
停車場のひび割れたタイル
足元の断層
駅のプラットフォームで、列車の到着を待つ間、視線は決まって足元へ沈んでいく。靴の先が境界線を踏み越えそうになるのを止め、一枚の四角いタイルを凝視する。その表面には、蜘蛛の巣のように細く鋭い亀裂が走っている。ひび割れたタイルは、昨日の激しい雨が嘘のような、穏やかな午前の光にさらされている。亀裂の深さは影を落とし、その縁は少しだけ欠けてザラついた感触を想像させる。
指先がなぞる境界
無意識に指先を動かそうとして、ポケットの中で握りしめた硬貨の冷たさに気づく。誰かの足跡が何度も行き過ぎたことで、この傷は角が取れ、どこか滑らかな表情を見せている。ひびの両側は、まるで見えない力で引き離されたように、微かな高低差を生んでいた。その小さな段差に指の腹を押し当てるような錯覚を覚え、思わず膝が力む。立ち並ぶ人々の影がホームに長く伸びる中、自分だけがこの亀裂の先にある暗がりを覗き込んでいる気がした。行き場のない重たさが、喉の奥から静かに広がり、ただ黙ってその場所を見つめ続ける。タイルに刻まれた無数の小さな欠けは、長い時間をかけてこの場所が抱えてきた沈黙の証拠のように見えた。列車が近づく気配にふと顔を上げると、周囲は相変わらず何事もなかったかのように動き出し、自分だけがその亀裂の淵に取り残されたままでいる。








