
濡れた買い物袋の底を、三回押した
雨の中から戻ってきて、買い物袋を床に置く前に、底を指で押した。袋は持ち手のところまで濡れていて、紙の繊維が少し膨らんでいる。底が抜ける感じはないのに、押した指先には冷たい湿り気が残った。僕は一度手を離し、それから同じ場所をもう二回押した。合計三回になったところで、これ以上やっても確かめることは増えない、と考えた。持ち替えた手のひらまで湿っていたので、袋ではなく自分の手を先に見ることになった。
袋を持ち上げると、底の端から床へ小さな水滴が落ちた。拭くために手を伸ばしかけたが、先に袋を立てたままにするか、横に寝かせるかで迷った。立てると水が一点に集まりそうで、横にすると濡れた面が広がりそうだった。結局、底が見える向きに少し傾け、指で押した跡を眺めていた。押した跡はすぐ戻り、戻ったことだけが妙に分かりやすかった。もう一度押せば安心できそうだったが、四回目になるのでやめた。
外では雨がまだ続いていて、入口のあたりから細い水音が聞こえていた。袋を処分するほどではないし、乾くのを待つほどのことでもない。僕は床の水滴を拭き、袋を持ったまま、買ったものをどこへ置くかを考えた。底を三回押した理由は、最後までうまく説明できなかった。濡れた袋を置く位置だけ決めて、手を洗う前に持ち手をもう一度つまんだ。







