空調の効いたショールームに足を踏み入れる。まだ十時前で、来店客は数えるほどだ。目的の製品は奥のコーナーにあった。ニュースで見た「スピーカー内蔵電動リクライニングソファ」が、展示品として鎮座している。
天窓の光と影
天井の窓から朝の光が斜めに差し込む。空は雲に覆われているが、時折薄日が射し、ソファの革張りの表面を斑に照らす。値札には「シアターソファ」の名称と二十万円の数字。隣のソファの倍以上の価格だ。肘掛け部分が異様に太く、そこにスピーカーユニットが内蔵されているという。側面には細かなパンチング穴が並び、その奥に黒いネットが見える。展示品の背もたれには、使われた形跡がほとんどない。
革の温度とグリル
座面に手を置く。革はひんやりとし、新品特有の硬さが残る。肘掛けの前面を指の腹で撫でると、均一な凹凸の感触。軽く叩くと、空洞を伝わる低い音が響く。スピーカーの容積を確保するため、このフォルムになったのだろう。左右の肘掛けにはそれぞれウーファーとツイーターが内蔵されているらしい。座面の沈み込みは浅く、まだクッションが硬い。
電動の動作
リモコンのボタンを押す。モーターの微かな音と共にフットレストがゆっくり上昇し、背もたれが倒れる。体が包まれるような感覚。頭を預ける位置にちょうどスピーカーがある。何も再生していないが、耳のすぐ側で振動板が待機している気配。この状態で映像を見るとき、音がどのように広がるのか想像する。窓の外の雲がさらに薄れ、日差しが強まってきた。七月の朝はこれから本番を迎える。
