森の中で膝を抱えて

初夏の森の中、倒木に座って膝を抱える人の後ろ姿

倒木の上で

森の奥まで歩いてきて、太い倒木を見つけた。苔がびっしりと生えた表面を手のひらで払って、そこに腰を下ろす。ひんやりとした湿り気が、ズボンの生地を通して伝わってくる。

両膝を抱えて、顎をのせる。視線の先には、落ち葉が積もった地面が広がっている。風が吹くたびに、頭上の枝がざわめいて、光の斑点が揺れる。その動きを追いかけようとして、すぐにやめた。

右手で膝頭を撫でる。土が少しついていた。払おうとして、そのままにした。足元の落ち葉の間から、小さな虫が這い出てきて、また別の葉の下に消えていく。

木漏れ日の中で

昼の森は思っていたより明るい。葉と葉の隙間から差し込む光が、あちこちに白い円を作っている。その一つが、抱えた膝の上に落ちた。温かい。

耳を澄ますと、鳥の声がする。どこにいるのかはわからない。高い声、低い声、短く区切る声。それぞれが勝手に鳴いている。返事を待っているのか、ただ鳴いているだけなのか。

倒木の表面を指先でなぞる。苔が柔らかい。少し力を入れると、水分がにじんでくる。指についた緑色を見つめて、ズボンで拭った。

動かない時間

どのくらいここに座っているだろう。腰が少し痛くなってきたけれど、まだ動きたくない。膝を抱える腕に、もう少し力を込める。

目の前の地面に、アリの行列ができている。小さな白いものを運んでいる。何だろうと思って身を乗り出しかけて、やめた。知らなくてもいい。

風が止んだ。森が急に静かになる。自分の呼吸の音が聞こえる。ゆっくりと息を吸って、同じようにゆっくりと吐く。胸が上下するのがわかる。

また風が吹いて、頭上の葉がさらさらと鳴る。その音を聞きながら、もう少しだけ、ここにいようと思う。