
スーパーのレジで、もやしの袋が少しだけ破れていた
スーパーのレジで、かごからもやしを取り上げたとき、袋の端が少しだけ破れているのに気づいた。かごの底に、水滴がたまっていた。レジのおばさんは何も言わず、新しい袋に取り替えましょうかと手を伸ばした。僕は、いえ、これで、と言って、そのままカゴに戻した。
もやしの袋の破れ。それくらいで交換してもらうのは、なんだか申し訳なかった。というか、自分が破ったかもしれないし、そもそも破れていても、家に着くまでの数分だ。袋の端から、ほんの少し水分がにじんでいる。透明な袋の内側が、うっすら曇っていた。
会計を済ませ、レシートを受け取ると、かごの水滴でレシートの端が少し濡れていた。インクがにじんで、数字の一部がぼやけている。それを見て、なぜか、息子が小さかった頃、もやしを「白いひげみたい」と言っていたのを思い出した。あの頃は、買い物に行くたびに、もやしの袋をふりまわして、よく破らせたものだ。
レジ袋に商品を詰めながら、もやしを一番上に置いた。ぬれた指先を、持っていたハンカチで拭いた。ハンカチは昨日のものだ。薄い水色がくたびれている。
外に出ると、細かい雨が降り出していた。今日は一日、こんな天気が続くらしい。もやしの袋の小さな破れから、水滴がぽつりと落ちた。僕はそれを、なんだか大事なもののように、しばらく見ていた。








