夜のコンビニ前で手に取った缶

夜のコンビニエンスストアの前、街灯に照らされた歩道に置かれた缶コーヒー

自動ドアの音が背中で閉まる

コンビニから出て、缶コーヒーを左手に持ち替えた。プルタブに右手の親指をかけたまま、開けずにいる。

自動ドアが誰かのために開いて、また閉まる。その音が妙に大きく聞こえる夜だった。歩道の端に置かれたベンチのような台に、缶を一度置いてみる。金属が石にあたる音が、思ったより高い。

缶の表面についた水滴が、街灯の光を細かく反射している。指でなぞると、冷たさが皮膚を通じて骨まで届くような気がした。

歩道のアスファルトに落ちる影

足元を見ると、街灯がつくる自分の影が二重になっている。コンビニの看板の光と、道路側の街灯と。どちらも薄く、境界がはっきりしない。

缶を持ち上げて、もう一度プルタブに指をかける。でも開けない。ただ金属の感触を確かめているだけ。

向かいのビルの窓に、まだ明かりがついている部屋がある。カーテンは閉まっているけれど、光だけが漏れている。誰かがそこにいるのか、ただ消し忘れただけなのか。

缶の底に残る冷たさ

結局、缶は開けなかった。ポケットに入れようとして、やめる。手のひらで転がしながら、もう一度コンビニの方を振り返った。

自動ドアの向こうで、店員が商品を並べ直している。その動きがガラス越しに見える。規則正しく、同じリズムで。

缶を右手に持ち替えて、歩き出す。アスファルトに靴底が当たる音が、夜の空気によく響く。缶の重さが、歩くたびに手の中で揺れる。まだ冷たいそれを、どこまで持って行くのか決めていない。