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思考と技術の記録。besoft Blog

開発・設計・運用・プロダクトづくりのなかで得た知見を、読みやすくまとめて共有します。

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片方の結び目が緩んだレジ袋を持つ手元のイラスト

スーパーの袋、持ち手の結び目がひとつだけ緩かった

スーパーを出てすぐ、右手にぶら下げた袋の持ち手がいつもより長いことに気づいた。見ると、片方の結び目だけがゆるゆるで、今にもほどけそうになっている。なぜか反対側は固く結ばれたままだ。

珍しいな、と思う。レジの人は持ち手を結ぶとき、たいてい両方同じ力加減でぎゅっとするものだ。片方だけ手を抜いたのだろうか。それとも、何かの意思表示なのか。いや、そんなはずはない。ただ忙しかっただけだろう。僕はそう結論づけようとしたが、どうにもそのアンバランスさが気になってしまう。袋の中身は牛乳パックと豆腐、それに小松菜だけ。重さが偏っているわけでもないのに、緩んだ側だけが妙に存在を主張している。

結び直そうかと指をかけるが、なんとなくやめた。歩きながら、このままどこまで持つか試してみたくなったのだ。家まであと十分。信号待ちのたびにそっと持ち手を揺らすと、結び目はほんの少しずつほどけていく。完全にほどけたら、袋は傾いてしまうだろうか。でも、なぜかほどけない気もする。そんなことを考えている自分が、少し変だと思う。周りの人は、誰も僕の袋の結び目なんて見ていない。

途中、公園の前で小さな子供がシャボン玉を追いかけているのを横目に通り過ぎる。ふと、昔、弟とシャボン玉の液をこぼして叱られたことを思い出す。結び目のことは頭の隅に追いやられ、次に気づいたときには家の前に立っていた。袋の結び目は、まだ辛うじて形を保っている。僕は玄関の鍵を探しながら、あと数歩のところでそれがほどけるかどうか、やっぱり少し期待していた。

朝のキッチンで、微妙に曲がったスプーンを見つめる男性の手元。

朝のキッチン、スプーンの曲がり具合

朝食を済ませて、カレーライスの皿とスプーンを流しに運ぶ。いつものルーティンだけど、ふと手に取ったスプーンを見て、あれ、ちょっと曲がってるなと思った。柄の真ん中あたりが、ほんの少しだけ反っている。前に気づいていたかもしれないけど、今朝は妙に目に留まった。

このスプーン、たしか一人暮らしを始めた時に買ったセットの一つだ。もう五年くらい使っている。曲がった原因を考えてみる。多分、アイスクリームを無理にすくった時だろうか。冷凍庫から出したばかりの硬いやつを、力任せに押し込んだ記憶がうっすらある。でも、あの時は手ごたえがあったけど、ここまで歪むかな。

洗いながら、スプーンの曲がりを親指でなぞってみる。微妙なカーブが、指の腹に感じられる。洗剤の泡で滑るけど、確かに凹んでいる。そういえば、引き出しの中で他のスプーンとぶつかって、じわじわ曲がった可能性もある。フォークやナイフが上に乗って、長い時間をかけて。でも、そんな力で曲がるものか。

水で流しながら、ふと学生時代の食堂を思い出した。あそこにあったスプーンは、みんな微妙に曲がっていた。毎日何人もの人が使うから、自然とそうなるんだろう。でも、僕のは一人用だ。誰かが乱暴に使ったわけでもない。

結局、理由はわからないまま、水気を切ってカゴに立てかけた。明日もまた、何も考えずにこのスプーンを使うんだろうな。

朝の庭で黄色いひまわりが咲く様子

朝のひまわり、花言葉を調べた

朝の七時五十分、洗面所で顔を洗ってから、ふと思い立ってベランダに出た。ひまわりが一鉢ある。種から育てたものだが、今年はどうも背が低い。説明文には百八十センチとあったのに、まだ六十センチくらいだ。鉢が小さいせいかもしれない。

花は一つだけ咲いている。直径十五センチほどの、黄色い花。朝の光を浴びて、しっかりと東を向いていた。調べたことがある。ひまわりは若いうちは太陽を追うが、花が咲くと東で止まるのだそうだ。うちの鉢は壁際にあって、西側に塀がある。それでも東を向いているのは、ちゃんと理由があるのだろう。

