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思考と技術の記録。besoft Blog

開発・設計・運用・プロダクトづくりのなかで得た知見を、読みやすくまとめて共有します。

記事一覧

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朝の窓辺でガラスから少し離されたヒマワリの葉

ヒマワリの花言葉を、葉先から少し離れて読んだ

ガラスに触れそうなヒマワリの葉を、僕は指一本分だけ横へ逃がした。花瓶を動かすほどではないと思ったのに、葉先が窓辺のガラスへ近づくたび、そこだけ確認してしまう。朝の光はまだ強すぎず、黄色い花びらの重なりより、葉の影のほうが先に目に入った。

花言葉を調べようとして画面を開き、「あなただけを見つめる」という文で止まった。ヒマワリの花言葉としてよく知られているらしい。僕は花の中心を見ていたわけではなく、触れているかいないか分からない葉先を見ていたので、その言葉を素直に受け取るのが少し難しかった。画面を少し下へ送って、別の説明を探しかけても、結局そこへ戻った。

一度、葉を反対側へ倒してから、やはり窮屈に見えて元へ戻した。窓ガラスには湿気が残ったような薄い曇りがあり、葉先との間隔を目測すると、さっきより広くなった気がする。こういう確認は測れば終わるのに、僕は測る道具を取りに行かず、首を左右に傾けて済ませた。花瓶の水面まで見ておきながら、見るべき場所はそこではなかった。

花言葉のページを閉じる前に、もう一度だけ文章を読み直した。花の向きではなく、葉の置き場所を直している自分には、少し大きすぎる言葉に思えた。ヒマワリはそのままにして、僕は画面を伏せ、ガラスから離れた椅子に腰を下ろした。

朝の光が足元に届かない自動販売機と歩道

自動販売機の足元だけ、朝の光が届かなかった

自動販売機の前を通り過ぎかけて、僕は足を一度だけ戻した。飲み物を買うつもりではなかったので、戻った理由をすぐには決められない。朝七時半の光は街角の上から斜めに差しているのに、機械の足元だけが四角く暗い。湿気の残る空気の中で、舗装の細いくぼみにたまった水へ、明るい空だけが小さく映っていた。

本体の影だと思っていた暗がりは、下の金属板が少し前へ出ているせいだった。僕はしゃがまず、靴先を板の端に合わせてみた。触れてはいない。ただ、光がどこから始まるかを、靴の位置で確かめたかった。こういう確認をしていると、買わないのに機械を選んでいるようで、ボタンの並びまで見てしまう。左端の表示だけ、朝の光を細く返していた。

側面には、掃除の布が届かなかったらしい灰色の筋が一本あった。水滴ではなく、乾いた跡に見えたので、指でなぞる代わりに首を少し傾けた。背後から自転車の音がして、僕は一歩横へ寄る。通り過ぎたあとも、暗い四角の中に自分の影が重なっていたのかを、もう一度だけ見た。

実際には、僕が動けば影も動く。それで話は終わるはずなのに、足元だけを見ていたせいで、機械の上にある空の明るさを見落としていた。硬貨を出すことはなく、僕は横の歩道へ進んだ。靴底に小石が挟まっているのに気づき、角で二度こすってから、歩く速さを戻した。

雨に濡れた歩道と街灯の下に止まる自転車

街灯の下で、自転車のベルを二度見した

街灯が点いたかどうかを確かめるために、僕は歩道の端で一度だけ立ち止まった。雨は強くないのに、昨日から濡れている感じが道全体に残っていて、靴の裏がいつもより薄く滑る。街灯は点いていた。ただ、明るくなったというより、濡れた舗装の上に丸い場所ができただけに見えた。

その丸い場所の中に、自転車が一台止まっていた。前かごの底に雨粒がたまり、ベルの横だけが乾いている。持ち主が拭いたのか、そこだけ雨が当たりにくかったのか、僕はベルの向きを確認した。確認しても分からないのに、正面を向いているか、少し斜めかを二度見た。街灯の光で金具が白く光り、音を鳴らす理由もないのに、指を伸ばしかけた。

歩き出してから、さっきの自転車より、街灯の根元に貼られた小さな透明テープのほうを覚えている。端が浮いて、雨を含んだ砂が下に入り込んでいた。剥がれかけを見つけると、つい靴先で押さえたくなるが、今日はそこまでしなかった。靴が汚れるのが嫌だったのか、テープを踏むと余計に剥がれそうだったのか、自分でも決めきれないまま、歩道の幅の広いほうへ少し寄った。

街灯は背中側へ移り、前の道には店の明かりが伸びていた。雨のせいで看板の色がぼやけていたが、読もうとはしなかった。僕は濡れた袖口を一度だけ握り、手を開いた。水が落ちる場所を見てから、次の角を曲がるか、そのまま進むかを、まだ決めていない。

