路地裏の入り口で立ち止まる
表通りから一本入った路地に、古い自販機が置かれていた。建物と建物の間、人がすれ違うのがやっとの幅。昼の光が上から差し込んで、コンクリートの壁に斜めの影を作っている。
自販機の前に立つと、微かに冷却音が聞こえる。低い、連続した振動音。手のひらを側面に当てると、かすかな震えが伝わってきた。表面は熱くも冷たくもない。ただ、長い時間をかけて馴染んだような温度がある。
剥がれかけたステッカーと錆びたボタン
商品の並びを見る。缶コーヒー、炭酸飲料、お茶。値段表示の一部が擦れて読めない。ボタンの周りには錆が浮いていて、押し込まれた跡が何重にも残っている。
右端のボタンには、古いステッカーが半分剥がれたまま残っていた。何のキャンペーンだったのか、文字はもう判読できない。爪の先で軽く触れると、端がめくれ上がった。そのまま剥がそうとして、途中でやめた。
視線を上げると、自販機の天板に薄く埃が積もっているのが見えた。指でなぞると、くっきりと線が残る。その線を見つめていると、ここに来る人の数が想像できるような気がした。
小銭を探す手の動き
ポケットに手を入れて、小銭を探る。百円玉が二枚、十円玉が数枚。掌の中で転がして、枚数を確かめる。缶コーヒーのボタンに指を乗せたまま、しばらくそのままでいた。
押し込むと、鈍い音がして、しばらく間があってから落下音が響いた。取り出し口に手を入れる。冷たい缶が指先に触れる。
缶を取り出して、そのまま路地の壁にもたれた。プルタブを起こす音が、狭い空間に響く。最初の一口を飲み込むと、喉の奥でかすかに震えるものがあった。
自販機の冷却音は変わらず続いている。あなたも、どこかでこんな音を聞いたことがあるだろうか。誰もいない場所で、機械だけが動き続ける音を。
