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思考と技術の記録。besoft Blog

開発・設計・運用・プロダクトづくりのなかで得た知見を、読みやすくまとめて共有します。

記事一覧

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夕方の台所で開いた冷凍庫の中に並ぶアイスクリーム

冷凍庫の扉を開けて見つけた紫色

冷凍庫の中の色彩

台所の電気をつけたまま、冷凍庫の扉を引いた。冷気が足元に流れ落ちる。霜のついた引き出しの奥に、見慣れない紫色が光っていた。

「植物性ミルクのアイス」という文字が目に入る。タイティー。聞いたことのない響きだった。手を伸ばすと、容器の表面についた霜が指先で溶けた。

カップを手のひらで包むと、思ったより軽い。振ってみても音はしない。蓋の絵柄を親指でなぞる。紅茶の葉が描かれているらしいが、霜で少しぼやけている。

紫という色の記憶

紫色の食べ物を最後に口にしたのはいつだったか。紫芋、ぶどう、なす。どれも最近食べていない気がする。冷凍庫の扉を開けたまま、手の中のカップをゆっくりと回す。

台所の床がひんやりと冷たい。素足の裏に、冷気がまとわりつく。扉を閉めようとして、また開く。他のアイスクリームは白や茶色ばかりだ。この紫だけが、妙に目立っている。

蓋を開けようとして、やめた。まだ夕飯の支度が残っている。カップを元の場所に戻すと、指先に霜の跡が残った。

明日のための小さな楽しみ

冷凍庫を閉めると、台所が急に暖かく感じられた。流しの横に置いた買い物袋から、野菜を取り出す。キャベツの葉を一枚むきながら、さっきの紫色を思い出す。

タイティーという名前を、口の中で転がしてみる。どんな味がするのだろう。甘いのか、さっぱりしているのか。スプーンですくったときの感触は。

包丁でキャベツを切りながら、明日の午後のことを考えた。仕事から帰ってきて、誰もいない台所で、あの紫色のカップをもう一度手に取る。そのときは迷わずに蓋を開けよう。窓から差し込む光の中で、ゆっくりと味わってみよう。そんなことを思いながら、まな板の上のキャベツがリズミカルに刻まれていく音を聞いていた。

夕暮れ時の新幹線車窓と座席のひじ掛けに置かれた手

車窓の向こうの夕暮れに手を置いて

窓ガラスのひんやりとした感触

車窓に手のひらを置くと、ガラス越しに外の温度が伝わってくる。夕暮れの光が斜めに差し込んで、指の影が座席の肘掛けに落ちている。

隣の席から缶ビールを開ける音がして、プシュッという音のあとに麦の匂いが漂ってきた。通路側の席の人も、小さくため息をついて背もたれに深く体を預けている。

窓の外では、田んぼと住宅地が交互に現れては消えていく。電柱の影が長く伸びて、民家の屋根瓦がオレンジ色に染まっている。時々、踏切の遮断機が下りているのが見えて、待っている車の列がすぐに視界から消える。

座席の微振動と重たいまぶた

肘掛けから伝わる細かい振動が、腕を通って肩まで届く。目を閉じると、振動がもっとはっきりと感じられる。でも完全には閉じきれなくて、薄目のまま窓の外を見ている。

前の座席のポケットから、誰かが置き忘れたらしい新聞の端が見えている。車内販売のワゴンが通路を通るたび、缶やペットボトルがカタカタと音を立てる。その音が遠ざかっていくのを聞きながら、また窓に視線を戻す。

トンネルに入ると、窓ガラスに車内の様子が映り込む。自分の顔も見えるけれど、すぐに目をそらして、また外の景色が戻ってくるのを待つ。

靴の中で丸めた足の指

靴の中で足の指を何度も握ったり開いたりしている。靴下が少し湿っているような気がして、かかとを浮かせてみる。でもすぐに元の位置に戻してしまう。

車内アナウンスが流れて、次の停車駅を告げている。でも降りるのはまだ先だ。ペットボトルの水を一口飲んで、キャップを締める手が少し震えている。アルコールのせいか、疲れのせいか、自分でもよくわからない。

