
洗濯ばさみの向きを、拾う前に見た
洗濯物を取り込んだあと、床に落ちていた洗濯ばさみを拾おうとして、僕は指を伸ばすのを一度やめた。夜の十時を過ぎた部屋は、昼間より物の向きが分かりにくい。洗濯ばさみは閉じたまま、つまむ部分をこちらへ向けていたが、金具の輪だけが少し横を向いていた。
そのまま持ち上げれば済むのに、僕は床にしゃがんだ姿勢で、左右から眺めた。挟む口が上なら、洗濯物を外したときにひねった形かもしれない。下なら、落ちるときに裏返っただけかもしれない。どちらも確かめようがないので、向きを見たところで役に立たない。それでも、先に向きを決めてから拾うことにした。
指先で触れる前に、近くに落ちていた小さな糸くずをつまんで端へ寄せた。洗濯ばさみよりそちらのほうが目についたからだ。糸くずは白く、床の明かりの中では紙片にも見えた。拾い直すのが面倒になり、足でさらに壁際へ送ってから、洗濯ばさみを金具の輪が外側になるように持ち上げた。
収納かごへ入れる前に、別の洗濯ばさみと触れ合って、乾いた音が一度した。昼なら気にしなかった音だと思う。僕はかごの中を少しだけならして、今の一個を端へ置いた。向きまでそろえるつもりはなかったのに、置いた場所だけは覚えている。








