
自動ドアの前で、半歩だけ待った
自動ドアの前で、僕は半歩だけ待った。開くはずの線まで近づいていたのに、ガラスの向こうへ入る動作を急に決めきれなくなった。朝の東京は薄い雲が広がり、暑さはあるものの、昨日ほど空気が重くない。センサーに届く位置は分かっているのに、足だけが先に進まなかった。
ドアは閉じたまま、向こう側の床をこちらへ反射していた。僕は靴の先を床の境目に合わせ、開くかどうかを見るためではなく、合わせ方がずれていないかを確かめるように立っていた。必要のない確認だと思いながら、右足をほんの少し引いた。すると、上のほうで小さな作動音がして、左右のガラスが離れ始めた。
開き始めたらすぐ通ればいいのに、僕は一度だけドアの端を見た。どこまで動けば完全に開いたことになるのか、毎回そこを見てしまう。隙間が肩幅ほどになってから、ようやく前へ出た。通り抜ける途中で振り返るほどのことではないが、背中側で閉じる音を聞く前に、もう次の足の置き場所を考えていた。
中へ入ってから、半歩待ったことを思い返した。急いでいたわけでも、ドアが故障していたわけでもない。ただ、開く前の短い間に自分の進む向きを確かめたかったらしい。そんな理由を後からつけているうちに、入口のガラスはまた閉じていた。








