
支柱の間を選んだあと、歩道の線を見失った
支柱の間を通ると決めて、僕は歩道の端から少しだけ進む向きを変えた。朝の九時、晴れた空の下で気温は二十八度を超えていて、風はほとんどない。支柱の影が舗装の上に細く伸びていたので、その影を避けるつもりで足を置いたら、いつも見ている歩道の線が急に分からなくなった。
線は消えたわけではなく、支柱の根元で途切れたあと、少し斜めの位置から続いていた。僕は進行方向より先に、線の終わり方を確認しようとして立ち止まった。白っぽい部分の横に、靴底で擦れたような灰色があり、そこだけ舗装の粒が目立っている。こういうとき、道を選ぶより線を見つけるほうに時間を使う。
一度、支柱の間を振り返った。こちらから見ると線は思ったよりまっすぐで、見失ったのは支柱を抜けるときに足元を見なかったせいらしい。けれど、そう判断したあとも、線の上を歩く気にはならなかった。線のすぐ内側に小さな砂が寄っていて、そこを踏むと靴の裏に残りそうだった。
結局、線から少し離れた舗装の継ぎ目を目印にして歩いた。支柱の間を選んだこと自体はもう忘れかけていたのに、次の継ぎ目がどちらへ曲がるかだけは見ていた。








