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思考と技術の記録。besoft Blog

開発・設計・運用・プロダクトづくりのなかで得た知見を、読みやすくまとめて共有します。

記事一覧

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洗濯機の上に置かれた無香料の柔軟剤ボトル

洗濯機の前で柔軟剤のボトルを見つめて

白いボトルを手に取る

洗濯機の蓋を開けたまま、棚から柔軟剤を取り出す。白いボトルの表面はつるりとしていて、指先が滑る。キャップを回すと、かすかにプラスチックの擦れる音がする。

液体を計量カップに注ぐ。透明な液体がとろりと落ちていく。鼻を近づけても、何の香りもしない。ただ、わずかに粘性のある液体がそこにあるだけだ。

洗濯機の投入口に流し込む。液体は音もなく吸い込まれていく。空になったカップを水道で軽くすすぐ。指についた柔軟剤のぬめりが、水と一緒に流れていく。

香りのない選択

ボトルのラベルをじっと見る。「香りの付かない」という文字が目に入る。以前使っていた柔軟剤の瓶が、洗面所の隅にまだ残っている。あれは花のような、果物のような、何かよくわからない香りがした。

洗濯機のスタートボタンを押す。水が勢いよく流れ込む音が響く。脱いだシャツの襟元を思い出す。汗の匂いも、外の空気の匂いも、全部そのままだった。何かで覆い隠されることなく、ただそこにあった。

窓から差し込む光が、洗濯機の白い表面を照らしている。埃が光の筋の中でゆらゆらと舞っている。

素材の手触り

乾いたタオルを畳む。繊維の一本一本が指に触れる。香りはない。でも、綿そのものの感触がある。太陽に干した後の、あの乾いた匂いもそのままだ。

洗濯物を取り込むとき、風が吹いた。シーツが大きくはためいて、顔に当たる。布地のさらさらとした音だけが耳に届く。

あなたも、何かを選ぶとき、何かを手放すとき、ふと立ち止まることがあるだろうか。白いボトルを棚に戻しながら、次の洗濯物のことを考える。

曇り空の下の川辺に散らばる濡れた石と苔

川辺の石を手の中で転がして

濡れた石の重み

川辺にしゃがみ込んで、足元の石をひとつ拾い上げる。掌に収まる大きさの、角の取れた楕円形。表面は水気を含んでしっとりと濡れ、指先に冷たさが伝わってくる。親指の腹でなぞると、細かな凹凸が感じられる。長い時間をかけて水に磨かれた跡だろうか。

石を持ち替えて、今度は左手で包み込む。ずっしりとした重みが手首にかかる。この重さは、ただの質量以上の何かを含んでいるような気がして、しばらくじっと握りしめている自分に気づく。

水音の向こう側

川は静かに流れている。瀬の音でもなく、激しい水しぶきでもない。ただ水が水の上を滑っていくような、控えめな音。耳を澄ませば、その奥にもっと小さな音が重なっている。小石がぶつかり合う音、水草が揺れる音、どこかで魚が跳ねたような音。

握っていた石を膝の上に置いて、別の石を拾い上げる。今度は平たい形をしている。表面に緑がかった筋が入っていて、まるで地図のようだ。人差し指でその筋をたどっていると、急に立ち上がりたい衝動に駆られる。でも腰は重いまま動かない。

土の匂いと苔の感触

足元の土は湿っていて、スニーカーの底がわずかに沈む。川辺特有の、土と水と腐葉土が混じったような匂い。懐かしいような、少し息苦しいような。近くの岩には苔がびっしりと生えていて、試しに指先で触れてみる。思ったより弾力があって、押すとわずかに水が滲む。

最初に拾った石をもう一度手に取る。さっきより温かくなっている気がする。手の温度が移ったのか、それとも自分の掌が冷えたのか。石を軽く握ったまま立ち上がると、膝についた土を払う。川は相変わらず同じ調子で流れ続けている。石を持ったまま、もう少しだけここにいることにする。

洗面所の引き出しに並ぶ化粧品と口紅

洗面所の引き出しを開けて見つけた口紅

洗面所の引き出しを開けて見つけた口紅

スマートフォンの画面に秋の新色化粧品のニュースが流れてきた。まだ六月に入ったばかりなのに、もう秋の話をしている。画面を閉じて、洗面所へ向かった。

引き出しの取っ手が少しべたついている。拭かなければと思いながら、そのまま引く。中には使いかけの化粧品が無造作に転がっていた。口紅が三本、奥の方で横になっている。一番手前のケースを取り出す。キャップを回すと、かすかに甘い香りがした。

