ブックケースの夜

夜の机の上に置かれたブックケースと文庫本

夜の机の上で、買ったばかりのブックケースをじっくりと眺める。丸善ジュンク堂が発売したという文庫本専用のケースだ。ニュースで見た時は、ただの入れ物に過ぎないと思っていた。だが手に取ると、予想よりもずっと重みがある。

革の感触

外側は濃い茶色の合成皮革で、指で押すとほんの少しだけ沈む。表面には細かなシボが均一に入っており、光の角度で陰影が変わる。裏地は柔らかな起毛素材で、本の表紙を傷つけなさそうだ。縫い目は二重にステッチが施され、ほつれの心配はない。

金具の冷たさ

留め具の金具は真鍮色で、夜の冷えた空気に触れてひんやりとしている。指の腹でなぞると、滑らかな金属の表面にわずかな凹凸がある。留め具をパチンと閉じる音は、乾いた小気味よい響きだ。中に一冊だけ文庫本を入れてみる。ハヤカワ文庫の『ポッパー』で、厚みが丁度いい。ケースに収めた時のジャストフィット感が気持ち良い。

本の背が少しだけケースの縁から出る。取り出しやすさを考慮した設計だろうか。机の上で何度か開け閉めを繰り返す。音はそれぞれ、少しずつ違う。革が擦れる微かな音と、金具が嵌まる音。それだけが部屋に響く。

窓の外からは、遠くの車のエンジン音がかすかに聞こえる。しかしこのケースの周囲だけは、静寂に包まれている。明日、このケースを持って出かけようか。それとももう少し、机の上で眺めている方がいいか。決めかねているうちに、夜は更けていく。