
湿地の水際で、足を置く場所を選んだ午後
湿地の水際で、足元を見た
草の間から出たところで、僕は足を止めた。湿地の水際は、道のように見える部分が続いているのに、土の色が少しずつ違っていた。乾いて白っぽい場所の隣に、靴底を受け止めそうで受け止めない暗い土がある。先に進むだけなら、どこでも踏めそうだった。
昨日の雨が残っているのか、水面に近い草は根元から寝ていた。水は濁ってはいないが、岸との境目がはっきりしない。僕は靴先を浮かせたまま、まず細い草の倒れ方を見た。踏まれた跡に見えるものもあったけれど、人のものか、ただ風で押されたものかは分からない。
乾いた土の隣で迷う
右足を置く候補を三つに絞った。白い土の上は固そうで、少し先の平らな草は沈みそうだった。その間にある細長い場所には、折れた茎が一本横たわっている。こういうとき僕は、進みやすさより、戻るときに見失わないかを先に考えてしまう。自分でも面倒な基準だと思う。
試しに靴の先だけを乾いた場所へ出し、体重は移さずに引いた。土は崩れなかったが、安心できるほどの確認でもない。湿地の縁では、固いところが広いとは限らないらしい。分かったようなことを考えた直後、僕は水面に浮いた小さな葉の向きを見ていた。足場とは関係がないのに、同じ方向へそろっているのが気になった。
そのあいだに、背中へ回った日差しでシャツが少し張りついた。午後の湿地は明るく、草の影が水際へ細く伸びている。遠くまで見渡せるせいで、目の前の十数センチだけを選ぶ自分が余計に細かく感じられた。けれど、広さを見て歩けるわけではない。
一歩だけ、土の上へ
折れた茎を避け、白っぽい土の中央へ足を置いた。靴底の下で小石が二つ動いたので、すぐには次の足を出さなかった。沈まないことを確かめるというより、動いた小石の位置を覚えようとしていた。覚えても仕方がないのに、そういう細部だけは残る。
水際から離れる方向には、草の間にもう少し乾いた帯が続いている。僕はそちらへ向きを変えたが、二歩目の前でまた止まった。先ほどより平らに見える場所の端が、薄く割れている。そこを避けるために足を横へずらし、折れた茎の先だけを靴で押さえないようにした。まだ進んだとは言いにくいところで、文章を閉じることにする。







