
曇りの夜、マンホールのふたを指で確かめる
曇りの夜、駅を出て歩道をゆっくり進む。アスファルトの色は一様で、足元だけ少しざらつく。横に視線を落とすと、丸いマンホールのふたがある。靴先で縁をなぞり、段差の感触を確かめてから、手のひらをそっと当てた。金属は思ったより冷たく、刻み目が指先に沿って硬く返ってくる。
ふたの周りを一周見る。周辺の植え込みは背丈が低く、葉は濃い緑のまま揺れている。近くを車輪が通った気配で、少しだけ空気が動き、葉先が整う。歩幅を変えずに、同じ距離だけ前へ進むと、ふたの向きが目に収まる場所が変わる。
指でたどる小さな差
次の角まで行く途中、もう一度手を添えるつもりで立ち止まった。今の位置なら、ふたの刻み目がよく見える。私はその見え方が好きで、でも理由は言えない。さっきの手応えと、視線の落ち着く角度が、同じかどうかだけ確かめたい。
あなたなら、どこを触ってしまう
街の中で、つい触りたくなる金属や縁はあるだろうか。








