空腹の夜、検査を待つ

明日の胃カメラ検査を控え、絶食中の夜。冷蔵庫を開ける手が止まり、水を飲んでやり過ごす。時計の針を気にしながら、早く寝ようと布団に横たわる静かな時間。 家の灯り鍵を回す音が、いつもより大きく聞こえた。玄関の電灯をつけると、靴が一足だけ揃っている。今日は誰もいない。リビングの時計が夜の遅さを伝えているが、数字は見な

紫陽花と暮れる道

日が暮れかけた住宅街の道で、紫陽花の花にふと立ち止まる。路面の湿り気と、闇に沈む花の色を見つめるうちに、いくつかの記憶がよみがえる。日常の一瞬に心が動く様子を描く。 日が暮れかけた住宅街の道。昨日の雨の名残か、路面はところどころ湿っている。足を止めたのは、角の紫陽花が目に入ったからだ。花の咲く場所塀と舗道の隙間

踊り場の苔

日が落ちる直前の薄曇りの夕方、階段の踊り場で植木鉢の苔を見つめる。昨日との違いに気づき、記憶の片隅にあった何かがよみがえる静かなひとときを描く。 階段の踊り場で、ふと足を止めた。手すりのすぐ横に置かれた植木鉢に、苔がびっしりと生えている。薄曇りの夕暮れの光が、その表面を柔らかく撫でている。昨日まではこんなに濃い

ハンズ渋谷店の灯りを見ながら

1978年から営業してきたハンズ渋谷店が11月に閉店する。夕暮れの街で、シャッターに貼られた閉店告知を見つめながら、これまでの思い出をたどる。 夕方の渋谷は、まだ人の流れが途切れない。街路樹の緑が濃くなり始めたばかりの5月末、空は曇っている。湿度がやや高く、肌にまとわりつくような空気だ。シャッターに貼られた紙ハ

信号待ちの空

曇りの夕方、信号待ちの交差点でふと空を見上げる。低く垂れ込めた雲の隙間から、淡い光がこぼれる。足元の影もない、ぼんやりとした時刻。何かを待つように立ち尽くす、ひとりの時間。 信号の前で 横断歩道の手前で足を止めた。信号はまだ赤のまま、時計の針を気にするでもなく、何となくその場に立っている。靴の先に、アスファルト

バス停の屋根のした

夕方のバス停で立ち尽くす書き手が、昨日の小雨の湿り気が残るアスファルト、水たまりに揺れる曇り空、風にざわつく街路樹、ベンチでバッグを整える人の動き、時刻表ガラスの指のあとなどを観察しながら、待つ時間の質感を描くエッセイ。 湿ったアスファルト夕方のバス停は、思ったより人の気配が少ない。屋根の影がアスファルトにのび

路地裏の夕暮れ鳥

薄曇りの夕方、路地裏で電線に止まる鳥たちを眺める。次第に数が減り、やがて一羽もいなくなるまで。何かを待つような静かな時間が流れる。 電線に残る影路地裏に入ると、急に静かになる。表通りから少し曲がっただけなのに、車の音も人の声も遠くなる。電線が空を横切っていて、そこに何羽かの鳥が止まっていた。スズメだろうか。胸の

冷蔵庫の隅で

昼下がり、冷蔵庫の奥で真っ黒になったバナナを見つける。皮をむくと中は白く、甘い匂いが立つ。なぜか食べずに戻す、その手の感触と曇り空の午後。日常の小さな観察と内面の揺れを描く。 むく前曇り空の昼下がり、何となく冷蔵庫を開ける。奥の野菜入れに、黒くなったバナナが一本横たわっていた。買ってから十日近く経つ。皮は黒く縮

ベンチに腰を下ろして

曇りの午後、公園のベンチに腰を下ろして過ごす静かな時間。視線をさまよわせ、手すりの温度や葉の裏側、鳥の声に耳を澄ます。何気ない動作の一つ一つが、その場の空気とつながる。あなたも同じ場所に立ってみたら、何を見るだろうか。そんな問いかけが行間に漂う。

昼下がりの静けさに

五月の曇り空の下、窓辺でコップの水滴を指でなぞりながら過ごす静かな昼下がり。身体の微かな反応とともに、何かにとらわれない時間の流れを描く。 窓辺のコップ陽の光が届かない分、部屋の中は落ち着いている。冷蔵庫から出したばかりの水を注いだガラスのコップが、手触りのいい汗をかいている。指先で表面をそっとなでると、水滴が

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