鏡の前で手が止まる

斜めに削れた口紅の先端。使い込んだ跡がはっきりと残っている。鏡に向かって、唇にそっと当てる。色はまだしっかりと残っていた。オレンジがかったピンク。買ったときは派手すぎるかもしれないと思った色だ。

唇を軽く合わせて、ティッシュで押さえる。薄く残った色を見つめる。洗面台の白いタイルに、朝の光が斜めに差し込んでいる。窓の外では鳥が鳴いている。

引き出しの奥から出てきたもの

他の二本も取り出してみる。一つは深い赤、もう一つはベージュピンク。どちらもほとんど使っていない。ケースの底に製造番号のシールが貼ってある。指で触ると、少し端がめくれた。

引き出しの奥には、小さなアイシャドウのパレットも眠っていた。蓋を開けると、茶色のグラデーション。一番薄い色だけがへこんでいる。チップは使わずに、指で触っていた記憶がよみがえる。粉が指先についた。

洗面台に並べた化粧品を見下ろす。使わなくなってどれくらい経つだろう。捨てようかと思いながら、また一つずつ引き出しに戻していく。口紅のキャップを回して閉める音が、静かな洗面所に響いた。

初夏の朝のベランダにある植木鉢と花の葉

朝の植木鉢の前で手を止めて

ベランダの手すりに肘をついて、植木鉢の縁に指を這わせる。素焼きの表面がざらりとして、昨日の水やりの跡が白く残っている。土の匂いが朝の空気に混じる。

隣の鉢の葉っぱが、風もないのにかすかに揺れた。見ていると、葉の裏側に小さな虫が這っている。指先でそっと葉を持ち上げる。虫は慌てたように土の中へ消えていった。

土に触れる朝

しゃがみ込んで、鉢の中の土に人差し指を差し込む。第一関節まで沈んだところで、ひんやりとした湿り気を感じる。指を抜くと、爪の間に黒い土が入り込んでいた。

ペチュニアの記事を朝一番に見たのを思い出す。ニュアンスカラーという言葉が妙に頭に残っている。目の前の鉢には、まだ花は咲いていない。葉っぱだけが青々として、朝の光を受けて少し光っている。

鉢の重さを確かめて

両手で鉢を持ち上げてみる。思ったより軽い。水が足りないのかもしれない。鉢底から覗く根っこが、白く乾いているように見えた。

ベランダのコンクリートに膝をつく。ひんやりとした感触が、パジャマの生地越しに伝わってくる。如雨露を取りに立ち上がろうとして、もう一度鉢を見下ろす。

葉っぱの先端が、少し茶色くなりかけている。親指と人差し指でその部分をつまんで、ぽろりと取る。手のひらに残った葉のかけらを、風に任せて飛ばした。

朝の街角にある自動販売機、曇り空の下で静かに光っている

朝の自動販売機の前で立ち止まって

硬貨を握る手のひら

朝の街角で、自動販売機の前に立っている。財布から出した百円玉二枚が、手のひらの中で温まっていく。湿度の高い朝の空気が、肌にまとわりついてくる。

自動販売機のガラスに、ぼんやりとした自分の姿が映っている。髪が少し乱れているのが見える。直そうとして手を上げかけたが、そのまま下ろした。硬貨を握り直す。手のひらが少し湿っている。

ボタンが整然と並んでいる。コーヒー、お茶、水。どれも同じように光っている。昨日もここで同じように立っていたことを思い出す。そのときは何を選んだか、思い出せない。

ガラスに映るもの

誰かが後ろを通り過ぎていく。足音だけが聞こえて、振り返らない。自動販売機のガラスに、その人の影がさっと横切った。

缶コーヒーのボタンに指を近づける。押さない。隣の緑茶に視線を移す。それも押さない。水のボタンの前で、また止まる。

手のひらの硬貨が、体温でぬるくなっている。握ったり開いたりを繰り返す。金属の匂いがかすかにする。

自動販売機の低い唸り声が、ずっと続いている。時々、中で何かが動く音がする。冷却の音だろうか。それとも別の何かだろうか。

選ばないまま

ガラスに額を近づけてみる。冷たい。中の飲み物がよく見える。どれも同じように並んでいる。値段も同じ。違うのは色だけ。

硬貨を投入口に近づける。でも入れない。また手のひらに戻す。もう一度、全部のボタンを見る。上から下まで。右から左まで。

後ろでまた足音。今度は立ち止まる気配。私の後ろで待っているのだろうか。振り返らない。ガラスに映る景色を見ている。曇り空が、ガラスの向こうに広がっている。

結局、何も買わずに立ち去ることにした。硬貨を財布に戻す。手のひらに、丸い跡が残っている。赤くなっている。

自動販売機を離れて数歩歩いてから、もう一度振り返る。誰もいない。ただ機械だけが、朝の街角で光っている。

夜の台所で開かれた冷蔵庫の光

冷蔵庫の取っ手に残る指紋

台所の明かり

台所の蛍光灯がチカチカと瞬いている。交換時期はとうに過ぎているのに、まだ何とか頑張ってくれている。冷蔵庫の前に立つと、足裏にリノリウムの床の冷たさが伝わってくる。

