軒下の洗い桶
雨上がりではない夜の路地で、軒下の洗い桶が弱い風に合わせて、かすかに角度を変える。水面の反射がいちど揺れて、また戻る。そのたび、金属の縁が小さく鳴り、壁の影がゆっくり伸び縮みした。
水の輪が消えるまで
外灯の届きにくい場所は黒く沈み、近い場所だけが白く滲む。脚を止めて、桶のふちに残る水の筋を確かめる所作を一つ選んだ。こういう静けさは、片づけの途中にも落ちている。
立ち去る一歩
最後に残るのは、足音の間の短い無音と、桶が戻ってくる気配だった。今夜、ふと手を伸ばしてしまう小さな道具はどれだろう。
