
陶片の縁をなぞる
鋭利な断面の記憶
テーブルの端に置かれた小さな陶片を指先でなぞる。それは以前、食卓を囲んでいた皿の欠片であり、今はもう元の形を留めていない。表面の釉薬は滑らかだが、反対側の断面は白くざらつき、不揃いな層を成している。光を当てると、その粗い突起が微細な影を落とし、かつてここにあった円環の一部であることを主張するように見える。指先をそっと添えると、焼成の過程で生じた歪みが皮膚に冷たく伝わってくる。
夜の帳と微かな感覚
部屋の明かりを落とした中では、窓の外の夜空と室内の境界が曖昧に混じり合う。薄い布越しに差し込む街灯の光が、陶片の角を鋭く切り取った。欠けた箇所から見えてくる土の質感は、完成された皿の状態では決して触れることのできない場所だ。何度も指を滑らせるうちに、その硬質で冷ややかな感触が、指紋の溝に深く食い込んでいくような錯覚に陥る。ふと、この欠片を繋ぎ合わせる術を持たないまま、ただその断面の深さを確認するように、親指の腹でゆっくりと縁をなぞり続けた。窓の外では時折、湿った風がカーテンを僅かに揺らしている。何も言わず、ただ手の中の冷たい物質を確かめる。夜が深まり、置かれたコップの水面に反射する光が、ゆらゆらと天井へ向かって伸びては消えた。手元に残るのは、欠落した輪郭の重みだけである。