それで花言葉を思い出した。確か「あなたを見つめる」だったはず。ついスマホで検索してしまった。花言葉は「あなたを見つめる」「崇拝」などと出てきた。中には「にせいつわり」というのもあった。そんな意味があったかと、少し驚いた。

ずっと考えていた。ひまわりが東を向くのは、単に太陽が昇る方角だ。だけど花言葉の「あなたを見つめる」は、ひまわりがアポロンに見とれた話から来ているらしい。花自体は何も考えていない。なのに人間が勝手に視線を想像する。

そのとき、ひまわりの花にハチが止まった。小さなハチだ。花びらの上を歩いて、中心の茶色い部分に入っていった。あっという間の出来事だった。ハチは何も気にしていない様子で、花粉を集めていた。ひまわりも、ハチも、こっちを向かない。

ベランダを離れるとき、もう一度だけ花を見た。朝の光はまだ東から来ている。花は変わらず、その方向を向いたままだった。

夜の台所で缶ビールを開ける男性

夜中にネットで見た「ふらつくビアグラス」の話

午前0時を回ったところで、まだ眠れずにスマホをいじっていたら、面白いニュースを見つけた。

よなよなエールの会社が「ふらつくビアグラス」っていう商品を出すらしい。ビールだけを飲むと、グラス自体がふらふらと傾いて倒れる仕掛けだという。水を飲みながらビールを飲むと倒れないらしい。

なんのためにそんな物を作ったんだろう。酔っ払いをからかうためか、それとも水を飲めという注意喚起なのか。説明を読んでも、半分冗談みたいな商品で、真面目なのかふざけているのかよく分からなかった。

僕はビールをほとんど飲まない。発泡酒ならまだしも、本物のビールは苦くて、どうにも喉を通らない。でも、そのニュースを見た瞬間、冷蔵庫に缶ビールがあったのを思い出した。確か、来客用に買ったものが一本残っている。

どうしてもそのグラスが試してみたくて、でも売ってないし、そもそもビールを飲まない僕が買っても仕方ない。それで、冷蔵庫から缶ビールを取り出して、栓を開けた。

一口飲んでみると、やっぱり苦い。でも、その苦さの中で、もしこのグラスがあったら、今の僕は倒れるだろうなと思った。水を飲まずに、いきなりビールを一口。多分、最初の一口で傾き始める。

僕はそのまま缶ビールを台所に置いて、スマホの画面をまた見た。商品の発売日は今日からだという。通販サイトを見たら、既に売り切れているみたいだった。

缶ビールはまだ半分ほど残っている。

夜の玄関の傘立てに立つビニール傘

夜の玄関、傘立てに増えたビニール傘

今日は夕方から曇っていた。夜になって、コンビニに行くついでに傘を持って出たら、雨は降っていなかった。結局、傘をささずに帰ってきた。

玄関に入って傘立てに傘を戻すとき、見慣れないビニール傘が一本、斜めに立っているのに気がついた。透明の傘で、取っ手が白い。僕のは紺色の折りたたみだから、明らかに違う。

昨日は小雨が降った。濡れた傘を乾かそうと、皆ここに出しっぱなしにすることがある。でも、この傘は畳んだまま、水滴もついていない。誰かが置き忘れたにしては、きれいすぎる。

妻に「この傘、知ってる?」と聞いたら、「ああ、それ。昼にお客さんが来たとき、忘れていったみたい。連絡しようと思ってたのに、忘れてた」と言った。そこで、電話するのを僕が引き受けた。

相手の名前を聞いて、スマホを探した。リビングのテーブルの上にあるはずだった。テーブルの上には、昨日のレシートと、切手を貼っていない封筒が二通あった。封筒を見て、明日郵便局に行くのを思い出した。スマホは、ティッシュの箱の横にあった。

電話をかけたら、すぐに出た。忘れ物のことを伝えると、先方も気づいていなかったらしい。「明日取りに行きます」と言って、電話は終わった。

その後、風呂に入って、今、ここに書いている。傘はまだ傘立てに立っている。取っ手の白が、暗がりで少し浮いて見える。明日、誰かが取りに来るまでは、そのままでいいかと思っている。それだけの話だ。

