曇り空の昼下がり、足元だけがほんのり温かい公園の足湯へと誘われ、1歳の子どもと共に初めての体験をすることになった。ふと気がつくと、膝を曲げて水に足を浸す小さな足が思いがけず動き出し、小さな水しぶきがステップの縁に跳ね返る。静かな空間にぽつり、ぽつりと響く水音が、ほんの少しだけ場の空気を揺らしていた。
子の指が水面をかきわける様子を眺めながら、自分の手のひらに残る残熱と、不意にあらわれた小さな波紋が交錯して、何気ないひとときの輪郭がゆっくりと浮かびあがる。誰かの声がどこからか漏れ聞こえるけれど、そこに耳を傾けるより、見守る視線がどこか遠くへ抜けていく。子の笑い声が軽やかで、しかしずっと心の奥で何かがもぞもぞと動き続けていた。
手足の先端から伝わる温かさと、曇り空の穏やかな寒暖の間に取り残されたような、自分の体の動きの鈍さ。ひと呼吸おいて、子どもの足をぴたりと抱きしめ、時間の波にただ身を任せている。いつの間にか、目の前の小さな水面に映った自分の顔がぼやけていることに気づく。ゆらりゆらりと揺れ動き、けれど確かにここにあるものにだけ身体を預けている実感。
足湯の縁に置かれた小さなタオルの質感と、遠くで揺れる葉の影が織りなす静けさ。こんなにも普通の一場面が、ふと立ち止まらせてくれるものだった。午後の風は特に澄んでいるわけでもなく、湿度は適度に形を変え、ただこの瞬間にだけ寄り添っていた。
