
台風直撃の出勤で、交通情報を閉じられなかった
「台風が来る。しかも直撃」と聞いたとき、少しだけ期待した。学校が休みになる日のような、いつもの予定が急に消える感じを想像したからだ。けれど、窓の外では雨が続いているだけで、僕の出勤予定は消えていない。ワクワクは、思ったより早く普通の心配に戻った。
出かける前に交通情報を開くと、台風15号による新幹線や首都圏の鉄道への影響が案内されていた。空の便は平常通りらしい。平常という言葉を見て、台風の中心がどこにあるのかより、自分が乗る路線はどうなのかを先に探してしまう。大きな天気の話なのに、画面の中で僕が見ているのは細い一行だけだった。
雨は弱くなったり強くなったりして、玄関を出る判断も妙に細かくなる。傘を持つ、靴を選ぶ、駅まで行けるか考える。そのたびに、さっきまでの「直撃なら何か起きるかも」という気分が薄まっていった。危険がないとは思っていないのに、出勤する人の列に自分も混ざると考えると、台風は急に勤務表の端へ押し込まれる。
ニュースの更新をもう一度見て、僕は画面を閉じた。閉じたあとで、閉じるのが早かった気もして、また開いた。運行情報を確認したというより、出勤してよい理由を探していたのかもしれない。結局、傘を手にして玄関を出る。雨の音を聞きながら、ワクワクしていた自分のほうを少しだけ置いていく。