ベランダの鉢植えの土を手に取る男の羊毛フェルト風イラスト

夜のベランダで、鉢植えの土の匂いを嗅いだ

ベランダのひまわり、そろそろ終わりなのか。花びらが半分落ちて、種の部分が半分だけ見えてきた。

今夜は曇りで蒸し暑い。鉢を動かそうとして、深く指を入れたら、土の匂いが急に立った。久しぶりに嗅ぐ、生っぽい匂い。腐っているのとは違うけど、湿り気を含んだ土の中の匂い。

僕はそのまま鉢の縁にしゃがんで、指をぬいて染みついた土を鼻に近づけた。もう一度嗅ぐと、今度は土と一緒に肥料の匂いが混ざってくる。化成肥料特有の、なんとなく薬っぽい香り。

昔、畑当番をしていたのを思い出した。朝一番に畑へ行って、スコップで土を返す。朝の土はいつも冷たくて、匂いが強かった。特に夏の終わり、水やりしたあとの土は、今夜これと同じ匂いがした。

ひまわりの鉢に戻って、土を軽く空気に触れさせるみたいに、表面を指先でなぞった。すると下の方から根が張っているのがわかる。土の中でひっそりと動いている感じがして、ちょっとくすぐったい。

そこで急に、手のひらの土をどうするかが気になった。パンツのポケットには入れたくないし、ベランダに払うのもためらう。結局部屋に入って、水道で流した。石鹸は使わなかった。土の匂いが手に残るのをなんとなく惜しんで、水だけにして、タオルで拭いた。

戻ってから、花が終わったあとの処理を考えた。たぶん種を取って、茎は切ってしまう。でも、今日やる気にはならない。鉢の位置を少しだけずらして、水をやって、それでおしまい。ベランダはやっぱりジメッとしていた。

夕方の風呂場で排水溝の蓋を外して掃除している様子

夕方の風呂場、排水溝の蓋を外した

夕方、風呂場に入ると、排水溝の流れが少し悪いことに気づいた。昨日の夜からなんとなく嫌な予感はしていた。蓋を外すと、案の定、髪の毛が絡まり、石鹸カスが固まっていた。指でつまんでゴミ箱に捨てたが、ヌメッとした感触が指に残る。

蓋自体も、よく見ると裏側に白いゼリー状のものが付いている。前に専用の洗剤で掃除したのは、まだ梅雨の頃だったと思う。あれから一ヵ月半も経つのか。洗剤の残りが少ないから、今回はお湯とブラシでなんとかしようとしたが、途中で歯ブラシの古いのを使っていることに気づく。捨てる前に一度使えるかどうか試した。

排水溝の奥の方はブラシが届かない。結局、手を突っ込んで、指先で絡まった毛を引き出した。鏡に映る自分の顔は、少し不機嫌で、前髪が濡れて額に張り付いていた。風呂場の壁にある換気扇の音だけが響いている。蓋を戻すとき、すぐに流し直してみると、水の落ちる音が変わっていた。ちゃんと吸い込まれていく。

ふと、今朝の天気予報では夜から雨と言っていたのを思い出す。窓の外はまだ明るかったけど、少しだけ湿った風が入ってきていた。風呂場の窓を閉めて、水道の蛇口を確認して、出ていく前にタオルをかけ直した。掃除をしている最中ずっと鼻についていた石鹸の匂いも、風呂場を出る頃には気にならなくなっていた。

夕方の沼に浮かぶ水草の葉

夕方の沼、岸に浮かぶ水草の葉

夕方、沼の岸にしゃがんで水草の葉を眺めていた。風が少しあって、水面は細かく波立っている。浮かんだ葉がゆっくり回って、また戻る。同じ場所に留まっているようで、少しずつずれているらしい。

何の水草かは分からない。丸い葉が五、六枚、茎みたいなもので繋がっていて、その一部が水に沈んでいる。岸から手を伸ばせば届く距離だったが、触るのが面倒でそのままにした。

しばらく見ていると、葉の上に小さな虫が乗っていることに気づいた。アメンボではなく、もっと短い足の虫だ。葉が回るたびに体を向き直している。あれは何という虫だったか、名前を思い出そうとして、思い出せなかった。