窓に置いた手のひらに、自分の息が白く曇りを作る。それをそのままにして、また流れていく景色を見ている。どこかの駅のホームに、傘を持った人が立っているのが一瞬見えた。でも今日は雨じゃない。きっと忘れ物だろう。

初夏の川原に並べられた大小の石

川原の石を並べる午後

水際に降りて

川原への道は、草をかき分けて降りる。サンダルの底が砂利を踏むたび、小さく音が散る。水面が近づくにつれて空気が変わった。湿り気を含んだ風が、首筋をなでていく。

足元には無数の石。大きいもの、小さいもの、平たいもの、丸いもの。どれも水に洗われて角が取れている。しゃがみ込んで、手のひらに収まるものを一つ拾い上げた。

石の表面はつるりとしていて、思ったより重い。親指でなぞると、かすかにざらつく場所がある。そこだけ色が違う。白っぽい筋が、斜めに走っていた。

並べていく手

最初の石を砂地に置く。次の石を探して、また腰を落とす。今度は少し大きめの、灰色がかったものを選んだ。最初の石の隣に置いてみる。

何のために並べているのか、自分でもよくわからない。ただ、手が動く。石を拾い、眺め、置く。その繰り返しが、妙に心地いい。

水音が絶えず聞こえている。時折、魚が跳ねたような音もする。振り返らずに、目の前の石だけを見続けた。

三つ、四つと増えていく。大きさの順番など考えていない。ただ、これはここ、と思う場所に置いていく。並んだ石を見ていると、まだ何か足りない気がした。

風が吹き抜ける

立ち上がって腰を伸ばす。膝についた砂を払うと、細かい粒が風に流れていった。川面がきらきらと光っている。

また別の石を探し始める。今度は少し離れた場所まで歩いた。水際ぎりぎりのところに、手のひらよりも大きな石がある。持ち上げようとして、やめた。重すぎる。

代わりに、その横にあった小さな白い石を拾う。他の石よりもずっと軽い。表面に小さな穴がいくつも開いていた。

元の場所に戻って、並べた石の端に置く。白い石だけが、やけに目立つ。でも、それでいいような気もした。

風が強くなってきた。髪が顔にかかる。手で押さえながら、もう一度並べた石を見下ろす。特に意味はない。ただ、ここに石がある。それだけのことだった。

昼下がりの山道の岩場に生える苔と小さな虫

山道の岩場でしゃがみ込んで

岩の上の小さな住人

山道の途中で立ち止まり、そのまま岩場にしゃがみ込んだ。膝が地面につきそうになって、慌てて体勢を整える。湿った土の匂いが鼻をかすめた。

岩の表面を這う小さな虫を見つけた。黒い体が苔の緑の上を進んでいく。触角を左右に振りながら、何かを探しているようだった。指先がむずむずして、つい岩の端を撫でてしまう。ざらついた感触が指紋に残った。

虫は苔の隙間で立ち止まり、しばらくじっとしていた。それから急に向きを変えて、岩の裏側へ消えていった。追いかけようとして体を傾けたが、太ももの筋肉が張って、結局そのままの姿勢でいることにした。

苔の森を覗き込む

目の前の岩には、びっしりと苔が生えていた。よく見ると、一つ一つが小さな森のようだった。緑の中に、さらに濃い緑や黄緑が混じっている。水滴が苔の先端で震えていた。

息を吸うと、胸の奥で何かがつかえた。咳をしそうになって、口を手で覆う。苔の表面がかすかに揺れた。自分の息がかかったのかもしれない。

別の虫が苔の上を横切った。今度は羽のある小さなものだった。透明な羽が光を反射して、一瞬きらりと光る。すぐに見失ってしまったが、まだどこかにいるような気がして、目だけで岩の上を探した。

動かない時間

太ももが痺れ始めていた。でも、まだ立ち上がりたくなかった。岩の冷たさが、ズボンを通して伝わってくる。手のひらで別の岩を押さえると、湿り気がじわりと染みてきた。

頭上で風が通り過ぎる音がした。木々がざわめいて、光の加減が変わる。岩の上の影が動いた。自分の影も一緒に揺れているのが見えた。

ふと、昨日の朝のことを思い出した。洗面所で顔を洗ったとき、鏡に映った目が赤かった。今も同じ目をしているのだろうか。確かめる術はない。ただ、岩の上の虫たちを見つめ続けた。