取っ手に手をかけると、金属の冷たさが指先を包む。今日何度目だろう、この扉を開けるのは。朝の牛乳、昼の残り物、そして今。取っ手には指紋がいくつも重なっている。拭き取ることもなく、ただ積み重なっていく日々の痕跡。

缶の重さ

扉を開けると、庫内の白い光が顔を照らす。目を細めながら、いつもの場所に手を伸ばす。缶ビールが三本、きちんと並んでいる。昨日の夜に補充したものだ。

一本取り出すと、アルミの表面に水滴がついている。手のひらに収まる重さが、妙に心地いい。缶を少し握りしめてから、もう片方の手で扉を閉める。パタンという音が、静かな台所に響く。

プルタブに指をかける。カシュッという音とともに、細かい泡が缶の口から立ち上る。最初の一口を飲むと、炭酸が喉を通っていく。肩の力が少しずつ抜けていくのがわかる。

明かりを消す前に

缶を持ったまま、台所を見回す。流しには夕食の皿が一枚、伏せて置いてある。テーブルの上には、朝刊がそのまま広げられている。冷蔵庫の扉には、磁石で留められたメモがいくつか。

もう一口、ビールを飲む。苦味が舌に広がって、ゆっくりと消えていく。蛍光灯がまたチカチカと瞬く。そろそろ寝室に向かおうか。

缶を持つ手が、わずかに震えているのに気づく。疲れているんだな、と思う。あなたも、こんな夜があるだろうか。冷蔵庫の取っ手に、また新しい指紋が一つ加わった。

夜のコンビニエンスストアの前、街灯に照らされた歩道に置かれた缶コーヒー

夜のコンビニ前で手に取った缶

自動ドアの音が背中で閉まる

コンビニから出て、缶コーヒーを左手に持ち替えた。プルタブに右手の親指をかけたまま、開けずにいる。

自動ドアが誰かのために開いて、また閉まる。その音が妙に大きく聞こえる夜だった。歩道の端に置かれたベンチのような台に、缶を一度置いてみる。金属が石にあたる音が、思ったより高い。

缶の表面についた水滴が、街灯の光を細かく反射している。指でなぞると、冷たさが皮膚を通じて骨まで届くような気がした。

歩道のアスファルトに落ちる影

足元を見ると、街灯がつくる自分の影が二重になっている。コンビニの看板の光と、道路側の街灯と。どちらも薄く、境界がはっきりしない。

缶を持ち上げて、もう一度プルタブに指をかける。でも開けない。ただ金属の感触を確かめているだけ。

向かいのビルの窓に、まだ明かりがついている部屋がある。カーテンは閉まっているけれど、光だけが漏れている。誰かがそこにいるのか、ただ消し忘れただけなのか。

缶の底に残る冷たさ

結局、缶は開けなかった。ポケットに入れようとして、やめる。手のひらで転がしながら、もう一度コンビニの方を振り返った。

自動ドアの向こうで、店員が商品を並べ直している。その動きがガラス越しに見える。規則正しく、同じリズムで。

缶を右手に持ち替えて、歩き出す。アスファルトに靴底が当たる音が、夜の空気によく響く。缶の重さが、歩くたびに手の中で揺れる。まだ冷たいそれを、どこまで持って行くのか決めていない。

夜の洗濯室で乾燥機が回る様子

夜の洗濯室で見つけた髪の真実

乾燥機の前で立ち尽くす

夜の洗濯室は蛍光灯の白い光で満たされている。乾燥機が低い唸り声をあげながら回転し、中でタオルが舞っている。扉のガラス越しに、白い布地がくるくると姿を変えるのを見つめる。

手元のスマートフォンには、梅雨時の髪の広がり対策についての記事が開かれたままだ。くせ毛がひどくなる、広がる、うねる。書かれている言葉が、まるで自分の頭を指差しているようで、無意識に髪に手をやる。

