台所のテーブルに置いたまま
朝の台所に、まだタグのついた保冷バッグが置いてある。昨日の夜、帰り道に寄った雑貨屋で見つけたものだ。レジで支払いを済ませたあと、そのまま台所のテーブルに置いたまま、触れもせずに寝てしまった。
袋から出してみると、思っていたより大きい。内側の銀色の生地がまだぴんと張っていて、新品特有の化学的な匂いがかすかに漂う。ファスナーを開け閉めしてみる。滑りがよくて、小さな金属音が朝の静けさに響く。
まだ何も入れていない内側
バッグの底に手を入れてみる。ひんやりとした感触が指先に伝わってくる。まだ何も入れたことのない空間は、これから詰め込まれるものを待っているような、妙な期待感を持っている。
冷蔵庫を開けて中を見る。牛乳、卵、昨日の残りのサラダ。どれも今すぐ保冷バッグに入れて持ち運ぶ必要はない。でも試しに牛乳パックを入れてみる。まだ余裕がある。もっと入る。スーパーの冷凍食品売り場で、いつもより多めに買い物ができそうだ。
牛乳パックを取り出して、元の場所に戻す。空っぽに戻ったバッグの内側を見つめていると、どこか遠くへ出かけたくなる。海辺でも山でも、ただの公園でもいい。冷たい飲み物と果物を詰めて、どこか木陰のある場所で昼を過ごす。そんな場面が頭に浮かぶ。
持ち手の感触を確かめて
バッグの持ち手を握ってみる。しっかりとした作りで、重いものを入れても大丈夫そうだ。肩にかけてみると、ちょうどいい長さ。鏡に映る自分の姿を見て、なんだか買い物に行く準備ができたような気分になる。
でも今日は特に買い物の予定はない。バッグを畳んで、また台所のテーブルに置く。いつでも使える状態にしておこう。窓から差し込む朝の光が、バッグの表面を照らしている。
コーヒーを淹れながら、来週末の予定を思い出す。友人と会う約束をしている。手土産に何か冷たいものを持っていくのもいいかもしれない。この保冷バッグの出番になりそうだ。
