
除湿機の水筋を、拭く前にたどった
除湿機のタンクを空にしようとして、手を止めた。床に置いた本体の脇から、細い水筋が一つだけ伸びている。タンクを抜いたときにこぼしたのか、昨日の雨の湿気でできたのか、見ただけでは分からない。19時25分の部屋は、窓を閉めていても空気が重く、除湿機の表示だけが淡く光っていた。
ティッシュを取る前に、しゃがんで水筋の先を目で追った。途中で幅が少し変わり、床板の継ぎ目の手前で途切れている。指で触ればすぐ確かめられるのに、今日はそこまでしなかった。濡れた跡を先に消すと、何を拭いたのか自分で分からなくなりそうだった。こういう確認に時間を使うので、家事が妙に遅い。
水筋の横には、拭き掃除をしたときの細かな繊維が一本張り付いていた。水が運んだのか、もともと落ちていたのか判断できず、爪で取るのも後回しにした。床の汚れを探しているのに、目はいつも、汚れより小さいものへ逃げる。除湿機の低い音が止まるたび、部屋の広さまで変わったように感じたが、音が戻るとすぐ忘れた。
タンクの底も持ち上げて見た。透明な水が残ってはいなかったが、角に小さな水滴が二つ付いていた。原因はたぶんこれだと思いながら、たぶんのまま本体を少し手前へ動かした。背面のコードが床をこすり、短い音がした。その音が気になって、今度は水筋ではなくコードの曲がり方を見てしまった。結局、乾いた布の端を水筋のいちばん細いところに当て、押さえるように拭いた。こすって広げるのが嫌で、布を滑らせず、四角く折ったまま何度か置き直した。床はすぐ乾いたけれど、布の先に残った冷たさを確かめるため、僕はそれを広げずに持っていた。タンクを戻す向きだけ、まだ決めていない。