そういえば、小学生の頃、学校の裏手にあった小さな池でも同じような葉を見た気がする。あの時は棒で引き寄せて、家に持ち帰ろうとした。途中で飽きて道端に置いてきた。

風が止んで、水面が急に静かになった。葉の動きも止まり、虫が何かを探すように歩き始める。しばらくするとまた風が吹いて、虫は葉の裏に隠れた。

結局、水草の名前も虫の名前も分からないまま、立ち上がって家に向かった。明日また見に来てもいいが、来ない気もする。

午後の塀の上に座る猫の手作り絵本風イラスト

午後の猫、塀の上で考えていたこと

午後の用事を終えて、いつもより一本裏の通りを歩いた。目的は特にない。ただ、表通りより日陰が多い気がして、ついそちらへ足が向いただけだ。

その猫を見つけたのは、角から二軒目の塀の上だった。灰色の猫で、前足をそろえて座っていた。動かない。目だけがゆっくりと動いて、通りがかりの僕を追う。

僕が近づいても、猫は立ち上がらなかった。逃げる気配もない。ただ、こっちを見て、何かを考えているような顔をしている。猫が何かを考えているかどうかは分からないが、ああいう姿勢を見ると、こっちがいろいろと考えてしまう。

そういえば、今日は朝から仕事の締め切りが頭から離れなかった。原稿を一つ、午後までに送る約束だったが、朝のうちに送ってしまった。それで少し気が抜けたのかもしれない。塀の上の猫を見ながら、あの原稿、本当に大丈夫だったかな、と思い返す。

猫は時々、まばたきをした。ゆっくりと。僕はそのまばたきの回数を数え始めたが、途中で面倒になってやめた。なんのために数えているのか、自分でもよく分からなかった。

それから、猫の左耳に小さな傷があるのに気づいた。かさぶたになっていて、もう治りかけているようだった。触りたいとは思わなかったが、どこで付けたのか、なんとなく気になった。喧嘩だろうか。それとも、どこかの塀に引っかけたのか。

しばらく立っていた。暑いのに、そんなに汗はかかなかった。風が一回、吹いて、生暖かかった。猫は風が吹いたとき、だけ、耳を少し動かした。それ以外は、ずっと同じ姿勢だった。

僕はそのまま、角の自動販売機でお茶を買おうと思った。が、財布を忘れたことに気づいた。家に置いてきた。仕方なく、来た道を引き返すことにした。猫は、僕が動いても、まだ塀の上にいた。

昼前の川原で石を投げる男性の後ろ姿

昼前の川原で石を投げた

昼前の川原に来ていた。先週買ったばかりのスニーカーが、砂利の上で少し滑る。曇り空のはずが、いつの間にか日差しが出ていた。

踏み固められた土の上に、白い小さな石がいくつか転がっている。しゃがんで、手頃な大きさのものを拾った。親指の先くらいの、丸っこい石だ。川に向かって投げてみると、水面に当たって「ぴしゃん」と軽い音がした。あんまり飛ばなかった。

二個目はもう少し大きいのを選んだ。今度は少しだけ弧を描いて、水の中に沈んでいった。あたりに跳ねる水しぶきが、気持ちよかった。

石を投げるのは、小学生の頃に川で遊んだとき以来かもしれない。あのときは、もっと水が冷たくて、足がすくむほどだった。そういえば、あの日も同じように、遠くのほうで鳥が鳴いていた。

投げた場所から少し歩いて、今度は水際にしゃがみ込んだ。水は思ったより澄んでいて、底の小石がそのまま見える。手を伸ばして、水に触れてみた。少し冷たい。触った指をそのままにして、じっと見ていると、水の流れがゆっくりと指のまわりを通っていく。
上流のほうから、風に乗って草の匂いがしてきた。

立ち上がって、川原を横切った。スニーカーの裏に、小さな石が一つ入っていた。歩くたびに、カチカチと音がする。何度か足を振ってみたけど、取れない。

帰るまでには、そのままにしておくことにした。家でスニーカーを脱いだら、その石はどうなっているだろう。ちょっとだけ気になっている。

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