もう一匹、違う種類の虫が現れた。足が長くて、体は小さい。岩から岩へと器用に渡っていく。その動きを目で追いながら、いつの間にか口が半開きになっていることに気づいた。唇が乾いていた。

洗面台の引き出しに整然と並んだ綿棒と、その横に置かれた小さな容器

耳かき棒の引き出しを閉めて

洗面台の前で手が止まる

洗面台の引き出しを開けると、白い綿棒が百本ほど、透明な容器に立っている。昼前の光が磨りガラスを通して入り込み、綿の先端がぼんやりと光る。

手を伸ばしかけて、止める。今朝読んだ記事の一節が頭をよぎる。綿棒も、耳かきも、全部だめだという。耳鼻科医が書いた文章だった。

容器の縁を指でなぞる。プラスチックのつるりとした感触。毎朝ここから一本抜き取る動作が、もう何年続いているだろう。

身体が覚えている儀式

洗面台の鏡に映る自分の耳を見る。右手が無意識に耳たぶに触れる。風呂上がりの水分を拭き取るあの感覚を、指先が探している。

綿棒を持たない朝は、何か大事な手順を飛ばしたような、落ち着かない気持ちになる。歯を磨いて、顔を洗って、そして耳を、という順番が身体に染みついている。

引き出しを閉めかけて、また開ける。綿棒たちは相変わらず整然と並んでいる。使われるのを待っているかのように。

小さな習慣の重み

洗面所の床に膝をつく。引き出しの奥に、使いかけの耳かきセットが転がっているのが見える。竹製の耳かきと、先端に白い綿毛がついた梵天。祖母の家にもこんなのがあった。

立ち上がると、腰のあたりがじんわりと重い。引き出しをゆっくりと押し込む。カチリと小さな音がして、綿棒たちは視界から消える。

鏡の前に立ち直す。耳の後ろを指でそっと押さえる。何もしないことが正解だというけれど、この手持ち無沙汰な感じは、しばらく続きそうだ。

洗面所を出る前に、もう一度引き出しを見る。開けない。ただ、取っ手に手を置いて、少しだけ力を込める。明日の朝も、きっとここで同じように迷うのだろう。

朝のベランダで園芸用の白い石を手に持つ様子

朝のベランダで白い石を手に

手のひらの重み

ベランダの床に置いた袋から、白い石を掬い上げる。思っていたよりもずっしりと重い。手のひらに載せると、朝の空気でひんやりと冷えた石の表面が、皮膚に触れてくる。

一粒一粒は親指の爪ほどの大きさで、角が取れて丸い。袋には「ホワイトストーン」と書かれている。昨日の帰りに買ったものだ。プランターの土が見えているところに敷くつもりで。

石を右手から左手へ移す。じゃらじゃらと小さな音がして、いくつかが指の隙間からこぼれ落ちる。床に転がった石を拾い上げて、また手のひらに戻す。

プランターの前で

膝をついて、ミントの鉢の前にしゃがみ込む。土の表面に雑草が顔を出し始めている。指先でつまんで抜いてから、白い石を少しずつ土の上に置いていく。

石と石がぶつかる音が、静かな朝の空気に響く。一握りずつ、ゆっくりと敷き詰める。土の茶色が見えなくなっていく。白い石の層が、プランターの中に小さな庭を作っていく。

石を置きながら、指先が土に触れる。湿った感触。昨夜の水やりの跡だろうか。石の冷たさと土の湿り気が、交互に指先に伝わってくる。

残った石を見つめて

三つのプランターに石を敷き終えても、袋にはまだ半分以上残っている。袋の口を開けたまま、中を覗き込む。白い石が重なり合って、小さな山を作っている。

手のひらに残った石の粉を、ベランダの手すりで払い落とす。白い粉が朝の光の中でわずかに舞って、すぐに見えなくなる。

立ち上がろうとして、膝に手をつく。ベランダの床に、さっきこぼれた石がまだ二、三個転がっている。それを拾い上げて、また手のひらで転がす。つるつるとした感触。何度も触っているうちに、石が体温で少し温まってきた。

