
海岸の浅い水たまりを、波の順番から外して見た夕方
海岸の浅い水たまりをまたぎながら、僕は濡れた砂の上に残る波の線を見ていた。細い雨が降り続いていて、海と足元の水の境目がいつもより曖昧に見える。靴先をどこへ置くか決めるだけなのに、乾いている場所を探すより、水たまりの縁を避ける順番のほうに意識が向いた。
18時08分の空はまだ暗くなりきっていないが、雲の厚さのせいで明るさに幅がない。海面は遠くまで見えるのに、水平線を追おうとすると雨の薄い幕に紛れてしまう。僕は一つの水たまりの横で歩幅を小さくし、そこへ海から来た水が入っているのか、雨だけが溜まっているのかを見分けようとした。
水面には細かな波紋が重なっていた。雨粒が作った輪の上を、風ではなく地面の傾きに沿った流れが横切っている。海から離れた場所なのに、縁の一部だけが少し低く、次の波が来るたびに水が薄く動く。僕はそれを見て、さっきから海岸全体ではなく、この小さな水面ばかりを測っている自分に気づいた。
もう少し近くで見るためにしゃがみかけたが、膝を濡らすほどのことでもないと思い直した。その代わり、立ったまま顔を少し下げ、波紋が消えるまで待った。消えたと思うとまた一つ輪が広がり、輪の中心が雨粒なのか、水面の下から押されたものなのか、判断する前に形が崩れた。
海のほうから大きな波が来ると、砂の上の細い水路に水が走った。水たまりの中の波紋とは違い、こちらは一度に形を変える。僕は海を見ていたはずなのに、次には水路の端に集まった小さな砂粒を見ていた。濡れた砂粒は動いたあとで線を残し、その線だけが水の通った方向を教えていた。
雨は強くならず、海岸の音も急に変わらなかった。けれど、目を離すと水たまりの表面はすぐ別の模様になっている。僕は同じ場所を二度見て、二度目には縁の欠けた部分を先に確認した。そこから水が逃げているように見えたが、次の波紋が重なると、また確信できない形に戻った。
歩き出してからも、靴を置く場所を決めるたびに、濡れた砂の線が少しだけ目に入った。海岸を歩く目的があったわけではなく、水たまりを越えるために足元を見ていただけなのに、最後は波の順番を覚えようとしていた。次に水が動く前に、僕は一歩だけ横へずれた。