湿った夜の空気が洗濯室にも忍び込んでいる。換気扇は回っているのに、どこか重たい空気が肌にまとわりつく。髪の毛先が、すでに少しうねり始めているのがわかる。

タオルを畳みながら

乾燥機が止まった。扉を開けると、熱を帯びた空気が顔を撫でる。温かいタオルを一枚ずつ取り出して、洗濯台の上に重ねていく。

記事には、やってはいけないことがいくつも書かれていた。濡れた髪をゴシゴシこする、ドライヤーの熱風を近づけすぎる。思い当たることばかりで、タオルを畳む手が止まる。

洗濯室の鏡に映る自分の髪を見る。確かに、朝よりも膨らんでいる。前髪が額から浮いて、おかしな方向を向いている。鏡の中の自分に向かって、小さくため息をつく。

畳み終えたタオルの山を抱えて、洗濯室を出ようとする。ドアノブに手をかけたところで、もう一度振り返る。洗濯機と乾燥機が並んで静かに佇んでいる。

廊下の湿度計

廊下に出ると、壁にかけた湿度計が80パーセントを指している。これでは髪が言うことを聞かないのも無理はない。

タオルを抱えたまま、しばらくその場に立っている。記事の続きを読もうか、それともこのまま部屋に戻ろうか。結局、スマートフォンを閉じて、タオルの重みを感じながら歩き出す。

髪は髪のままでいい。そう思いながらも、明日の朝のことを考えて、少しだけ肩が重くなる。

薄暗い階段の木製手すりに手を添える様子

階段の手すりに触れる指先

薄暗い階段で

玄関の鍵を閉めてから、靴を脱ぐまでの間に息を一つ吐いた。右足のかかとを左手で押さえて靴を脱ぐとき、壁に肩が触れた。冷たい。

階段に向かう。一段目に足を乗せると、古い木がかすかに鳴った。手すりに手を伸ばす。指先が木に触れる。思っていたより温かい。

親指の腹で手すりをなぞる。表面は滑らかだけれど、ところどころに小さな凹みがある。前に住んでいた人たちの手の跡だろうか。それとも自分がつけたものか。もう覚えていない。

一段ずつ上がりながら

三段目で立ち止まった。窓から差し込む光が、壁に斜めの影を作っている。オレンジがかった光。もうすぐ暗くなる。

手すりを握る力が少し強くなった。握ったり緩めたり。木の温度が手のひらに移ってくる。階段の半ばまで来たところで、下を振り返る。玄関が遠く見える。

鞄の重さが肩に食い込んでいることに今更気づいた。左手で肩紐を持ち上げる。右手は手すりから離さない。なぜだろう。離したくない。

踊り場の光

踊り場に着いた。ここだけ少し明るい。小さな窓があるから。外を見ようとしたけれど、体の向きを変えるのが億劫で、そのまま次の階段に向かった。

手すりの端、角の部分で手が止まった。ここは特に滑らか。何度も何度も触られて、角が丸くなっている。人差し指でその丸みをたどる。

あと五段。数えなくても分かる。毎日上っているから。でも今日は一段一段を確かめるように上った。最後の段で、手すりから手を離す。指先がまだ木の感触を覚えている。手のひらを見た。何も変わっていない。当たり前だ。

廊下の奥から、換気扇の音が聞こえてきた。

夕暮れの砂浜で手に握られた小さな貝殻

砂浜の波打ち際で握る貝殻

潮の匂いが鼻先をかすめる。裸足の指先が砂に沈む。右手に握った貝殻の縁が、親指の腹に食い込んでいる。

波が引いては寄せる。足元の砂が少しずつ削られていく。踵が沈み始めたので、体重を前に移す。貝殻を握る手に、じんわりと汗が滲んでいるのがわかる。

薄暗い水平線

空が紫がかってきた。水平線のあたりはもう輪郭がぼやけている。目を細めても、空と海の境目がはっきりしない。風が強くなってきたのか、髪が頬に張り付く。払おうとして、貝殻を握ったままなのに気づく。

波打ち際を少し歩く。濡れた砂が足の裏にまとわりつく。立ち止まって振り返ると、自分の足跡がもう半分消えかけている。次の波が来れば、完全になくなるだろう。

手のひらの重み

貝殻を左手に持ち替える。右手のひらに、うっすらと跡が残っている。指で撫でると、少しひりひりする。改めて貝殻を見る。巻き貝だ。先端が少し欠けている。内側に砂が詰まっているのか、振ると小さな音がする。

また波が来る。今度は膝下まで濡れた。冷たさに、思わず息を吸い込む。貝殻を握る手に、また力が入る。

そろそろ暗くなる。でも、まだここに立っている。貝殻の重みを確かめながら、次の波を待っている。あなたにも、手放せないまま握りしめているものがあるだろうか。私の手の中で、貝殻はまだ温かい。

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