小雨の海岸で閉じられない傘

海の手前で、傘を閉じる順番を考えた

傘の先を海へ向けたまま、僕は閉じるきっかけを失っていた。海の手前まで来ると、雨は昼間より細くなっていたのに、湿った空気がシャツの首元へまとわりつく。19時05分の空はもう明るさを決めかねていて、沖と雲の境目もよく分からない。傘をたたむだけなら数秒なのに、骨を一本ずつ戻す順番を考えてしまった。

足元には、雨を含んだ砂が薄く光っていた。波が届く場所まではまだ少しあり、僕は海へ近づくより、傘の内側にたまった水滴の数を見ていた。数えられるものではないのに、三つ目までは追えた。柄を握り直すと、手のひらに冷たさが残り、さっきまで傘を差していたことだけが妙に確かになった。

一度、閉じようとして留め具に指をかけた。けれど、布をまとめる前に沖で波が崩れ、白い部分が一瞬だけ見えた。強い音ではなかったので、僕は聞き間違いかと思い、海ではなく足元へ視線を落とした。濡れた砂に靴底の跡が半分だけ残り、次の雨で端から浅く消えていた。

傘を開いたまま、僕は海岸の手前を少し横へ歩いた。進む方向を変えた理由は自分でもはっきりしない。傘の端から落ちる水が袖を濡らし、拭おうとした指が布の縫い目に引っかかった。そこでまた立ち止まり、閉じるのは帰るときでいい、と決めかけたところで、その決め方も傘の内側に置いた。

雨の降る夕暮れの玄関に置かれた靴べらと濡れた靴

靴べらを、すぐには戻さなかった

靴を脱ぐ前に、靴べらの柄を指で探った。玄関の明かりをつけると、外の雨がガラス越しに細く見えて、床には靴底から落ちた水が二、三滴だけ残っていた。いつもなら使った靴べらをすぐ横の筒へ戻すのに、その日は手に持ったまま、履いてきた靴のかかとを見ていた。

かかとの革が少し内側へ折れていた。靴べらを使ったせいなのか、歩いている間についたものなのか、見ても分からない。僕は指で折れ目を押し、戻ったような戻らないような形を確かめた。靴べらの先にも黒い跡がついていたので、ティッシュを取りに行こうとして、濡れた床の滴を先に拭いた。

拭き終わってから、ティッシュを捨てる場所を考える間も、靴べらは右手に残っていた。筒へ戻せば済むのに、柄の端にある小さな傷を見つけてしまい、前からあった傷かどうかを思い出そうとした。こういう確認はだいたい答えが出ない。玄関の外では雨の音が少し強くなり、僕は靴を脱いだまま、片足だけ靴下で立っていた。

それから靴べらを筒へ差し込んだ。底に当たった音が思ったより軽く、入れ方が悪かったのかと一度だけ柄を持ち直した。濡れた靴は新聞紙の上へ置いたが、紙の端が少しめくれていたので、そこだけ指で押さえた。夕食の支度をする前に、手を洗うことを忘れないようにしながら。

昼前の横断歩道脇に残る小さな水たまりを描いた手作りミニチュア

水たまりの縁だけ、信号より長く見ていた

信号が変わるのを待ちながら、僕は足元の水たまりの縁ばかり見ていた。昼前の道路は昨日の雨をもう乾かし始めていて、黒い舗装の上に残った水だけが、そこだけ時間を遅らせているように見えた。

水たまりは大きくない。靴の先を少し外へ向ければ避けられる程度なのに、縁の一か所だけが歩道のひびに沿って細く伸びている。その線が白線と同じ向きなのか、僕は信号を確認するより先に目でなぞった。

空は水面にそのまま映らず、雲の明るさだけが薄く浮いていた。風はほとんどなく、車が通るたびに水面の端が小さく震える。揺れが止まるまでを数えようとして、三つ目でやめた。数えるほどのことではない。

信号機の表示が変わった気配がして、周りの人の足が動いた。僕も一歩出かけたが、水たまりを踏まないように靴先を戻した。渡るために待っていたのに、最後に確かめたのは信号ではなく、乾いた場所の幅だった。

その幅なら十分通れる。そう思ってから、わざわざ一度だけ靴底を見た。濡れてはいない。昨日の雨の名残を避けたつもりで、実際には何を避けたのか、自分でもよく分からないまま歩き始めた。

横断歩道を渡る途中で、後ろの水たまりはもう見えなくなった。昼前の光が強くなり、額に汗が出たので、僕は信号が変わる前に渡り切れたかどうかを考えるのをやめた。

朝の細い雨が降る窓辺に置かれたニュース画面のスマートフォン

千葉大雨速報を閉じる指が、雨の音で止まった

「千葉大雨速報」の画面を閉じようとして、指先が画面の端で止まった。特別警報から危険警報や警報などに切り替わった、という見出しを読んだ直後だった。閉じるための小さな印は見えているのに、そこへ触れる動作だけが急に雑に思えた。

窓の外では、東京の朝の細い雨が続いている。昨日から雨音を聞いているせいか、記事の中の線状降水帯という言葉より、ガラスに当たる音のほうが近く感じられた。千葉の状況を見ている僕の部屋まで同じ雨が来ているわけではないのに、音だけは簡単に境目を越えてくる。

