水際まで続く石の階段
湖畔の石段に腰を下ろした。ひんやりとした感触がズボンを通して伝わってくる。目の前には静かな水面が広がり、対岸の山並みがぼんやりと霞んでいる。
石段の隙間から小さな草が顔を出している。指先で触れると、葉の表面がざらりとしていた。苔の生えた部分は湿っていて、押すとわずかに水が滲む。手のひらを石の上に置くと、日向と日陰で温度が違うのがわかる。
水面に光が踊っている。きらきらと砕けては、また集まって、同じ形は二度と現れない。目を細めると光の粒がぼやけて、ただ明るいだけの塊になる。
足元に落ちる小枝と葉
階段の端に枯れ枝が引っかかっている。拾い上げると、思ったより軽い。樹皮はところどころ剥がれていて、下から白っぽい木肌が覗いている。折ってみると、ぱきりと乾いた音がした。
膝の上に細かい破片が散らばる。払い落とそうとして、手が止まった。破片の一つ一つに細かい筋が入っている。爪の先でなぞると、かすかに引っかかる。
風が吹くたびに、頭上の木々がざわめく。葉擦れの音に混じって、遠くで鳥が鳴いている。何の鳥かはわからない。ただ、同じ調子で繰り返される声が、湖の上を渡っていく。
水に触れる前のためらい
立ち上がって、もう一段下りた。水面が近くなる。手を伸ばせば届きそうな距離だ。でも、まだ触れない。靴の先が濡れた石を踏んで、少し滑る。
しゃがみ込んで、水際の石を見る。水の中と外で色が違って見える。境目のところで光が屈折して、石の輪郭がゆらゆらと揺れている。
指先を水面に近づける。まだ触れていないのに、冷たさが伝わってくるような気がする。あと少し。でも、そのまま手を引いた。濡れた指を拭くものを持っていないことを、今さら思い出したから。
