曇り空の下で
街角の小さな段差に、一つの空き缶がぽつんと置かれていた。午後の穏やかな風に揺れることもなく、じっとそこに佇んでいる。通り過ぎる人影はちらほら。肩越しに時折感じる湿り気混じりの風が、曇り空の重さを確かめるように頬を撫でていく。
静かな受け渡し
目が離せなかったのは、その空き缶の隣に現れたもう一つの小さな腕の動きだった。気づけば誰かがそっと近づき、言葉少なに缶を掴み取る。二人の間に声はない。缶は放置物のように見えたが、その受け渡しには何かしらの紐帯がある気配が漂う。私は足下の石畳に目を落とし、わずかな呼吸を整えた。
見えない繋がり
街の音がうっすらと届くなか、渡す手と受け取る指先の沈黙に目が釘付けだ。すれ違うだけの偶然ではない。いくつもの知られざる営みが、ここでは静かに重なる。缶が手から手へそっと渡されたその瞬間、風の匂いと曇り空の光が溶け合い、私はそこに居ることの根拠をあいまいに問いかけていた。