画面を少し下へ動かすと、上空から撮影した映像の見出しが現れた。映像を再生するつもりはなかったが、再生ボタンの三角形を親指で一度なぞった。ニュースを知りたいのか、知ったあとに閉じる理由を探しているのか、自分でも分からない。こういうとき僕は、必要な情報より画面の余白を長く見てしまう。

8時45分になっても指は閉じる印へ戻らず、被害の続報がないかをもう一度だけ確かめた。警報の切り替えは安心そのものではないと分かっている。それでも見出しが更新されるたび、読む側は何かできるような気分になって、結局は指を止めたまま雨の音を聞いている。

雨に濡れた朝顔の鉢と落ちた花びら

朝顔の花言葉を、花の向きより後に読んだ

朝顔の鉢を見たとき、花は僕のいる方ではなく、少し外側へ向いていた。雨の細かい粒が葉の縁に並び、開いた花びらの一枚だけが重そうに下がっている。水をやるか迷って、じょうろを持ったまま、まず鉢の土を指で触った。昨日から濡れているので、今日は足さないことにした。

花の向きを直せるわけでもないのに、鉢を数センチだけ回してみた。茎が絡んでいるので、これ以上動かすと別の葉を傷めそうだった。元に戻すほどでもなく、僕が見やすい角度になっただけで手を離した。こういう中途半端な調整は、あとで自分でも理由を思い出せない。

スマートフォンで今日の花として朝顔を開き、朝顔の花言葉を読んだ。最初に見たのは言葉ではなく、画面の上に残った雨粒だった。袖で拭くと、文字が急に近くなった。内容を覚えようとして一度戻り、もう一度開いたけれど、さっき花が向いていた方向のほうがまだ気になっている。

鉢の横には、落ちた花びらが一枚だけあり、拾う前に裏返してみた。表より裏の方が濃く見えたので、捨てる場所を少し迷った。結局、葉に載せるとまた濡れそうで、土の端へ置いた。スマートフォンを閉じたあとも、花言葉の最後の単語だけが曖昧なまま残っている。

雨の夜の台所で冷凍庫から製氷皿を取り出す小さな情景

製氷皿の角に、指を置いたまま

冷凍庫から製氷皿を引き出したところで、僕の指は右手前の角に置かれたままになった。水を入れすぎた覚えはないのに、その角だけ氷が薄く盛り上がり、白く曇っている。引けばすぐ済むのに、指先を離す前に、皿がどちらへ傾いているのかを確かめたくなった。

雨の夜の台所は湿っていて、冷凍庫の扉を開けた隙間から冷気が膝へ落ちてくる。製氷皿を少し持ち上げ、角を押してみると、氷は動かず、代わりに皿の薄い部分だけがきしんだ。僕は一度手を止め、氷ではなく、角の小さなへこみを見ていた。前からあった傷なのか、今日できたものなのか分からない。

取り出したかったのは一個だけだったので、反対側から軽くねじればよかった。けれど、ねじる方向を決めるために、空いた列を二つ数えた。数え終わってから、そんな確認は必要なかったと思い、少しだけ笑った。冷凍庫の奥で別の氷が触れ合う音がして、指先の冷たさに気づいた。

結局、角を押さえたまま製氷皿を水平に戻し、手前の一個を外した。氷を口に入れるつもりで持ち上げたが、角のへこみが気になって、皿をすぐには戻せなかった。扉の警告音が一度鳴り、僕はようやく指を離した。

夜の雨が降る家の台所で表示が点灯した電子レンジ

電子レンジの時計を、直す前に一度だけ見た

電子レンジの時計が、また少しずれている。夕食のあと、夜の雨の音を聞きながら台所の前を通ったとき、黒い表示の数字だけが妙に目に入った。壊れているわけではないし、温める機能にも困っていない。それでも、表示が正しくないままなのが引っかかった。

僕はすぐにボタンへ手を伸ばさず、まず時計の数字を一度だけ見た。直す前に確認する意味はないのに、分の並びを読み直してしまう。電子レンジの時計は、家の中でいちばん近くにある時計なのに、いちばん信用していない時計でもある。

操作パネルの時計ボタンに指を置いた。雨が窓を細かく叩き、表示の明かりが濡れた窓ガラスの反射に重なっている。数字を合わせる途中で、時の欄を先に押すのか、分の欄を先に押すのか分からなくなり、僕は一度指を離した。こういうところだけ、必要以上に慎重になる。

もう一度説明のないボタンを眺めてから、順番を変えずに押していった。表示の数字が一つ進むたび、合っているか確かめるために目を近づける。時計を直すだけなのに、温める時間を設定するときより手間がかかる。

最後の確定ボタンを押す前に、電子レンジの扉を閉めた。何かを温める予定はもうない。台所の明かりを消すには少し早く、雨の音の間に冷蔵庫の低い音が混じる。僕は表示をもう一度だけ読んでから、指をボタンの上へ戻した。

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