袋の口を結んで、ベランダの隅に置く。あなたも、何かを手のひらで確かめたくなることがあるだろうか。重さとか、温度とか、表面の感触とか。ただそれだけのために、しばらく手の中で転がし続けることが。

朝の横断歩道と信号機、アスファルトの路面と白線

朝の横断歩道で握りしめた釣り銭

信号待ちの手のひら

コンビニを出てすぐの横断歩道で、赤信号に止められた。レシートと一緒に受け取った釣り銭を、まだ左手に握ったままだった。百円玉が二枚と十円玉が三枚。手のひらの中で、硬貨同士がかすかに触れ合う。

朝の空気は思っていたより暖かく、半袖でも寒くない。向かいのビルの窓に、薄い雲を浮かべた空が映っている。窓の数を数えてみようとして、途中でやめた。

横断歩道の白線が、アスファルトの上にくっきりと浮かんでいる。端の方は少しかすれて、下地の黒が見えている。靴の先で、白線の境目をなぞってみる。

硬貨の重みと朝の匂い

手の中の硬貨が、体温でじわじわと温まってきた。指を開いて見ると、百円玉の表面に自分の指紋が薄くついている。また握り直す。今度は少し力を込めて。

隣に立った人が、スマートフォンを取り出した。画面の光が朝の光に負けて、よく見えない。その人も画面を手で覆って、眉を寄せている。

アスファルトから、かすかに独特の匂いが立ち上る。昨日までの熱をまだ少し残しているような、都市の朝の匂い。深く息を吸い込んでみたが、すぐに普通の呼吸に戻った。

青になるまで

信号機の赤い光を、じっと見つめる。LED の粒が規則正しく並んでいるのが見える。目を細めると、光がにじんで大きくなる。

釣り銭を右手に持ち替えた。左手のひらに、硬貨の跡がうっすらと残っている。その跡を、右手の親指でそっとなぞる。

向かいの歩道に、鳩が一羽降り立った。首を小刻みに動かしながら、何かをついばんでいる。人が近づいても逃げない。都会の鳩は人に慣れている。

ポケットの中でスマートフォンが震えた。でも、取り出さなかった。信号はまだ赤のまま。もうすぐ変わるはずだ。硬貨を握る手に、また少し力が入る。

夜の寝室で木製の床に置かれた素足と脱いだ靴下

靴下を脱いだ足裏が床板に触れて

ベッドの縁に腰を下ろして

寝室の引き戸を開けると、昼間の熱気がまだ残っていた。スイッチに手を伸ばし、薄明かりをつける。オレンジ色の光がベッドサイドテーブルの上に広がり、読みかけの文庫本の背表紙を照らした。

ベッドの端に腰を下ろす。マットレスが沈み込む感触。右足から靴下を脱ぐ。くるぶしのあたりにゴムの跡がついている。指で軽くなぞると、へこんだ皮膚がゆっくりと元に戻っていった。

左足の靴下も脱ぐ。両方とも裏返しのまま、床に落とした。素足が床板に触れる。ひんやりとした感触が土踏まずから伝わってくる。足の指を開いたり閉じたりしてみる。関節がかすかに鳴った。

枕元の明かりと影

ベッドサイドの引き出しを開ける。充電器のコードが絡まっていた。指先でほどきながら、ケーブルの被覆についた小さな傷を見つける。いつついたものだろう。

枕を手に取り、一度叩いてから置き直す。掛け布団の端を持ち上げると、シーツに昨日の寝跡がうっすらと残っていた。手のひらでなでて、しわを伸ばす。

窓の外から、遠くで車が通る音が聞こえてきた。カーテンの隙間から、向かいの建物の明かりが漏れている。その光が天井に細い線を作っていた。

足裏に残る一日の重み

立ち上がって、窓際へ歩く。素足の裏に床板の継ぎ目を感じる。一歩ごとに、かかとから親指へと体重が移っていく。今日はずいぶん歩いたような気がする。

足の裏をもう一度床につける。冷たさはもうない。体温で温まった部分とまだ冷たい部分の境目を、足を少しずらして確かめる。

もう一度ベッドに戻り、今度は深く腰を下ろした。脱いだ靴下が床に転がっているのを見下ろす。明日の朝、また同じように履くのだろう。でも今は、この素足のままでいい。膝に手を置き、しばらくそのままでいた。

