夕方の高架の下を歩く。コンクリの冷たさが靴底から伝わって、首筋には薄い風がまとわりつく。排気の奥に、アスファルトの匂いが少し混じるのがわかる。ポケットからメモ帳を出して、ふと浮かんだ名前だけ走り書きする。ペン先が紙をなぞる音が、空調みたいに一定で落ち着く。
高架下の光と、手の作業
高架の影の境目が、信号の色に合わせてゆらぐ。薄く濡れた金属柵は指に冷たい。私は呼吸のリズムを確かめるみたいに、短い行を区切っていく。
風が運ぶ、言いそびれ
背中を押すわけではないのに、風だけが前へ寄ってくる。書き足したい言葉があるのに、指は止まる。あの小さな余白は、何を待っているのだろうか。
