
温度計の下がる音
薬局の前で立ち止まった。入口脇の温度計の表示が、いつもより小さく見える気がして、足を止める理由になった。
## 信号待ち
横断歩道の手前で、靴底が砂利をかすかに鳴らす。車道の向こうで、バス停のベンチが黒っぽく静かに浮いていた。
## ガラス越しの光
薬局のガラスには自販機の灯りが薄く写って、棚のポスターは文字が読めないくらいぼけている。レジの脇で袋が擦れる音だけ聞こえた。
## 目線の高さ
植え込みの鉢植えが、葉先を同じ向きに保ったまま揺れない。帰る直前、温度計を見上げる癖は、こういう時間にだけ強くなるのかもしれない。こうやって目線を上げ直すと、今日の疲れ方が変わることはないでしょうか?
最後に、コートの袖口を指先で直して、歩き出した。








