと歩き出した。

昼前の光が差し込む網戸と、開いたままの窓辺の様子

昼前の網戸、開けっ放しのまま

昼前になって、急に暑くなってきた。窓を開けたら、網戸がそのままになっていた。

昨夜、涼しい風が入るようにと開けたまま寝たのだ。朝のうちは気持ちよかったけれど、今はもう外の空気が熱い。それでも、なぜか閉めるのが惜しくて、しばらく網戸の前で立っていた。

網戸の隅に、小さな蜘蛛の巣が張っている。昨日はなかったはずだ。いつの間に作ったのだろう。蜘蛛の姿は見えないけれど、張りたての巣が朝日できらきらしていた。

そのまま昼食の支度にとりかかった。冷たいそうめんを茹でようと、お湯を沸かす。湯気が立ちのぼるあいだ、網戸から差し込む光が、畳に長い影をつくっている。

そういえば、隣の家の猫が、よく網戸の向こうに来て座っていた。今日はまだ来ていない。暑い日は、どこかで涼んでいるのかもしれない。

そうめんを茹で終えたとき、玄関のチャイムが鳴った。郵便のおじさんが、暑そうに帽子のつばをぬぐいながら、小さな封筒を差し出した。受け取って、そのまま台所に戻る。

封筒を見ると、宛名が僕の字で書いてある。自分で自分に出す手紙を、先週出したのを思い出した。中には、旅先で拾った貝殻が入っている。どこに置こうか考えて、結局、本棚の隙間に挟んだ。

そうめんを食べながら、網戸のこと考えていた。閉めようと思いつつ、まだ開いたまま。暑いけど、風が抜けると、それなりに涼しい。蜘蛛も網戸で暮らしているようだし、今日はこのままでいいか、と思う。

食べ終えて、片づけをする。あの蜘蛛は、明日もいるだろうか。いや、たぶん、いつの間にかいなくなっている。

白いマグカップの持ち手の内側に茶色い線が残っている様子

朝のマグカップ、持ち手の内側に溜まった茶色い線

今朝、コーヒーを淹れようとマグカップを手に取ったら、持ち手の内側に茶色い線が残っていた。昨日の夕方に洗ったはずなのに、なぜかそこだけ落ちていない。

指でこすってみたが、取れない。かといってスポンジを持ち手の中に突っ込むのも面倒で、しばらくそのまま眺めていた。線は細く、持ち手のカーブに沿って半月みたいに弧を描いている。茶色いと言っても、コーヒーの色というより、もう少し薄い。

そういえば、このマグカップは三年前に買ったものだ。当時は白が真っ白で、持ち手の内側なんて気にしたこともなかった。いつからこの線はでき始めたんだろう。毎日使って、毎日洗って、それでも少しずつ染みが積もっていくのは、何だか自分の抜け毛を数えているみたいな気分になる。

台所の引き出しから古い歯ブラシを出してきて、こすってみることにした。でも、歯ブラシの先端が曲がっていて、持ち手の一番奥まで届かない。届かない場所の汚れに限って、なぜか気になる。結局、綿棒に変えてみたら、今度は先が細すぎて、線に沿ってなぞると途中で折れてしまった。

洗面所に予備の綿棒があったはずだ。探しに行こうと思ったけれど、その前に冷めたコーヒーのことを思い出して、結局そのまま飲み始めた。線はまだそこにある。明日もきっとある。それでいいような気もする。

朝の光が台所の隅まで届き始めて、マグカップを置いたままにしていると、その線だけが光って見えた。よく見ると、線の端が少しだけ濃くなっていた。ここから始まったんだな、と分かる気がした。

朝の花屋に並ぶヒマワリの束と、それを眺める男性

朝の花屋、ヒマワリの花言葉を数える

今朝、ゴミ出しのついでにいつもと違う道を通ったら、花屋がもう開いていた。まだ七時過ぎだというのに、シャッターを半分上げて、店先にバケツを並べている。その中にヒマワリがあった。太い茎に大きな花が一つ、どれも同じ方向を向いて、道側に傾いている。

ヒマワリの花言葉って何だったっけ。確か「あなただけを見つめる」とか、そんな感じだったと思う。でも、それだけだと自信がなくて、店の前で立ち止まって考え込んでしまった。ああ、「憧れ」とか「情熱」もあったような気がする。花言葉はたくさんあって、どれが正しいのかわからない。

そういえば、昔、母が花屋で働いていたことがあって、僕が小学生の頃、よく店の裏で宿題をやっていた。母はヒマワリの花言葉を「太陽に向かって咲くから、太陽みたいに明るい人になってほしい」と教えてくれた。あれが花言葉だったのか、母の勝手な解釈だったのかは、今となってはわからない。

結局、僕はヒマワリを買わなかった。値札を見たら一本三百円で、ゴミ出しに来ただけの身には、ちょっと買う気になれなかった。その代わり、隣にあった名前の知らない小さな白い花の値札を見て、「この花は何だろ」と思いながら、そのまま家に帰った。

玄関を入ってから気づいたけど、ゴミ袋をまだ手に持ったままだ。可燃ごみの日は昨日だったはずだ。

夜の縁側で網戸に手を触れる男性

夜の網戸、触れたら緩んでいた

今夜は蒸し暑くて、網戸を閉めたまま扇風機を回していた。ふと桟のあたりに手をやると、枠が少し動く気がした。押すと沈むというより、横にぐらっと遊びがある感じだ。

ランプをつけてよく見ると、右下の角のビスが半回転ほど緩んでいる。網戸に使われるビスにしては細い方で、ドライバーで締めれば直りそうだった。しかしそのとき手元にドライバーがなく、台所の引き出しまで取りに行くのが面倒で、そのまま指でなぞって終わりにした。

代わりに、緩んだ枠を押さえながら窓を開け閉めしてみた。実際には閉まっている網戸を開ける必要はないのに、一度試してみたくなった。やっぱり少し音がする。隣の部屋からは、弟がスマホを見ているらしい小さな笑い声が聞こえていた。

僕は小学校の頃、網戸の張り替えを父がやっているのを見たことがある。古い網を外すときに破れて、新しい網を枠に留めるゴムを専用のローラーで押し込んでいた。そのゴムが余って途切れるところがいつも綺麗にできず、父が何度もやり直していた。今夜の緩みは、そういう張り替えの際にできた可能性もある。

結局、ドライバーは取りに行かなかった。直すのは明日でもいい。そのまま洗面所へ行って歯を磨き、戻ると網戸の枠がまた目に入ったが、もう気にならなかった。

夜の球場で、白いユニフォームを着た人がスタンドに座っている

夜の観戦帰り、負けた球場で思ったこと

今日はナイターの野球観戦。贔屓のチームは負けてしまった。でも、対戦相手を家の者が応援しているから、良しとしよう。

九回裏、最後のバッターが三振した瞬間、歓声が起こった。アウェーのそれだ。家の者は立ち上がって拍手していた。僕は拍手の拍子を間違えた。

帰り道、満員であろう駅へは行かず、バスにしようかと考えた。球場の出口で、負けた側のファンが静かに歩いていく。コンビニの灯りが点在する道を、ゆっくり歩く。

途中、飲みかけのスポーツドリンクを買った。温かった。ベンチに座って飲んでいたら、警備員に声をかけられた。「閉門ですよ」と。空のボトルを捨てて、また歩き出す。

負けた試合の後は、いつもより街が静かに見える。それは気のせいではないのかもしれない。家に着く頃には、家の者と今日の試合の話をするだろう。あの三振のことを。

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