
昼前の郵便受け、押し込まれたチラシの折り目
郵便受けに手を入れたら、固く折りたたまれたチラシが奥まで詰まっていた。指先に折り目が当たって、ぱりっとした感触が伝わる。10時半を過ぎたばかりの配達にしては、少し厚みがある。
取り出して広げると、近所のスーパーの特売だった。でも、見覚えのない店舗名が載っている。うちから歩いて15分はかかる場所で、行ったこともない。どうしてこのチラシが入っていたんだろう。配達の人が間違えたのか、それとも何かの折り込みの余りか。
折り目は三つ折りをさらに半分にした形で、きっちり四角くなっていた。その折り方だけが妙に丁寧で、誰かが心を込めて押し込んだように見えた。クーポン券の切り取り線を、ぼんやり指でなぞる。結局、使うことはないだろう。
そのまま捨てようとして、一度手を止めた。裏面に小さな手書きのメモがあったからだ。「8/5 まで」とだけ書いてあって、何の締め切りか分からない。もしかしたら、前の住人宛てのものかもしれない。この部屋に越してきて、もうすぐ三年になるけれど、前の人の郵便物は今でもたまに届く。
メモの文字は急いで書いたのか、最後の「で」の字がとがっていた。誰かに何かを知らせたかったんだろうか。それとも、自分宛ての覚え書きだったのか。隣の部屋の住人に聞いてみようかとも思ったが、昼前にインターホンを鳴らすのは気が引ける。
結局、チラシはテーブルの隅に置いたままにしている。夕方になっても、まだそこにある気がする。