夜の洗面台で水に浸したエコバッグと石鹸

夜の洗面台でエコバッグを裏返す手

エコバッグを洗わない人が三人に一人という調査結果を読んで、手が止まった。そういえば、と洗面台に向かう。蛇口をひねると、水音が静かな夜の空気に響く。

布地に残る買い物の跡

引き出しから取り出したエコバッグを裏返す。内側の縫い目に、小麦粉のような白い粉がうっすらと付いている。いつのものだろう。指でなぞると、粉は簡単に落ちた。

洗面台に栓をして、ぬるま湯を溜める。水面に手を入れると、昼間の疲れが指先から溶け出していくような気がする。エコバッグを沈めると、布地から小さな泡が上がってきた。

石鹸の泡と一緒に流れるもの

固形石鹸を手に取る。濡れた布地にこすりつけると、すぐに泡立った。指の間を泡が通り抜けていく感触。あなたもこんな風に、何かを洗いながら別のことを考えたことがあるだろうか。

袋の底の方を重点的にもみ洗いする。野菜売り場の土っぽい匂いが、かすかに立ち上る。レジでの慌ただしいやり取り、重たい牛乳パックを入れた時の布地の伸び。買い物の記憶が、泡と一緒に流れていく。

明かりの下で乾く布地

すすぎ終えたエコバッグを、両手で挟んで水を切る。しずくが洗面台に落ちる音が、規則的に続く。タオルで軽く押さえてから、洗濯ばさみで吊るす。

洗面所の明かりの下で、濡れた布地がかすかに光る。明日の朝にはきっと乾いているだろう。そうしたらまた、新しい買い物の記憶を詰め込むことになる。

手についた石鹸の匂いを嗅ぐ。清潔になったエコバッグが、小さく揺れている。三人に一人は洗わないという。でも今夜、この洗面台の前に立っている私は、その二人の方に入れたような気がして、少しだけ肩の力が抜けた。

夕暮れの薄暗い脱衣所に置かれた白い洗濯籠と畳まれたタオル

脱衣所の籠に重ねた一日

脱衣所の床がひんやりと素足に触れる。窓から差し込む光はもう弱くて、洗面台の鏡に映る自分の輪郭もぼんやりしている。シャツのボタンを外しながら、指先が今日の疲れを覚えているのに気づく。

籠の中に落ちる布の音

洗濯籠は洗面台の横、いつもの場所にある。プラスチックの白い籠。側面の編み目から、昨日入れたタオルの端が少しはみ出している。シャツを脱いで籠に入れると、布が布に触れる小さな音がした。

ズボンのポケットから小銭が二枚、床に落ちる。拾い上げて洗面台の端に置く。冷たい硬貨の感触が指に残る。靴下を脱ぐとき、足の親指に引っかかって、いつもより時間がかかった。片方ずつ丸めて籠に入れる。昨日のタオルの上に、今日の服が重なっていく。

布地の間に挟まる時間

籠の中を見下ろすと、朝着たときのシャツの形がまだ残っている。袖の折り目、肩の丸み。あなたもきっと、脱いだばかりの服にまだ体温が残っているのを感じたことがあるだろう。手を伸ばして布地に触れてみる。もう冷たい。

洗面台の蛇口から水滴が落ちる音が、規則正しく響いている。タイルの目地に視線が這う。白い目地の中に、ところどころ薄い汚れが見える。掃除をしなければと思いながら、また籠に目を戻す。

積み重なるものの重さ

脱衣所の隅に置いた体重計の表面に、埃が薄く積もっている。その横を通って、棚からバスタオルを取る。新しいタオルの清潔な匂いが、籠から立ち上る一日の匂いと混ざる。

もう一度籠を見る。明日の朝にはこれらを洗濯機に移すのだろう。でも今は、ただそこにある。布の重なりの中に、今日という日が静かに折り畳まれていく。窓の外はもう暗い。脱衣所の電球が、籠の中の影を深くしている。

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